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SUMMER SONIC2023 OSAKA

SUMMER SINC2022

2022年8月21日、人生初の夏フェスに参加した。念願のサマソニ。ラジオでしか聞く事の無かった日本の四大夏フェスの一角。そこに参加できることの喜びは言い表すことが出来ないものだった。
ほぼ同時期に自分の中で音楽の聴き方に変化が起きていた。Twitterでの出会いやKingGnuのルーツを辿っていた事などが2022年の夏前に重なったことで今まで聞き流していた音楽や未知の音楽、アルバムを通じて聴く事等々の楽しさに触れ始めていた。だからこそ2022年のサマソニではKingGnuとthe1975を同時に見られることにとてもワクワクしていた。

SUMMER SONIC 2022 in OSAKA TIMETABLE

そんな中で観たのは
THE LINDA LINDAS,THE LIBERTINES,MANESKIN,KingGnu,the1975
何より度肝を抜かれたのはMANESKIN。彼らのライブは過去に経験したどれよりも勿論良い意味で荒れていた。前後左右から押されるもその視界には常にただならぬオーラを放つ4人がいた。当時の私は彼らの事をほとんど知らない。知らないなりにも自然と声が出、身体が熱くなった。後々に知ることとなる「現代のロックスター」「ロックの救世主」とされている事実を音源や文字よりも先に自身の体感として受け止めていた。
KingGnuは大きく言えば私の音楽観を変えるきっかけとなったバンドだ。J-POPにブラックミュージックやジャズなど多くの音楽要素を組み込んだトーキョー・ニュー・ミクスチャー・スタイルバンドは私にとって初めてリアルタイムでその快進撃を見ているバンドだ。そんなKingGnuのロック然とした佇まいはあのサマソニでも多くの観客を魅了していた。今思うとSNSで見られた曲間ごとに盛り上がりが少し冷めてしまっていた(一切の音が消え観客も手持ち無沙汰になっていた)という意見には納得できる。それでもSorrowや一途でのギタープレイには高揚したし雨燦々での合唱は常田大希が掲げる『Oasisの“Live Forever”をKingGnuという日本のポップスのグループで演る』を再現していた。
そして何よりthe1975。知ったのはサマソニ2022直前。情報は乏しく音楽は有名どころしか抑えられていなかったがそんなことは関係なかった。Japanese Sakeを呷り煙草をふかしながらのステージ、モノクロの映像。スター集団だと感じざるを得なかった。上記2組のバンドほど細部を覚えていないのはそれほどに圧倒されたからだと思う。ずっと身体は踊っていたし、知らないはずなのに歌っていたというのが唯一の記憶だ。
そんなサマソニ2022を経験し、1年間いろんな音楽に触れてきたのちのサマソニ2023は去年よりも楽しめるだろうと思いながらの参加だった。

前日譚~James Blake~

サマソニチケットを購入しあとは当日を待つだけに思われていた2日前。急遽James Blakeのライブへの参加を決めた。時の運と人の縁に恵まれ当日券を手にすると台風の影響で会場が1時間遅れている人生初のZepp Osaka Baysideに到着。実のところサマソニ大阪の情報だけを追っていた私は毎度SONIC MANIAと幕張の事情はほとんど知らない。今回であればNew Jeansと星野源が幕張にしか現れないことくらいしか知らなかった。なので今公演がサマソニ関連だとは知らないままの会場入りとなった。客入りは超満員とはいかずとも人が1人踊るのに丁度いい具合の満員。会場BGMは全く知らない曲ばかりなので全てshazam。周囲にはTwitterで見るような音楽好きが多いことが会話から把握できた。

坂本龍一のAndataが鳴った瞬間にざわつく会場。何かを知っている事が偉い正しいとは思わないが、知識がある方が心地よい空間があることは確実だと実感した。Vincentのピアノの音がどうしようもなく心地よかった。美しい音を生で身に受けた経験はこれが初めてだった。静かなのに体内では沸々と踊り始めたくなっている。しかし気が付けば重低音に囲まれていた。というかあれは音だったのか?五臓六腑を震わせる空気の振動は自分が知っている音楽ライブでは無かった。音の薄膜に包まれてじわりじわりと染み入っていく。そこに加わる高音域は身体を透くような歌声。Say what you will~。シンセサイザーってこんなことできるんやとかこの低音って何とか速さや激しさだけが踊れるじゃないなとかいろいろな思いを抱きながら身体は揺れていた。気が付けば時間は過ぎており、あからさまなロックではないのに体力は削られていた。未だJames Blakeのアルバムを通して聴いたことのない私にとっては初の長編James Blake。歌詞や背景を知らない状態では100%の満足を得られていないのかも知れないことが悔しいばかりだが面白いライブだった。

SUMMER SONIC 2023

上出来も上出来な前菜を鑑賞し遂にサマソニを迎えた。改めてラインナップを見ると
1日目:Kendrick Lamar, Liam Gallagher, INHALER, THE KID LAROI…
2日目:Pale waves, ずとまよ, Holly Humberstone, Cornelius, Wet leg, Thunder Cat, Blur…
迷うことなく2日通し券を購入したのはケンドリック、リアム、ブラーに尽きる。自分の好きな音楽の背景にある音楽の象徴ともいえる3組が同時に見られることなど今後無い。

8/19

SUMMER SONIC 2023 in OSAKA DAY1 TIMETABLE

ももいろクローバーZ
2023の始まりはももクロ。会場に着いて「とりあえずOCEAN行くか…」と足を運んだ時に聞こえてきたバンドのリハーサルに掴まれた。モノノフさんたちの間を縫って正面の位置で見る彼女らはとにかく快活だった。バンドの音は良く響き、本当に良い塩梅だった。酷暑の中で聞く「行くぜッ!怪盗少女」は誰もが跳ねられる流石のキラーチューン。3曲目のバラードを聞き終えた時点で離脱したがモノノフもそうでない層も取り込んだももクロチームは開幕に丁度良かった。

sumika
高校時代、sumika好きなクラスメートがいたなぁと懐かしみながら何となく見に行った。リハーサルから本気というスタンスで2曲ほど披露し、まもなくフィクションから本編が始まった。超久々に聞いた感想としてはど真ん中ポップだなという。変な癖が皆無でそれは歌声にも通じていた。続くLovers,ふっかつのじゅもん,マイリッチサマーブルースとsumika風味が広がっていく。ここでステージで流れている映像の趣が変わった。黒地に白線が波打つArctic Monkeysの「AM」のジャケ写のような感じだ。そこから始まったNew Worldは知っているsumikaの楽曲の雰囲気とは違いどこかロックぽさがあった。何があったのか全く知らないがこんなギターロック演奏するんやと驚いた。新たなsumikaの一面を見れたことが意外な収穫だった。

INHALER
時間は16時半ごろ。この時間帯になると帰宅し始める人もいるサマソニ大阪の会場。シンプルなステージに白黒で彼らを映すだけのスクリーン。西日が一番映えるバンドなんじゃないかと思えるほどにボーカルの声の広がりがマッチしていた。ギターもドラムもベースもちゃんとしていてU2っぽいといわれるのは嫌かもしれないけれど、やはりU2の上に立っているなという感じがした。他のアーティストよりもロック好きおじさんのような人が多くいた理由も納得のステージだった。

Liam Gallagher
まだoasisを求めていた。YouTubeで見ていただけでも痺れるようなあの熱狂を感じてみたかった。そういう思いを抱いたままリアムのステージを見ることになった。この90分間でその思いが少し報われた気がする。予感はすでに開演前から聞こえるLive foreverの合唱にあった。開演前からの合唱なんて経験したことはないし、加えてここは日本だ。間違った認識かもしれないが音楽が日常に溶け込んでいるとは言い難い文化である日本で自然発生的に起こる合唱に今から見るのはoasisの一端なんだとじわじわと嬉しさが込み上げていた。「Fuckin' the Bushes」が始まった瞬間の弾けるような歓声こそまさに求めていた空気感。どこか気だるげにそして相変わらずの格好で現れたリアムに注がれる叫びと手。息つく間もなく「Morning Glory」「Rock ’N’ Roll Star」の大合唱。始まって間もないのにTonight I’m a rock 'n’ roll starの言葉は確実に正しいと感じられた。あの日のあの瞬間、リアムは世界一のロックスターだった。嬉しさと感動とが入り混じる中で心の底から叫んでいた。リアムのソロ曲とoasisの曲とを行き来する中でバンドの音がすごく聞きやすかったことが印象的だった。日本酒を飲んだ話をしたり、上空を飛ぶヘリに口にはしていない悪態込みの視線を向けたり終始機嫌も調子もよさそうだったリアム。モニターに映されるのはイギリス国旗やアルバムを掲げる観客の姿。完全に憧れたあの空間にいる。憧れたロックスターのリアム・ギャラガーが存在している。西日が差す中で始まったライブも「Wonderwall」のころには暗くなっていた。そんな中で響くイントロがもう終わりが近いことを伝えているように感じた。最後すべてを出し切るように、しかし飄々とするリアム。「Champagne Supernova」と「Live forever」の選べない2択を迫られた結果、最後に必死でBut you and I we live and die The world’s still spinning around we don’t know why…と叫ぶことができ心の底から本当に良かったと思えた。結果的にはやはりoasis楽曲の方がシンガロングされていたけれど、リアムの現在の魅力をこれでもかと突き付けられた。会場全体が一瞬90年代に飛んだのかと錯覚できるような雰囲気はもう2度と味わえないかもしれないと思うと貴重な大事なライブだった。

Kendrick Lamar
もっとも荒れていたのは間違いなくケンドリックのステージ。リアムのステージが終わると後方から見るからにケンドリック目当ての(髪型や服装から一目で分かる)少年少女が押し寄せてきた。SNSを見ているだけでは感じられない世間での聞かれようを見せつけられた。若者の熱気に包まれる中で時間をかけて作られるまっさらなステージ。バンドセットがステージ脇に設営されていたことをのちに知ったが全く気にならない音響だった。始まった瞬間から途絶えない狂騒。掲げられているスマホの数が明らかにどのアーティストよりも圧倒的に多い。日本の少年少女たちにも多大な影響を現在進行形で与え続けているケンドリックの狂気的な人気を目にした。背景のシンプルさ、統一されたバックダンサー、完璧なステージを文字通り1人で背負うケンドリック。ふと垣間見える人間味。その隙間にまた観客が歓喜する。BLM運動でのアンセムとなった「Alright」の大合唱。Alls my life has a fight, nigga。どれだけが歌詞を知っているのか。歌詞を知ってこそとケンドリック好きの友人は言っていたが、あの光景を見てしまえばそればかりではないと思い直すのではないだろうか。

8/20

SUMMER SONIC 2023 in OSAKA DAY2 TIMETABLE

Summer Whales
出れんの!?サマソニ!?枠の1組目。2日目の開幕として最高だった。あの暑い空間に少し風が吹いたと同時に響いたギターに打たれた。グランジ感を含んだ海外インディーロックのようなサウンド。この日のちに見るPALE WAVESにも通ずる音楽。めっっちゃ好きだ。その佇まいからは何年後かもっと大きなステージに立つ姿が容易に想像できた。

Mlle.
同じく出れんの!?サマソニ!?枠の2組目。新亜並行空間のメンバーがサポートとして出ているという事で見ることを決めていた。キーボードとドラムの掛け合いから始まったステージ。髭ダンやsumikaのようなJ-POPさの中にあるキーボードや管楽器隊が放つジャズ要素に自然と踊れた音楽だった。

PALE WAVES
WANIMAに集まっていた客がいなくなり少し寂しくなったのは事実だと思う。けれど集まった客の熱量は高かったし、それ以上にヘザーを筆頭に彼らの熱量も高かった。暑さにやられていたように思える客席前方付近もLiesのイントロが聞こえればパチッとスイッチが入ったかのように合唱し手を掲げていた。ステージを自由に動き観客を煽り、客席に降り、客席からフラッグを受け取る。観客と頻繁にやり取りを行う姿に彼らのステージでの心情が現れていた気がする。3回目のサマソニでメインステージにまで届いたポップロック、ポップパンクの担い手はサマソニに完全にマッチして盛り上がりを生んでいた。

ずっと真夜中でいいのに。
流石の人の多さ。沈香花を聞いて一度見てみたいと思っていた。アルバムを通してベースのメロディやバランスが好みだったのだが、それはライブでも変わらなかった。継続的にずとまよワールドが閉鎖された空間に満たされていた。前日幕張では星野源が「自由に踊って」と呼びかけたらしい。この日同じ言葉をフェスという会場で発したことに意図などないのかもしれないが、近くで変な踊りをしている人を見て伝わってるなと感じた。

Cornelius
今年見れてよかった。リズムや響きの感覚のようなものを視覚と聴覚とで体感する音楽の授業を受けているようだった。音楽がきちんと勉強できるものなのだと頭で理解しながらCOUNT FIVE OR SIXのようなアップテンポな曲では身体全体で感じるままに踊り狂えた。セットリストには言葉では言わないものの確実な意図を感じた。キュー、環境と心理、あなたがいるなら。

blur
正直な話、ブラーに関しては知らないことが多すぎる。バンドの歴史やなぜ評価されているのか、音楽性も掴みきれていない。そんな中で見たブラーはリアムとは異なる上品さが印象的だった。その姿から音楽まで上品さの中に見えるバンドっぽさがとても良かった。最新のアルバムは聞いていたので「St.Charles Square」から始まったのは救われた。昔父親が車内で流していたロックを思い出させるおじさんの渋みが利いたギターロックに安心感を覚えた。そこからは知っている曲と知らない曲を行き来しながらブリットポップを味わっていた。「ParkLife」などの曲を経たあとの個人的なピークは「Song2」。無条件に飛び跳ね音源よりも激しいSong2を体験した。「The Universal」を以て終了したブラーのライブの貴重さが分かるのはもう少し後かもしれない。

音楽が好きな人生でよかったなと、明日からも音楽を聴こうと思える2日間になった。来年も暑さに負けずに参加したいと思う。

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