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ミーターの大冒険 第三部 コンポレロンへ 第10話 「ミーター詩人・哲学者になる」

112第10話ミーターの大冒険 第三部 コンポレロンへ 第10話 「ミーター詩人・哲学者になる」

あらすじ

 ミーターは亡きアルカディアの遺志通りアタカナ探索にターミナスに旅立った。傍らには、不思議な自らをイルミナと名乗る「銀河帝国辞書編纂図書館」のバーチャル・コントロールが同乗していて、ミーターの話し相手になっていた。二人を乗せたファー・スター2世号は順調に加速を上げた。
 しかし、目指す禁断の天体オーロラに辿り着くルートが見つからない。ミーターは、その情報をコンポレロンで手にはいるとふんだ。
 進路をコンポレロンにとった時、ジスカルド・ハニスからハイパー・ウェーブ通信が入った。
 二人の若いターミナス人が「別動隊」の候補者として名前があがった。
 アルカディアのラヴェンダー農園のはじまりの母系先祖の「グレディア」のことに話題が及び、ミーターは何かの記憶を呼び覚ます。
 想像力?
 幸せ?
 やすらぎ?
 ルピナス!

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ミーター イルミナ、いよいよコンポレロン星域だな!

イルミナ そうよ、ターミナスの太陽よりスペクトラムがやや短く、コンポレロン星はターミナスの軌道より外側ですから、肌寒いのは覚悟しなくてはならないわ。と言っても私は地表には降りませんけどね。

ミーター また、余計な口、しゃべって、減らず口って言うんだ。少し性格変えたらいいんだがなぁ!

イルミナ なにをおっしゃるロボットちゃん、おぬしもたまに人間の男の子みたいにボ~っとする癖、なんとかならんのか?

ミーター いいや、イルミナ、今、ずっと真剣に考えていたんだ。仮に不死の従僕さんがこの銀河の歴史消滅を画策した張本人だとしたら、なぜロボットの分際で主人の人類に対して致命的な犯罪行為をしたか。なぜ僕らは、ありもしない可能性のいわゆる人類の故郷の「最古の星」を探さなくてはならないのか?とね。
 いつも夢見てる。アルカディアには悪いけど、ある星の谷間の薄暮に紫に光るルピナスの光景をね。

イルミナ ミーターさん、あなたって、人間に生まれ変わったとしたら、「哲学者」か「詩人」っていう職業が向いているわね!

ミーター そうからかうな。それはそうと、そもそも「コンポレロン」っていう妙な響きの固有名詞の意味は、なんなのかい?

イルミナ そうね、今、コンポレロンの首都の図書館と接続してみるね!

ミーター 接続って?驚いたなあ!お前の偉大なる機能の一つなのか?

イルミナ そうよ、知らなかった?各図書館の全文献にアクセスできるわ。0.1パーセク以内だったらね。

・・・

イルミナ 正式な記載ではないんだけど、言い伝えなら山ほどあるわ、
 ええと、少し整理してまとめると、スペーサーを駆逐したセッツラーの最初の星とあるわ。その『伝説物語』には、トランター銀河帝国の前にこの星域は、ティラニー帝国というのがあって、当時は、ベンバリー・ワールドと呼ばれていたみたい。その前の時代は、もっと不鮮明だけど、ベイリー・ワールドという記録も残ってるわ。いつの頃からか、ある迷信の影響がましてきて、この星の原初に、敵対していたスペーサーの女性と仲良くなった貿易商人のベイリー・ワールドの男の話があるわ。まったくの作り話となってるけどね!
 コンポレロンっていうのは、「共に男女が連れだって、港から旅立つ」っていう意味らしいわ。ロマンチックな表現ね。

ミーター まてよ、イルミナ、ついにお前に、なぜ俺が「グレディア」とういう名前にこだわったかの訳が今わかった。その名前を、ハーディンの次女に薦めたのは、コンポレロン出身のボー・アルーリン。アルカディアが、説明してくれた物語がある。ガール・ドーニックがハリ・セルダンに提出したという「故郷星探索記録」に、彼がまだ彼の故郷の星、シンナックスにいた頃の記録が捕捉されてあった。そのなかにガールが「証古学」に目覚めたきっかけをつくったある発見が書かれてある。ある寺院の裏に石棺の中に二体の遺骨を発見した。その蓋には古代銀河聖語で「夢多き300歳の若きグレディア・ソラリアとダニール・ジスカルド・ベイリーここに眠る」と刻されてあったという。その不可思議な言葉の意味が今わかった気がする。

ミーター どうかしたのか、イルミナ?!

イルミナ ミーターさん、助けて、私も、「哲学者や詩人」になりそうだわ!


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