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「優しくされたら涙が出ます」

帰り道の終電。

ほんのわずかな

その時間だけ会えた
二十歳の前田ちゃん。

私は会議があって

前田ちゃんが行ってはった
飲み会に行けなかったけど、

帰るタイミングが重なったから

一緒に電車に乗った。

「最近、大丈夫?」

って聞いたら

終電で

人目もはばからず

ポロポロと涙をこぼしながら

「優しくされたら涙が出ます」

って。

つい、

「優しくされるべきなんやで」

そう言ってしまった。

涙は美しくて、

綺麗な透明だった。

二十歳の未来ある彼女に、

誰が、

そんな思いをさせてるのか、

すぐに分かった。

悔しくて憎くて

仕方がない。

‘かわいい子には旅をさせよ’

それもあるかもしれないけど

彼女の涙の理由は

それだけじゃない。

寂しい大人が

寂しさを糧に

彼女を傷付け

満足してる。

正しいように聞こえる

大人が並べる言葉。

真っ直ぐに受け取ってしまう

素直な彼女。

その言葉には

たしかに

正しさもあるけど、

その言葉で

傷付けているなら、

全部間違い。

全部の言葉、

そこに潜む正しさ、

そこにある愛、

全部が間違いに変わる。

彼女を傷付け

自尊心を埋めようとする

あの人が

きらい。

ただ、

きらいな人からは、

学ぶことも多い。

だから、

あの人から離れなさい、

とは言えなかった。

「言われたこと、

これからは抱え込まずに

私に教えて。

その中にある

必要なものだけ

取り出して伝えるから。」

そんな風に言って

私は彼女を見送った。

私は

あの人みたいな大人を

増やしたくない。

私は

あの人みたいな大人には

絶対なりたくない。

その醜い姿を見せてもらえて

私は恵まれている。

未来のある若い世代を

サポートするのが

私の役割なんだと、

気が付いた。

前田ちゃんのお陰で。

いつも

頑張ってくれて

ありがとう。

そう伝えよう。

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