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喘息(10) リリーバーをうまく活用してください

本記事のまとめ

・吸入薬にはコントローラーとリリーバーがある
・コントローラーが治療の中心だが即効性はないので、効果を実感できなくてもすぐにやめない
・リリーバーは症状緩和のみが目的(治療にはならない)
・コントローラーをしっかり使った上であればリリーバーは積極的に使って良い


***前回の受診から1週間後***

Dr.Y「あれ?吾妻さん。もういらっしゃったんですか。再診の予定は来週のはずでしたが」

吾妻さん「はい。先週いただいた吸入薬などを使っても効かないんです。なので、3日くらい使って使用をやめてしまいました」

Dr.Y「使うのやめちゃったんですか!?」

吾妻さん「だって、先日先生は薬の有効性と副作用を天秤にかけて考える必要があるとおっしゃってたでしょう」

Dr.Y「はい、確かに言いました」

吾妻さん「それで3日間しっかり吸入薬を使ったんです。息止めもうがいもちゃんとやりましたよ?でも、少し息がしやすくなった感じはありますが、咳の大部分が全然よくならないんです」

Dr.Y「それでやめちゃったんですか」

吾妻さん「はい。だって有効性が少ないなら副作用とのバランスを考えて使用中止するのも重要と思ったんです」

Dr.Y「それは判断のタイミングが時期尚早でしたね」

吾妻さん「えっ」

Dr.Y「吸入薬が効いていると実感できるまでの期間は人それぞれで、これはあくまで私の印象ですが、早いと2〜3日ですが、遅いと2週間くらいかかる方が多いです」

吾妻さん「そうなんですか!?じゃあ3日使っただけでは薬の効果が判断できないということですか」

Dr.Y「そうです。実は、数日だけ使って効果ないのでやめてしまう患者さん、結構多いんです。しかし、あと数日待てばせっかく良い薬で改善するチャンスがあるのに、判断が急ぎすぎるあまりにそのチャンスを失ってしまうのは勿体ないとしか言いようがありません」

吾妻さん「えー、それじゃあ効果が出てくるまでの間、ずっと待っていなくてはいけないんですか。もっと早く効いてくれる薬はないんですか」

Dr.Y「こればかりは致し方ありません」

吾妻さん「先生は人ごとだと思ってそう悠長に構えてますけどね。私は明日も明後日もその次の日も会議でしゃべらなくてはいけないんです。電話対応などもあるし、その最中に咳の発作が起きてしまわないか不安なんです。仕事に支障をきたしたまま2週間も待つのは辛いんですー。」

Dr.Y「悠長に構えているつもりはありませんでした。でもおっしゃる通り、薬が効いてくるまで時間がかかるからといって、その間、我慢だけしててくださいというのは酷な話ですよね」

吾妻さん「咳がでてないときだってそうです。いつ急に咳の発作が出るかと思うと、怖くて怖くて。もうわたし、どうしたら良いですか・・・ストレスで気分が落ち込みそうです」

Dr.Y「うーん、そうしたら治療を強化するか・・・でもやっぱり吸入薬を3日しか使ってない状況で治療強化というのも過剰だしな・・・」

吾妻さん「一生懸命考えてくれてありがとうございます」

Dr.Y「ちなみに先日一緒に処方したリリーバーは試しましたか」

吾妻さん「・・・一時的に気管支を拡げてくれる、この薬の事ですか」

Dr.Y「そうです・・・ちょっと、一回も使ってないじゃないですか」

吾妻さん「発作止めをたくさん使うのは良くないのかと思って、極力吸わないで我慢した方が良いかと思って」

Dr.Y「いいですか、喘息の吸入薬はコントローラーとリリーバーに分かれるんです。毎日定期的に使うコントローラーは吸入ステロイドが入っていて炎症抑制作用があるので治療の中心ですが、即効性はありません。」

吾妻さん「レルベアとかアドエアとかフルティフォームとかアテキュラとかシムビコートとかは全部コントローラーですね」

Dr.Y「はい。喘息治療の中心はあくまで、これらコントローラーに含まれる吸入ステロイドです。」

Dr.Y「ただし最初のうちはコントローラーが効いているのを実感できなかったり、効きの悪い時間帯などがあって咳の発作が出ることもあるでしょう」

吾妻さん「そこで使うのがリリーバーですか」

Dr.Y「はい。リリーバーは炎症を抑える作用がないので治療にはなりませんが、短期間で一時的に気管支を拡げてくれます」

吾妻さん「リリーバーはメプチンとかサルタノールとかの事ですね」

Dr.Y「コントローラーを使っていても突発的に出てくる咳などを鎮めるためにリリーバーを使います。これはステロイドが入っておらず、その場で気管支を広げてくれるだけなので治療的な意義は全くありませんが、治療が効いてくるまでの間の症状を抑えるだけなら非常に有効と言えます」

吾妻さん「リリーバーも併用して使い続けなければいけないということですか」

Dr.Y「安心してください。

コントローラーが段々効いてくれば、リリーバーを使わなくてはいけないような状況は日に日に減っていくはずです」

吾妻さん「なるほど。コントローラーが効くのに時間がかかるので、それまでの間の対症療法としてリリーバーで凌ぐというようなイメージですか」

Dr.Y「だいたいその通りです。逆に、リリーバーを使う頻度で治療の効き具合を判断したりします」

吾妻さん「結構気軽にリリーバーを使っちゃって良いものですか」

Dr.Y「もちろん、咳の発作が頻繁なのにリリーバーだけ使ってコントローラーを使わないというのは最もやってはいけない治療法の一つですが、コントローラーをしっかり使った上であれば、あまり勿体ぶらず気軽にリリーバーを使ってください」

吾妻さん「そうなんですね。私、勘違いしてました。リリーバーは気管支を拡げるだけで治療にはならないから、たくさん使ってはいけないと思っていました・・・」

Dr.Y「リリーバーを使う事自体は全く問題ないです。どちらかと言うと、結果としてリリーバーをたくさん使わなくてはいけないような状況自体が良くないのです」

吾妻さん「リリーバーを何度も使うのが悪いのではなく、リリーバーを何度も使っているという事は喘息のコントロールが悪い状況だと気付くのが大事という事ですね」

Dr.Y「その通りです」

吾妻さん「分かりました。リリーバーも使いつつ、これまで通りコントローラーをしっかり使い続けようと思います。」

Dr.Y「はい。お大事になさってください」

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