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『尘封十三载』 中国ドラマ 鑑賞記録

尘封十三载(塵封十三載)
埃の積もった十三年
配信 爱奇艺
2023年4月6日
全 24話

トップ画像 尘封十三载 微博 


今回のドラマもまた爱奇艺の「迷雾剧场」シリーズです。ここのところ刑事もの視聴が続いていて設定もキャストも被ったりしてるので、頭の中かなり混乱気味ですが、そんなことは吹き飛ばしてくれるくらい熱中しました。
ヒューマンタッチのハートフルなクライムサスペンス、とでも呼びたくなるような。これは面白い!と『尘封十三载』愛を叫びたいです!!

中文台詞を聴きつつAI日本語字幕を追う、いつもの "iQIYIスタイル" で鑑賞しました。

決定的なネタバレは避けますがストーリー上のネタは多少露呈してしまうと思います。未視聴の方はご注意の上お付き合いくださいませ。





1997年の二人 尘封十三载 微博


13年

主人公は 陳建斌 演じる 衛峥嵘陳暁 演じる 陸行知
1997年に南都市で起きた未解決殺人事件。13年の沈黙を破って2010年に同様の事件が起きる。
最近いやに多い(わたしが観てるのがたまたま?)過去と現在2つの時点を行ったり来たりする刑事ドラマだ。

13年の時は主人公二人を変化させる。見た目も状況も。革ジャン着てバリバリ鳴らしてた先輩刑事は図書館の警備担当、しかし今は しがないオジサン。一方当時オドオドくっついて歩いていた新米刑事は、知識と経験を蓄えてパリッとチーフを務めている。
訳あって一線を離れていた 衛峥嵘だが、捜査チームに加わって陸行知や昔の仲間と共に事件解決に向けて難題に取り組む。

やり手の刑事だった 衛峥嵘がショボくれているのは何故なのか。
まだ初々しさの残る 陸行知と杨漫夫婦に年齢が合わない女の子がいるのは何故なのか。
事件と交差する主人公たちの内情が、1997年と2010年を交互に行き来しながら徐々に明らかになっていく。


2010年の二人 尘封十三载 微博


13年を経過した二人の対比が面白い。
衛峥嵘 は今や警察学校を目指す男の子の親。彼が小さい頃に使っていたピンクのかわいい水筒を愛用している。その衛に叱られていたばかりだった 陸行知は、当時から推理に応用するため勉強していた心理学もしっかり板について切れ者刑事ぶりが頼もしい。
顔つきからして全然違う演技がいやホント、素晴らしい陳暁!


周りの人々

衛峥嵘 には奥さん子供がいるが、13年前は別の女性と仲がいい。彼女は 白晓芙といい警察の科学捜査に協力する研究員だ。男の子供もいる。その子の父親も登場するが、当然 衛峥嵘には敵対的だ。

陸行知の妻、杨漫は明るくて気立てのよい素敵な女性で、教員をしたり英語の翻訳をしたりしている。学生時代から想いを寄せる男性や、親しみを持つ学生などもいて 陸行知は気が気じゃない。
この夫婦の女の子 陸安寧(寧寧)は、実は13年前の事件の被害者の遺児だ。警察に連れて来られたところ 陸行知に懐いてしまい、引き取ることになったのだ。いきなり家に子供を連れて帰ってきた夫に文句も言わず、最初は懐いてくれない子供を誠意を込めて慈しむ妻。なんとデキた妻なのだろう! 陸行知でなくても惚れるのはワカル!!

そんないきさつの 陸安寧を我が子同然、いや、それ以上に愛する二人のラブラブぶりが、とてもいい。お揃いのパジャマなんかも着ちゃってるw
そしてなんと彼女のために自分たちの自身の子供を持たない決心までするのである。
本当に仲がよくて、素敵な夫婦だ。外では厳しいが家庭では超優しい陸行知にもトロけてしまう。ドラマをガッチリと支える二人の愛なのである。

刑事仲間の面々も、なんとも素敵だ。というか、面白い
例えば、監視カメラに映った画像から容疑者を特定するために街の市民に協力を仰ぐ場面がある。モニターに知ってる人が映ったら「止めて」と言ってほしいと頼むと、あの人もこの人も知っているのでビデオが一向に進まない。困り顔の刑事たち(笑)
こんな思わず声を出して笑ってしまうシーンがちょいちょいあるのだ。

サブの刑事コンビ、老朱と老杜の友情にも泣かされた。

このドラマの最大の魅力は、かなりゾっとする事件を追うプロットが緻密な脚本で隙なく構築されている反面、随所に明るい笑いやほのぼのシーンが盛り込まれていて、重苦しいだけじゃないことだろう。笑って泣かせてくれるクライムサスペンスなんて、最高ではないの!



捜査

しかし捜査は難航する。手がかりとなる遺留品はHBの鉛筆くらいしかなく、目撃者もいない。ようやく上った容疑者も供述させると真犯人ではない。
そんな容疑者メンにはいかにも怪しい感じの人達が勢ぞろいだ。例えば 曲振祥。風貌からして憎み切れない。


曲振祥 細虫とあだ名されるコスイ輩を好演する 王骁(笑) 尘封十三载 微博


現場の遺留品を科学的分析で手伝うのは 衛峥嵘の想い人 白晓芙左小青)。とあるアクシデントで2010年には既に亡き人だ。
13年間の技術進歩で、街頭の監視カメラもDNA鑑定も捜査の進展に貢献する。


左小青 演じる 白晓芙 尘封十三载 微博



構成とセンス

24話と比較的短めながら、テンポがよくてシーンに無駄がない。時間を行ったり来たりする展開も、よく練られた脚本のお陰で混乱させられない。
第22話の時点で話は第1話に繋がり、衛峥嵘 サイドの時間は隙間なく埋められてその人生の全容が明らかになる。ここはちょっと鳥肌ものだった。

ただ、それでもまだ事件の謎は解けない。手がかりらしきものもない。
ところが、突然ある証拠が見つかる。エェーーっ!!!な事実だ
予想だにしなかった驚愕の展開。最近ちょっと体験してなかった類の驚きだ。
ここからパタパタと解決に向けて走り出していく。
ラスト2話はゾワゾワと、同時にサラサラと、一気に駆け抜けさせてもらえる。そして収束はジーンと温かい描写。

そして最後だけは時が前に進むのにも、このドラマのセンスを感じた。

各シーンに挿入されるギターやピアノの効果音や音楽(16話の モーツアルトの『レクイエム』は最近観た推し(王一博)の映画『無名』でも使われていたので即座に曲名が判明w)による盛り上げも大変よかった。

各話開始の1-2分後に入るエピソード毎の副題も洒落ていた。名詞形なのでネタバレにはならず、そのエピを最後までみてああなるほど!と膝を打つような言い得て妙な命名にもこの作品のセンスを感じたのであった。
旧字体の漢数字(壱弐参など)使いも粋だったなぁ。

愛ある秀逸なサスペンスドラマだった。
夫婦や親子の絆は、紙(婚姻届)や血(血縁関係)とは別の次元で揺るぎなく結びつくことができるのだ、ということを証明してくれる大団円。

最後に 衛峥嵘 と 陸行知が車の中で語り合うシーン。
「そんなことが可能だろうか?」と問う 衛に 陸が答えるこの台詞が印象的だった。


抱着希望,尽最大力量吧

希望を抱いて力を尽くそう

らん訳



刑事としても家庭人としても、言うは易く行うは難しを実践する陸行知の言葉だからこそ説得力を持つ台詞。
こういうのに超ヨワいわたしは感動で心を鷲掴みされたのであった…


尘封十三载 微博



13年の時の経過を映像で表現した、川を渡るケーブルカーの描写も素晴らしかった。これはちょっと文字で説明できないので、ぜひ実際にご覧いただきたい。
川にケーブルカーが掛ってるというのにも驚き! 合理的だなぁ。


尘封十三载 微博





観てよかったー!という満足感に包まれる佳作でした。

後で調べたところ、刘海波 監督は『鳳凰の飛翔』(天盛长歌)の監督でもあり、おまけに役者として长孙弘(凤知微の兄)役も演じておられたと知り、ビックリでした! ジャンルも違いテイストにも共通点を感じなかったので、レンジの広い方だなーと感心。

グッと心に迫る義理人情系サスペンスがお好きな方にはオススメであります。
熱が入って長くなっちゃいました。
今日もお付き合いいただきありがとうございました!


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