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喘息(27) 難治性喘息と決めつける前に。


0. 本記事のまとめ

難治性喘息は十分な治療を行なっているにも関わらずコントロール不良な喘息の事です。
難治性喘息と診断する前に、吸入コンプライアンス、アレルゲンの曝露、喫煙、鼻症状、薬剤、肥満、ストレスといった増悪因子を除外した上で、本当に喘息の診断で正しいのかについても検討し直す必要があります。

<前回の続き>

1. 難治性喘息とは

十条: 私みたいな難治性の喘息の人って結構いるものですか?

Dr.Y: 難治性の定義によってもだいぶ変わってくるのですが、一般的に十分な薬物治療を行ってもコントロールが得られない喘息患者は全体の大体4〜5%くらいと言われています。

十条: 多いと考えるのか、少ないと考えるのか・・・。いずれにしても私はどうすれば良いのでしょう。

Dr.Y: 難治性喘息と決める前に、本当に難治性なのか確認しなくてはいけません。

十条: どういう事ですか?これだけ治療してるのに困ってるんですから、難治性でしょう。

Dr.Y: 「難治性喘息」というのは、いくつか定義もされていますが、その本質は、吸入ステロイドを中心とした標準治療が効きにくい病態という事です。これを証明するには、喘息のコントロールを悪くしている他の原因がないかを丁寧に確認し直す必要があります。

十条: もっと具体的に言ってもらえますか?

2. 難治性喘息と診断する前にチェックすること

2-1. 吸入コンプライアンス

Dr.Y: はい。まず1番目は吸入コンプライアンスと手技です。「吸入薬を毎日使っているか」とか「正しく使えているか」というのを吸入コンプライアンスと言います。吸入コンプライアンスの悪さが喘息のコントロール不良の原因の大部分を占めるのも事実なんです。

十条: 私は毎日欠かさず使っていましたよ。

Dr.Y: 吸入後の息どめはしっかりできていましたか?むせこんでうまく吸えないとか、吸入がうまくできないような事はありませんでしたか?

十条: いえ。全く問題ありませんでした。息どめも確実に5秒以上できていましたし、吸入薬はいくつか試しましたが今使っているものが最も合っていると感じました。

2-2. アレルゲンの曝露

Dr.Y: そうですか。2番目はアレルゲンの曝露です。いくら吸入薬がしっかり使えていても、アレルゲンの存在で常に刺激を受けてしまっていると薬の効果が打ち消されてしまいます。

十条: 先生、私、アレルゲンは色々調べても全く引っかかってこないんですよ。実生活でも花粉症も含めて何もないですし、血液検査でアレルゲンの存在を調べても全く引っかかりませんでした。

Dr.Y: (紹介状に添付された資料を見て)本当ですね。アレルゲンは全く見つからないみたいですね。それだけではなく、全体としてアレルギー素因がどの位強いかを示す非特異的IgEも全然低いみたいですね。

十条: 先生、喘息はアレルギー疾患だと聞きました。それなのに私みたいにアレルゲンが全く引っかかってこないって意味が分からないんです。

Dr.Y: 喘息の原因でアレルゲンの曝露というのは非常に重要なのですが、これが関連する喘息はアトピー型喘息と言って、実は喘息のいくつかあるタイプの中の一つに過ぎないのです。後ほどまた詳しく話しましょう。

十条: 私はその他のタイプの喘息という事ですか。とても気になりますが、後ほど必ず説明をお願いします。

2-3. 喫煙、鼻炎/副鼻腔炎、薬剤、肥満、ストレスなど

Dr.Y: 分かりました。次は3番目です。タバコは吸ってませんよね?

十条: はい。吸っていません。

Dr.Y: ご家族は?職場も含めて、受動喫煙などありませんか?

十条: はい。家族でタバコを吸う人はいないですし、職場でも全館禁煙になってるので、受動喫煙はないと思うんです。

Dr.Y: どんどん行きましょう。4番目です。鼻炎や副鼻腔炎など鼻に関する合併症はありますか?

十条: はい。実は耳鼻科に通院していて、そこで副鼻腔炎といわれています。

Dr.Y: なるほど。治療を受けているのですね。

十条: はい。匂いが感じにくく、鼻詰まりもあります。お薬ももらっていますが、なかなか良くならないんです。

Dr.Y: もしかしたら、鼻の調子が悪いのも影響しているかもしれませんね。

十条: そうなんですか。

Dr.Y: 5番目です。常用している痛み止めとか風邪薬などはないですか。

十条: ありません。

Dr.Y: アスピリン喘息といって、アスピリンやジクロフェナク、イブプロフェンなどを含む痛み止めや風邪薬が喘息を悪化させてしまう事が時々あるので、確認しました。

十条: なるほど。

Dr.Y: 6番目です。最近肥満気味という事はありませんか?

十条: 見ての通り、標準体型だと思います。

Dr.Y: そうですね。見ればある程度分かりましたね。失礼しました。

十条: 肥満も喘息の悪化因子なんですか?

Dr.Y: 肥満があると気道が閉塞しやすいですし、後は脂肪細胞から分泌される化学物質が喘息の悪化に影響を与える可能性が言われています。肥満の喘息患者さんが減量をしただけで喘息のコントロールが改善したという報告もあるくらいです。

十条: なるほどですね。私も太りやすい体質ではあるので、油断はできませんね。

Dr.Y: 7番目です。職場や家庭環境においてストレスなどはありませんか?ストレスというのも立派な喘息の増悪因子なので、溜め込まないことが重要です。

十条: ストレスですか・・・まあ人並みじゃないですかね。現代社会においてストレスがない人っているんでしょうか。

2-4. そもそも本当に喘息か?

Dr.Y: 分かりました。そこまで過剰ではないという事ですね。最後に8番目です。本当に喘息の診断なのか、他の疾患の可能性はないのか、もう一度確かめる必要があります。

十条: なんかネチッこいですね。本当にそこまで細かく検討する必要あるんですか?

Dr.Y: 難治性喘息という範疇になると、治療も高額になったり副作用に注意しながら使わなくてはいけないので、このくらい慎重に事を進める必要があります。これは、本当に大事ですよ。

十条: はいはい。分かりました。どうやってもう一度確かめれば良いですか。


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