インドの格差

  インドの小売業におけるポイントの格差についてもう少し深堀をしてみたい。格差は何も賃金だけではない。様々な格差が最終的には、それが最終的にお金の格差に帰結しているが、お金の格差につながっているものをいくつか紹介したい。
  賃金にも関連するが、所有する資産の格差がインドはとにかく大きい。インドでは贈与税が無いため、親の資産はそのまま子供に引き継がれる。もちろん子供の数だけ個人が相続する資産の金額は減ってしまうが、資産家の子供は「強くてニューゲーム」で人生をスタートさせるので、よりそれでも自然階層は固定化してしまう。資産格差の指標の一つにトップ1%の持つ資産が全体の何%の占有率の指標がある。日本は、トップ1%の資産家の持つ資産は、日本全体の20%弱だが、インドのトップ1%の持つ資産はインド全体の45%を占める。100,000ドル以上の資産を持つ人は、インドの成人人口の中の1.8%しかいない。それでも人口で見ると1560万人になるのでそれなりの規模になるのだが。一方で、インドの78%は10,000ドルの資産を持っていない (https://www.credit-suisse.com/about-us/en/reports-research/global-wealth-report.html) 。同じ社内で同じような給与の人でも、普通の人は1万円~2万円程度のスマホを使っている人が多いが、同じ給与体であっても新作iphoneを発売と同時に持っている人がある一定数総ン在するが、家が資産家なんだろうと感じる。
  教育格差も日本の格差とはけた違いだ。インドを代表する大学と言われるインド工科大学通用IITを卒業すれば、米国のIT企業から年収1000万円を超えるオファーをもらえるとはよく聞く。IITを卒業すれば、名実ともに世界の頭脳と言っても良いだろう。また、2016年度におけるインド国内のMBA取得者は約20万人となっており、(https://economictimes.indiatimes.com/jobs/indias-mba-crisis-why-fresh-graduates-are-not-getting-jobs/articleshow/61794456.cms ) 同年の日本のMBA修了者の約2500人の100倍弱の人数がMBAを毎年取得している。(https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/085/gijiroku/__icsFiles/afieldfile/2018/01/29/1400609_04.pdf)。大企業と言う規模の会社になると、本社で働く人は一般社員であっても、 MBAを持っている人は非常に多い。日本企業でMBAを持っている人は、大企業であっても珍しいのでMBAホルダーとして認知されている場合が多いだろうが、インドの場合はMBAを持っていることが珍しくないので、逆に認知されていない場合もある。一方で、インドの識字率は2011年の国勢調査結果において、74%(男性82.1%、女性65.5%)となっており、字を読めない人が全人口の1/4を占める。識字率の一番低いビハール州の女性の識字率は52.7%となっており、女性の約二人に一人は字が読めない。日本の場合は、識字率はほぼ100%に近く、大学進学率も50%を超えているが、MBA取得者はインドと比べ圧倒的に低い。この意味では日本は教育格差が低い国と言えるだろう。
  教育格差の前に、識字率が低い事を見れば、一般知識や基礎学力の格差が大きい事も想像がつく。識字率と言う面では、近年は基礎教育の徹底もあり、年齢が若くなればなるほど、識字率は高くなり、ジェンダー間での識字率のギャップも低くなる。20歳以下の若い世代では、字が読めない人はほとんどいない言っても良いかもしれない (https://www.orfonline.org/research/literacy-in-india-the-gender-and-age-dimension-57150/)。一般知識や基礎学力の面では、インドでは世代間格差が大きいと言えるだろう。結局、字が読めなければ単純肉体労働でしか仕事は無いし、それ以上の仕事を任せる事もできない。若年層に関しては、基礎学力があるので格差を埋めるチャンスがあるが、年齢が上になればなるほど格差を埋めることは困難だ。
  インドにおいては、英語力の格差とそれに付随する格差も大きい。インドは英語を喋る国として認知されており、英語を使うことのできる人は1億3千万人と人口の10%を占める。しかし、英語を第一言語としてしゃべる人は0.2%ほどしかなく、インド人のほとんどは、様々な教育によって英語を習得している。所得が高いほど英語の習得率は高くなるし、都市に行けば行くほど英語の習得率は高い (https://www.livemint.com/news/india/in-india-who-speaks-in-english-and-where-1557814101428.html) 。そして、英語力は最終的に所得格差につながる。英語を全く喋れない人と英語を流暢に喋る人では平均して4倍の時給格差がある (https://www.ideasforindia.in/topics/macroeconomics/does-it-pay-to-speak-english-in-india.html) 。
  インドで格差を語り始めるとキリがない。都市/地方の格差も大きく、上記に記載した項目の多くは都市にいけばいくほど高く、地方に行けば行くほど低くなる。教育が格差を埋めるポイントになるが、そもそも筆記用具が買えない家庭も多い。インドはIT大国と言われ、Amazonなどの巨大IT企業も開発拠点を構えるほどであるが、筆記用具すら満足に揃えられない家庭や学校があることを考えれば、ITの教育が受けられることがどれだけレアであるかも想像がつく。インドと言う発展途上の人口大国において、どのようなことも、トップ層は先進国同様、場合によってはそれ以上の指標をたたき出すものは多い。けた違いの天才やけた違いの資産家もいる。一方で、その他大多数は、本当に想像以上の貧しい状況で生活をしている。首都のデリーやIT都市として発達したバンガロールであっても、素足で生活している人も山ほどいる。インドで生活をしてある程度の月日が経つと、格差を見るのが当たり前になり、そこまで気を払わなくなるのが正直なところだ。しかし、改めて考えるとその格差に唖然とする。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?