アルカディア・ダレル  前編 第1話~第6話

割引あり

『アルカディア・ダレル』前編
第1話~第6話

ファウンデーションの夢

第七部

アルカディア・ダレル

ファウンデーションの夢 大枠

第一部 ダニールの地球探索
第二部 ガイア
第三部 ウォンダとガールの地球探索
第五部 Tee Tree
第六部 ベイタ・ダレル
第七部 アルカディア・ダレル
第八部 プロローグ アルカディアの遺言

第七部 アルカディア・ダレル の内容

47 第1話 ミュール破局後の危機
48 第2話 深夜、窓を叩く音がする
49 第3話 夜な夜なの会合
50 第4話 我ら銀河の子
51 第5話 可愛い密航者
52 第6話 自惚れ閣下

53 第7話 何から逃げる?
54 第8話 スペースポートでの会合
55 第9話 蛸部屋の名探偵と一台
56 第10話 二人の全権大使
57 第11話 牧人の花園、アルカディア

前史 ベイタ・ダレルとミュール

ジータ・マロウの娘ロアには、極めて聡明な娘ベイタがいた。

ベイタとミュールの壮絶なる物語は、ファウンデーション設立から300年後に起こる。ベイタの物語はこうして始まる。

ベイタの両親がガール・ドーニックの農園を再び買い取り、住み始めた。ベイタもモーヴ(ターミナスの首都)に住んでいたのでしばしば泊まりに来ていた。

時代は、ターミナスも徐々に往時の精彩を欠いて来たインドバーの世襲政権のもと、時代の暗雲に気付いていた数名の人々がいた。
 一人は心理学者、エブリング・ミス。もう一人は貿易商人のランデュ・ダレル、そしてベイタ・マロウもその一人に加えなければいけない。
 
 ベイタ・マロウはトラン・ダレルと結婚し、トランの出身星ヘイブンに赴く。そこで、トランの叔父のランデュに新婚旅行にカルガン行きを勧められる。ハネムーンは数日で今後の銀河を揺り動かす大事件に移行する。

ミュールの宮殿から道化師がハネムーン中の両人に助けを求めて来た。

その道化師はボボと名乗った。彼らは早々宇宙船の格納庫に戻る。

そこに第三者がまた登場する。
 二重スパイ!?

そのハン・プリッチャー大尉は、すでにミュール(ボボ)によって、洗脳されていた。

さらにミュールはトラン・ベイタの宇宙船でターミナスまで同乗し、モーヴ市に降り立ち、ファウンデーション軍の宇宙戦艦軍に喪失感を与え、ハリ・セルダンの出現する時間霊廟に集う人々を降伏感へ誘導し、一日に、完全占領してしまった。

最後の救いの砦であったファウンデーションの遊軍、独立貿易商人協議会連合の星々も、戦意を喪失。ミュールの圧倒的な感応力の前ではなすすべもなかった。ヘイブンに一時避難したベイタ夫婦とボボとエブリング・ミスは、トランターに赴くことになった。ランデュはボボの存在に何かを察するようになったが、ランデュは残った。

トランターでは、旧ストーリーリング大学付近の自称コンポレロン人たちの農村共同体が300年祭の催し物の準備で忙しくしていた。そこの村長、リー・センターは彼ら4人を丁重に向かい入れてくれた。

彼ら4人を、トランターの農村指導者家族は丁重に、ファウンデーション300年祭の晩餐会に、趣向を凝らして招き入れた。その席には同じくネオトランターから来ていた(?)、一応議会議長と言う立場の、ヴェナ・ビリ女史がいた。

エブリング・ミスはボボと一緒にストーリーリング大学の一室に籠って、当のミス博士は食事も絶って一心不乱に調べものに没頭していた。
 
 事件が突然起きたのは、そんなやさきだった。エブリング・ミスは、何かを発見して、訪ねて来たベイタに口を開こうとした瞬間のことだった。

ヴェナ・ビリ女史も程なく息を引き取る(停止する)。

そのエブリング・ミスとボボがいた場所が、300年前のハリ・セルダンの心理歴史学の研究室であったことがわかるのは、ベイタ・ダレルの孫アルカディアがトランターを訪れてからのことであるのだが。

ハリ・セルダンによる3万年にわたる暗黒の期間を、彼の「心理歴史学」により編み出した「セルダン・プラン」に従って、彼は、その期間を1000年に短縮できると公言して、銀河当時の銀河帝国に首都トランター政府から、銀河の最遠端のターミナスに放逸されるはずであったが、彼はトランターに残り、十万人の第一ファウンデーション員がターミナスに航った。名目は、帝国辞書編纂であった。
 その後、第1ファウンデーションは着々と進展するかに思われた。

ところが、ファウンデーション暦300年、ミュールの出現によって第1ファウンデーションは征服されてしまった。

ミュールは、銀河完全支配を目論見、次に第2ファウンデーションをも攻略しようと企て、あと一歩というところで、ベイタ・マロウ(ダレル)に阻止された。

その後、ミュールは、ダゼンダ星こそ第2ファウンデーションの本拠地と見定め、航宙軍で破壊する。

しかし、それが第2ファウンデーションの第1発言者の準備周到の罠であったのであった。

ダゼンダに近い惑星ロッセムに、農民を装った第1発言者夫婦が、ミュールの到来を予測して待ち構えていた。

それより五年前にミュールを完璧に封じ込めなかった原因をナロビ(リー・センター?)は、ミュールと直面して、ミュールが、感情反発フィールドの異常な強さを勘定に入れなかったこと、それは、ミュールの生殖能力の欠如を見抜けなかったことからであったことを吐露する。

その後、ミュールは時を経ずして、寿命を終える。
 
 それによって、セルダン・プランは回復したように見えたのであったが、今度は、ミュール事件に大打撃を受け、その欠陥について第1ファウンデーション側に、精神感応についての機能が十分には不足していたとの見定めることとなり、今度は第2ファウンデーションへの敵対意識、嫌悪が目覚め、第2ファウンデーション員を駆逐する方向性が出て来てしまった。

第2ファウンデーションは、それを察知し、一時的に本拠地を銀河中心より隔絶したある星に移した。

そして、ミュールの第一の危機を乗り越えさせたベイタ・ダレルの孫のアルカディアが、この難局に立ち向かうのだが、その前に第2ファウンデーション側の対応から話しをはじめよう。
ところは、かつて繁栄を極めた銀河帝国の中心地トランター。

今では、ヘイム人が農業を営む一大農作物の生産地になっていた。

登場人物

アルカディア・ダレル 主人公、トラン・ダレルの娘、14歳。

トラン・ダレル ベイタ・ダレル(同名)の息子。ホバー・マロウを引き継ぐターミナスの名家。

R・ミーター・マロウ オリンサス・ダムに作られた作文制作器兼盗聴器、再度オリンサスによって、翻訳・通訳機に改造させられる。マロウの姓は、アルカディアの祖母に対する強いこだわりから来ている。

プリーム・パルヴァー 第2ファウンデーションの第1発言者。ミュールに最終的にロッサムで待ち受けて、勝利する。

ペアレス・アンソーア 第1発言者から将来を嘱望された若き第2ファウンデーション員。まだ未熟だが、それゆえ、以外な展開を生み出す。

オリンサス・ダム アルカディアの幼友達。アルカディアに彼の技能で彼女を助ける。老齢にアルカディア家に多大な貢献をする。

ホーバー・マン トラン・ダレルの親戚。トランたちのグループからカルガン潜入の任を託され、しぶしぶその任にあたる。

カリア ステッティン卿の愛人、その正体は第2ファウンデーションのエージェント。

ステッティン卿(プーティー) ミュールの後継者を自認するカルガンの元首。

第1話 ミュール破局後の危機

プリーム・パルヴァー(ナロビ長老・第1発言者) 見習い候補生、ペレアス・アンソーア。
 君を呼んだのには訳がある。君にはもうそろそろ見習いから卒業して貰いたい。そして現場に赴く前の最後の口頭試問をしたい。といってもほとんどは私が喋る。喋るといっても、口、言葉ではないがね。
 
ペレアス・アンソーア ええ結構です。よく感応できてます。ナロビ長老、いや第一発言者。
 
プリーム・パルヴァー それでは、まず、五十年前に第二ファウンデーションにミュールを誘き寄せるのに成功した、辛うじてトランターのことを秘密にできた。捨て身の戦法が功を奏した第一の要因はなんであったかね?

それはミュールの自尊心を利用できたことです。一度、ターミナスを征服できた、次は残る第二ファウンデーションのみだという過信から、焦りすぎたのを逆手にとったからです。

プリーム・パルヴァー それでいい。そして彼ミュールに、プリッチャーを通して、ダゼンダ( the end of stars )が本当の第二ファウンデーションだと思わせた。
 ダゼンダがミュールに征服される前に、我々は、ダゼンダ人をコントロールして、ミュールのいないカルガンを支配下に置いた。
 彼の帰る場所をなくした。彼をカルガン星系のロッセムに誘き寄せたのも私だった。
 そして彼の寿命とともに、彼の全銀河支配の野望も費失せた。
 
ペアレス・アンソーア 彼の自信を徹底的に挫いたからの成功だったのですね。

プリーム・パルヴァー ところが、それが次の大問題を引き寄せてしまった。セルダンにでも読めなかった事態に突入してしまった。新たなセルダン危機の到来なのだよ。アンソーア君。

第一ファウンデーションが復活するに及んで第二ファウンデーションを快く思わなくなった、という事態なのだ。次の銀河で覇を唱えるのは、第一ファウンデーションのみだという第二ファウンデーションに対する警戒を生んでしまった。
 両者は飽くまで補完関係であり続けなければならないのだが!そこで君にはターミナスに潜入して貰いたいのだ。

第2話 深夜、窓を叩く音がする

(アルカディアは、祖母ベイタ・ダレルの生涯を題材とした伝記を書き始めようとしたやさき、二階の彼女の部屋の窓を叩く音がした...)

アルカディア・ダレル 行くわね、ミーター。
 ははは、しめしめ、同級生のオリンサス・ダムをデートに誘ったら、特殊盗聴機を作ってくれたわ。これでお父さんたちの密談を傍受できるっていうことだわ。夜な夜なの会合なんて、普通じゃないんだからね。

このあいだの作文、学校でボツになったなんて悔しい。
 その理由が馬鹿げているんですから。名門ダリル家のご令嬢の作文としては国家秘密に入れなければならないくらい、優等過ぎるっていうのよ。
 ある学者なんて、一回読んで、手が震えていたというの。そんなことあり得る?こっちは宿題で書いただけだというのに。
 ミーター、これはボツだわ。初めから行くわね!
 
ミーター・マロウ アルカディアお嬢ちゃま、私、作文作成機といたしましては、ボツの方が嬉しいのです。
 あなたの論文は、纏めようのない独り言みたいですから。
 気にさわられたら謝りますけど。

アルカディア お嬢ちゃまはやめてね。アルカディーと呼んで、お願いね。

うん、タイトル、『追憶の鍵を開けて』を書く気になった動機は、50年前の祖母ベイタの新婚旅行からの出来事からである。
 夫の故郷ヘイブンに着いたそうそう、カルガンに行ったと思ったら、数日もしないでターミナスに戻り、あの忌々しいミュールの占領にあった。
 占領間際、辛くも脱出したもののその後、暫くしてターミナスに戻り、老後を安らかに過ごしたのであるが、その間の出来事が一切、謎なのだ。
....................

(窓を叩く音がする)

トントントン。

ミーター アルカディー。途中ですみませんが、やはり文脈が合いませんが?トントントン、とは?

アルカディア ミーター、私、トントントン、なんて言ってないわよ、深夜であなたも疲れたのかしら!

ペレアス・アンソーア ごめんください。

さっきから窓ガラスを叩いているんですが、開けてくれませんか、僕は、ペレアス・アンソーアと申します。決して怪しい者ではありません。

ちっちゃくてかわいいアルカディーちゃん。
 
アルカディア まあ、失礼ね、もう私、たいした淑女ですから。

泥棒でも二階の窓なんか、叩いたりしないわよ、怪しくないわけないでしょう。
 多分、父さんに会いに来たのでしょう。わかってるわよ。
 今頃は一階の玄関でブザーを鳴らしても無駄ですもん。お手伝いさんはずっと留守ですからね。
 それに「かわいい」はよして、誰が窓なんて、開けてあげるもんですか。今は私忙しいんですから!

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