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ミニマリズム習得のピラミッド

本記事は、元々モノを大量に所有することが人生の幸福であるという考え(=マキシマリズム)を持っていた筆者が、ある時を境に様々なモノを手放し、必要最小限のモノだけを所有すること(=ミニマリズム)が人生の幸福であるという考えにシフトした経験に基づいて記載されている。マキシマリスト(マキシマリズムを実践する人々)とミニマリスト(ミニマリズムを実践する人々)のどちらもを人生で経験している筆者にとって、マキシマリストの気持ちにも寄り添いながら、「それでもこのように行動すればミニマリストに大きく近づけますよ」というソリューションを提供することが本記事の目的である。一応言っておくが宗教ではない。

本記事を読んでほしい読者像は下記の通り

  • 自宅にモノが増えすぎて片付けが全く終わらない。

  • 外出すると必ず何らかのモノを購入して帰ってきてしまう。

  • 週末のストレス解消方法が買い物になってしまっている。

  • 家にあるモノを減らしたい。

  • 本当に捨てていいモノなのか判断がつかず、捨てる作業が全く進まない。

以上のような悩みに喘いでいる読者様がいらっしゃれば、本記事を読み、これ通りに行動を変えていただくことこそが最強のソリューションになり得るだろう。また、本記事は有料設定をしているが全文無料で読める。一応課金もできる設定にしているので、筆者にコーヒーをおごりたい方は、500円投げてくれると今後の執筆活動の励みになる。

1.はじめに

まずはじめに、ミニマリズムとは何ぞやというところから解説する。知っているかたは読み飛ばしていただいて構わないが、たくさんの方々がこの部分を誤解しているので、できれば一読いただきたい。ミニマリズムとは日本語に直すと最小限主義である。実はこの日本語訳がかなり悪さをしていて、「ミニマリズムって必要最小限のモノのみを所有してつつましやかな生活を送ることでしょ?」のような半分正解で半分誤ったイメージを持たれることが多い。我々が送っているライフスタイルに対してミニマリズムと名付けた親、もしくはそれを最小限主義としか訳すことができない言語の限界を心から恨むしか方法はなかろう(とはいえほかの表現が見つからないが)。
ミニマリズムは確かに最小限主義と訳することができるのだが、所有しているモノを減らすこと自体を目的にに生きるようなライフスタイルではない。ミニマリズムの本質は「資源配分の選択と集中」である。何を言っているのかよくわからないだろう。詳細については後述するが、なにぶんこれがミニマリズムの本質なので、ここでも軽く触れておこう。
ミニマリズムを身に付けるためには、すなわちあなたがミニマリストになりたいなら、まずは所有しているモノのほとんどを捨ててもらうことになるだろう。ここはおおむね皆さんがミニマリズムに対して抱いているイメージと一致している。
ミニマリストになりたいあなたは第一歩として、部屋に散らばっているペットボトルや缶、紙屑、たばこの吸い殻、賞味期限の切れた食品、穴の開いた靴下、いらない郵便物、何本も持っている文房具等、一目でゴミだと認識できるモノを捨てる必要に迫られる。また、買ったけどあまり似合わなかった服、読まなかった本、使わなかった化粧品はメルカリにでも出品することになるだろう。使用済みの口紅でも先端を切り落とせば売れるのが現代である。このあたりはミニマリストになりたいと決心した段階で真っ先に踏むべき手順であり、今後ミニマリストとして生活を送りたいなら脳死で実行できるようになるべきだ。
上述のモノ以外にも、あなたの周りには捨てるべきモノは大量にある。それらを減らす手順の説明は後に譲るが、決められた手順に沿ってモノを減らしていけば、皆さんがミニマリストに対してイメージしているような、何もない網走刑務所のような部屋を作ることは難しくない。が、本番はここからだ。私たちは決して囚人のような暮らしをしたいわけではない。あいにく懲役刑を食らっているわけでもない。ここでミニマリズムの本質が頭をもたげる。モノを捨てることによって、新たなモノを増やさなくなる習慣が身に着くことによって、私たちの可処分所得と可処分時間は大幅に増える。「資源配分の選択と集中」とは、この増えたお金と時間を「自分が最大限幸福を感じられる領域にフルbetしましょうね」ということである。
例えば筆者はジムで筋トレをすることが好きで、ボディビル大会の出場経験もある。もし10億円もらってニートになったとしたら、一生体を鍛えて少しでも強さを追い求めたいと思っているくらいには筋トレが好きだ。
そんな筆者を例とすると、ミニマリズムを実践してお金と時間が浮いたことによって、1時間10,000円程度のコストがかかるパーソナルトレーニングを毎週のように受けて、筋トレの質を最大限上げることができている。
また、時間が浮いたことによって1日90分~120分、週5日のトレーニング時間を確保することができている。趣味がゴルフだという人がいれば、ミニマリズムを実践することによって浮いた時間とお金をパーソナルレッスンの費用やラウンドをまわる費用にあてがうことができるだろう。ゴルフには高いコストがつきものなのだから、可処分所得と可処分時間が増えることによる恩恵は大きい。趣味が料理なら一流の食材を使用して時間のかかる調理を余裕で楽しんで、レストラン顔負けのクオリティを追求できるかもしれない。本や漫画を読むことが好きな人なら読みたい作品をこれまで以上に買って、これまで以上に読むことができる。ゲームが好きな人は重課金したうえでこれまで以上にプレイ時間を投下して上位ランカーを目指すことができる。映画が好きな人は映画館にこれまで以上に足繫く通っても財布が痛まないだろうし、Netflixをだらだら見てしまっても時間が有り余るようになる。旅行が好きな人は海外旅行に行く回数を増やすことができるし、ミニマリストになれば荷物が少なくなるのでその点で相乗効果がある。バイクもクルマもカメラもキャンプも推し活においても、ミニマリズムを実践したうえでお金と時間の配分先を選択し、集中させることによって自分の好きなことをこれまで以上に極めることができるのだ。そろそろミニマリズムの良さに薄々気づいていただけたかと思うので、ここから先ではミニマリズムを習得するための具体的手順について解説していく。

2.ミニマリズム習得のピラミッド

本章では、身の回りにモノがあふれている生活を送っている読者の皆様がモノを効率的に減らし、その状態を維持するために必要なステップを解説する。現代は便利な時代で、インターネットで検索をすれば部屋のモノを減らす方法など無限に見つけられる。ただ、それらの情報を参照するだけでは、モノを減らすための優先順位がつけられない。新たな物事の習得には、到達すべきステップの優先順位が必要だ。ミニマリズムの習得においても例外ではない。
本記事では、効果的にモノを減らすためのステップをLevel1〜Level5までに細分化している。必ず守って欲しいこととして、Level1を達成していない人がLevel2に手を出すのは禁止である。現代の情報大海原のど真ん中を正しいフォームで正しい方向に泳ぐために、この点は必ず守っていただく必要がある。

Level.1 ゴミを減らす

ミニマリズムを習得するうえで、所有しているモノを最小限に減らすことは避けられない。あくまで本質は「資源配分の選択と集中」なのだが、それを達成するためには必要ないモノを容赦なく切り捨てるフェーズを必ず通らねばならない。ただし、これまでミニマリズムを意識せずに生活をしてきた方々にとって、いきなり不用品をすべて捨ててくださいねというのはハードルが高い。そのためモノを捨てる第一歩目として、明らかにゴミだとわかるものをすべて捨てることから始めることを推奨する。

該当するのは下記のとおりだ。前述した内容を再掲した項目もある。

  • ペットボトルや空き缶、その他空き容器

  • タバコの吸い殻(ミニマリズムを志すなら禁煙した方がいい。喫煙するミニマリストは見たことがない。)

  • 不要になった書類、いらない郵便物、その他紙クズ

  • 賞味期限の切れた食品

  • 着古した衣類、穴の開いた靴下

  • いくつも持っている文房具(ひとつの用途においてひとつだけ持つのが理想。)

  • 使っていない食器、カトラリー

上記のようなモノは、部屋をひっくり返して揺さぶってみる勢いで探してみると意外に数多く発見される。恥ずかしながら筆者の部屋にある机の引き出しにも大量の書類がしまい込まれている。偉そうに記事を書いておきながら、ミニマリズムの道半ばだ。ゴミをすべて捨てるだけでも、部屋の綺麗さは大幅に改善される。しかし私たちが目指しているのはあくまでミニマリズム、資源配分の選択と集中である。ここで満足して歩みを止めている暇はない。次のフェーズに進もう。

Level.2 1年間使用していないモノを減らす

Level.1をクリアした方々の部屋はゴミが一切なく、一見整っているように見えるかもしれない。しかし実際にはまだ減らす余地があるのでLevel.2ではさらに深掘っていく。このフェーズで捨てる対象となるのは、過去1年間で使用しなかったモノだ。Level.1で紹介したゴミには該当しなかったのでまだ捨てていなかったが、過去1年間使用していないとモノは数多く存在するだろう。具体例を挙げるとするなら以下の通りだ。

  • 状態は綺麗だが、最近ほとんど着ていない衣類

  • いつか読もうと思っていたが、積ん読状態になっている書籍

  • ミキサー、たこ焼き機、ホットプレートなど、最前線で活躍しない微妙な家電(高頻度で使うならいいけど)

  • 出番の少ない化粧品類(女性はこういうのあるのでは?)

以上が具体例として挙げられるが、正直Level.2で捨てる対象となるモノのほとんどは衣類だ。本章は衣類を捨てるために設けられているといっても過言ではない。特に女性は男性に比べて衣類の所有枚数が格段に多いと思うので、1年間使用していないモノは捨てる、という判断基準を持つとかなりの枚数を捨てられるのではないかと思う。
ちなみに以前知り合いの女性から「女性は男性に比べてファッションが多様だから、そんなにサクサク服を捨てることはできないし、少ないアイテムを高頻度で着まわすということは社会的に難しい」という意見をもらったことがある。これに対する筆者の意見としては、女性も男性と同様に、本当に気に入っている服だけを残して残りは全部捨て、コーディネートの幅が狭まろうとも少ないアイテムで毎日を過ごす方が合理的、である。所有しているアイテムの中でも本当に気に入っているアイテムだけで日々を過ごす方が確実に幸福度が高いし、それによってコーディネートの幅が狭まっても、「またあの人同じ服着てる」とはほとんどならない。
昨日会社にいた同僚がどんな服を着ていたか正確に思い出せるだろうか?かなり斬新だったりあなたの好みにぶっ刺さった服を着ていたわけでもない限り正確には思い出せないはずだ。他人はそれと同じ程度の関心をあなたに持っていると思った方がいい。
またこれは男女関係なくなのだが、もし仮に「あの人また同じ服着ている、洗濯とかしていないのかな」と思われてしまった場合は、あなたが同じような服装を毎日していることが原因なのではなくて、あなたに清潔感がないことが問題だ。清潔感のある人が毎日同じ服装をしていても、「あの人はあえて毎日同じ服装をしているんだな」と思われて終わりである。
やや話がそれてしまったが、本章では過去1年間使用していないモノをすべて捨てることが目的だ。それが完了したら次のフェーズに進んでいただきたい。

Level.3 迷ったら減らす

目に見てわかるゴミを捨て、過去1年間使用しなかったモノを捨て終えたあなたの部屋は、以前と比べて目に見えてモノの総量が減ったのではないかと思う。ここまでやればさすがにもう減らすモノはないのではないか、という思いに駆られるが、まだある。次に捨てるのは、捨てるかどうか迷ったモノだ。いや待ってほしい、わかる。いみがわからんと泣き叫びたい気持ちはよくわかる。あ、note閉じようとしないで、一回この先も読んでから考えて。
例えばあなたが所有しているスマホについて考えてみてほしい、これを捨てようと思うだろうか。まだあまりピンとこない読者のために、以下の通りもう少し例を挙げる。

  • 仕事で着ているスーツ

  • 腕時計(僕は捨てていいと思うけど)

  • 寝具

  • 冷蔵庫(持っていないミニマリストもいるけれど)

以上のようなモノを仮にあなたが持っていたとして、それを捨てようという思いは1mmも発生しないのではないかと考える。実は我々の生活は、このような「捨てようという思いが1mmも発生しないモノ」だけに支えられている。これらを残して他をすべて切り捨てても生活は問題なく成立する。
「この服1軍じゃないし、捨ててもいいかな・・・」→捨てていい。1軍だけを毎日着ていればいい。
「この食器あまり気に入ってないけど高かったしな・・・」→捨てていい。高かったかどうかは今後使用するかどうかの判断基準には無関係だ。サンクコストを回収しようとしてはいけない。そもそも高価で上質にもかかわらず「捨ててもよいかも・・・」とあなたに思わせるということは相当いらないモノなのだろう。安くていらないモノよりもいらない度合が高いと推察される。「この1年間で何回も使用はしたけど、捨てても問題はないかな・・・」と、捨てるというオプションが少しでも頭をよぎった時点であなたはそれに不合格を突き付けているのだ。
捨てるためだけに生まれ、捨てるためだけに大脳をプログラミングされたAIになった気分で、容赦なくモノを捨ててミニマリストに少しでも近づこう。本章をクリアすればミニマリズム習得のための、モノを減らすフェーズは終了だ。

Level.4 1個増やすなら1個減らす

ゴミを捨て、1年間使用していないモノを捨て、迷ったら捨ててきたあなたは、すでにミニマリストとしての品格とオーラと湛えている。「モノを減らす」という領域において、筆者が偉そうに口出しする領域はこれ以上になかろう。ただし、あなたがモノを最小限にしか持たない生活をこのまま継続できるかどうか、という点についてはいまだ疑問が残る。
ミニマリズムを実践しているとはいえ、新たにモノを手に入れたい、増やしたいと思うときは必ずくる。もちろんミニマリズムを実践する前に比べたらあらゆる物欲はかなり弱まるのだが、ゼロというわけではない。この点に対する筆者の意見としては「ミニマリストが物欲を感じることは通常と比べてほとんどない。珍しく発生した物欲については本当に必要なモノである可能性が高いので、さっさと買って満たしてあげるのが吉。しかしながら1つ買うのなら1つ以上捨ててモノの総量を抑えるべき。」である。
新たに洋服を買うのであれば、以前着ていた洋服は捨てる。新たに鞄を購入するのであれば、以前使用してたのは捨てる(用途が違うなら残してもいいが)といった具合だ。この習慣を持っておくのと持っておかないのでは、今後モノが増えて元の生活に戻ってしまうリスクを大幅に低減できる。

Level.5 余った資源を好きなことに投下する

モノを極限まで減らし、その状態を維持して生活できているあなたはきっと、これからもモノを増やさずにミニマリストとしての生活を継続していこうという気持ちにあふれているはずだ。もはやモノを今以上に増やすことに対して嫌悪感を抱くようにさえなっているはずで、物欲を発生させないシステムが自分の脳内に構築される。社会から突き付けられる無限の広告による「この商品を買えばもっと幸せになれる」という虚構にまみれた悪魔のささやきから解放され、自由になれる。
冒頭にも触れたが、ここまでくると自分の可処分所得と可処分時間が目に見えて増えていることが実感できると思う。物欲がなくなることによって可処分所得が増えることはイメージがわくと思うが、実際には可処分時間も増える。理由としては、判断の時間が減ること、掃除の時間が減ること、働く時間を減らす選択が取れることが挙げられる。所有物を最小限まで絞ることによって、自分の行動を判断する時間が大幅に減る。代表的なところで言うと、今日着る服に迷いがなくなる。スティーブ・ジョブズが1日の判断の回数を少しでも削るために毎日グレーのタートルネックにデニムで過ごしていたエピソードはあまりにも有名である。ミニマリストの中には、毎日同じ献立の食事をとるという方もちらほらいる。食事を統一することによってキッチン用品を必要最小限に絞ることができること、毎日同じ内容の食事なのでまとめ買いや作り置きができること、毎回同じ調理をするので習熟して調理の時間が短くなること等のメリットがある。これもミニマリズムによって判断の時間が減る好例だ。
またミニマリストとして生活をしていると物理的にモノが少ないので掃除の時間が減る。部屋のほとんどの床が見えている状態なので、クイックルワイパーだけで終わらせようと思えばできるし、極論ルンバを買ってしまうのもいい。中にはルンバを買うためにわざと足つきの家具しか買わない人もいる。ルンバ中心の生活というわけだ。
そして何よりお金に余裕が生まれるので無駄に残業をしなくてもよいというオプションが取れるようになる。世の中には生活残業という言葉があって、特に仕事はなくとも無駄に残業をして稼がないと生活が回らない人々が存在する。ミニマリズムを実践して生活費を抑えることで生活残業する必要がなくなりアフター5の時間をより多くとれるメリットがある。もちろんお金がもっと欲しいからある程度残業するんだ!という人はそれでもいいと思うが、別に無駄に働かなくても生きてはいける、という安心感があるのとないのとでは精神状態に大きな差が生まれる。
以上のような理由から、ミニマリストになると可処分所得と可処分時間が増える。あとは読者の皆さんがそれら資源をどの領域に使うか選択し、集中させるかという問題だけである。冒頭に触れたとおり、筆者は筋トレするのが好きなので、富裕層向けのパーソナルトレーニングに通って一流のトレーニングを体験したり、週5回を目安に1人で筋トレする時間を取ったりしている。趣味がゴルフでも料理でも読書でもゲームでも映画でも旅行でも、バイクでもクルマでもカメラでもキャンプでも推し活でも、ミニマリズムの実践によって新たに生まれた資源はあなたの人生の楽しみを強力に後押ししてくれる。

3.ミニマリズムを継続させるマインドセット

これまでの内容を踏まえれば、所有物を最小限まで減らし、資源配分の選択と集中まで行うことは可能なはずだ。本章ではミニマリストとしての生活を継続するためのマインドセットを5つ紹介する。これらを知っているのと知っていないのとでは、今後無駄なモノを捨てる意思決定の質の高い低い、モノが増えて生活が元に戻る可能性等に雲泥の差が出る。一読の上心に留めておくことが推奨される。

Theory.1 所有はコストである理論

最初に紹介しておきたいのは、所有はコストである理論だ。モノは持つだけで毎月コストがかかっていますよ、ということを言いたい。主に一人暮らしをしている人に向けた内容ではあるが、例えばあなたが家賃100,000円、広さ10帖の物件に住んでいるとする。すると1帖あたり10,000円(風呂トイレ等は一旦考えない)が毎月かかっているので、この部屋の1帖分のスペースを使用して家具を設置した場合、その家具を保有するために毎月10,000円が消費されていることになる。その家具を持っていなければ、家賃90,000円、広さ9帖の部屋に住んでも生活水準は変わらないのだから、持っていることによって月10,000円の機会損失(家賃90,000円、広さ9帖の部屋に住む機会を喪失している。)が生まれている。家具等の大きな買い物をする際は、所有はコストである理論を常に念頭に置いておくことをお勧めする。モノは増えれば増えるほど、より安い物件に住むことができる機会を喪失することにつながるのだ。

Theory.2 壊れても買い直すか?理論

次に紹介するのは、壊れても買い直すか?理論だ。これは主に捨てるのに迷ってしまった際に使える意思決定の基準となる理論だ。先に述べたように基本的には迷ったら捨てることを筆者は推奨しているが、この意思決定をできる人はやや上級者であるともおもうので、捨てる捨てないの意思決定をする際の一助として紹介するものだ。モノを捨てるかどうか迷ったとき「これが壊れたり破損したりして使用できなくなった場合に、もう一度同じ値段で買い直すだろうか?」と自分に問いかけるのだ。例えば5,000円で買ったTシャツを捨てるかどうか迷った際に「このTシャツが破れてしまったら再度5,000円を出して買い直すか?」と自分に問いかける。Yesなら残し、Noなら捨てる。これだけだ。迷ったら捨てるをドラスティックに実行できない人が、もう一段階マイルドな意思決定をする際の助けになる判断基準だろう。

Theory.3 20:80理論

次に紹介するのは20:80理論だ。よくパレートの法則とも呼ばれている。イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートが発見して提唱した理論のことで、2割の要素が8割の事象を生み出しているという考えとして認識されている。具体例としては下記の通り。

  • 全体の2割の顧客が全体の8割の売上を構成している

  • 全体の2割の従業員が全体の8割の契約を締結している

  • 不具合を起こす部品の80%は全体の20%の部品に収れんしている

パレートの法則はビジネスやそれ以外の様々な領域で成り立つことが知られている。これをミニマリズムの中で翻訳すると、日常生活の80%は所有物全体のうち20%だけを使用して送られている、となる。

となると、所有物のうち使用していない80%は深く考えずに捨ててしまっても大きな問題は発生しない。仮にまた必要になれば買い直せばよいし、そもそもまた必要になる可能性もかなり低い。ちなみに所有物のうち使用している20%には以下のようなものがあてはまる。

  • スマホ

  • 仕事着

  • 普段よく着ている衣類

  • 寝具

  • 家電(エアコン・テレビ・炊飯器・冷蔵庫・電子レンジ)

あなたが所有しているモノのうち、使用している方の20%はいったい何だろう?それさえあぶりだすことができれば、それ以外はもしかすると一旦捨ててしまっても大きな問題はないのかもしれない。

Theory.4 買わなければ100%OFF理論

現代社会は大広告時代だ。電車に乗ればあちこちに広告が貼られていて、街に出れば広告が目に入らない視界を探すのが難しいほどである。特に都内に住んでいる人だと、1日に視界に入ってくる広告の数は数百にも上るといわれている。それら広告が私たちに語り掛けてくるメッセージは共有している。それは「お得なキャンペーンをやっているのでこの商品を買ってみませんか?」である。
しかし忘れてはならない。幾千の広告が訴えかけてくる”お得なキャンペーン”よりももっと、確実にお得な大出血覚悟のキャンペーンを私たちは選び取ることができる。それは商品を買わないことだ。買わなければ常に100%OFFなのだ。世の中では「ただより高いものはない」という言葉が謎に出回っているがそれは間違っている。ただより安いものはない。当たり前だ。

Theory.5 資源を増やすための消費理論

あなたが仮にミニマリストになっても、率先して購入するべきものがある。それはあなたの可処分所得と可処分時間を増やす消費だ。可処分所得を増やす消費とは例えば自己研鑽のためにお金を使うこと等が挙げられる。そのほかにも利回りの良い金融商品(自分で知識を学ぶことは必須だが)を購入することも可処分所得を増やす消費(要は投資)に含まれる。可処分時間を増やす消費の代表例はドラム式乾燥機付き洗濯機を購入することだろう。洗濯の歴史は川の水を使用して洗濯板で衣類をゴシゴシこすって洗っていたことに端を発している。歴史は流れ人類は全自動縦型洗濯機を発明した。縦型洗濯機が発明され、それが一般家庭に普及したときに生きていた当時の人々が、いまだに洗濯板で洗濯をしている人々を見るとどのような感想を持つだろうか。ドラム式乾燥機付き洗濯機を長年使用している人々は、いまだに縦型洗濯機を使用している人にもそれと同様の感想を持っている。それくらいドラム式乾燥機付き洗濯機と縦型洗濯機の快適さには格差がある。まだドラム式を導入していない人がいれば、今アマゾンで買おう。今は安い時期じゃないから、と購入を後ろ倒ししているといつまでたっても購入に至らない。

4.おわりに

本記事ではこれまで普通に日常を送っていた(それが悪いというわけではない)方々がミニマリズムを習得する方法、そしてミニマリストとして生活し続けるために必要な手順、マインドセットについて解説した。気づけば10,000字越えの大作になってしまった。ありがたいことに筆者の周りでもモノを捨て始めたとか、ミニマリストになってみたいとか言ってくれる人がちらほら出始めた。ミニマリズムを否定したり、私には無理だとか言ったりする人は、常にミニマリストとしての生活をしたことがない人だ。筆者はマキシマリストとしての生活もミニマリストとしての生活も両方経験があるうえで意見を客観的に述べられるのだが、明らかにミニマリストとしての生活の方が楽で生きやすい。現代社会でマキシマリストとして生きるにはあまりにも資源が足らなすぎる。ミニマリストはあらゆる欲望をやせ我慢し、つつましやかな生活を無理やり送っていると思われがちだが本当はその逆だ。モノを減らすことを楽しんでいて、捨てることを、持たないことを楽しんでいる。それによって発生した余剰資源は自分が本当に楽しみたい領域に注ぐことによって、さらに人生の満足度を高めている。そういう生き方だ。少しでもミニマリズムに興味を持った人、ミニマリスト生活やってみたいと思った人は今視界に入ったゴミをひとつ捨てるところから、着古した洋服を1着捨てるところから、引き出しに大量に眠っているインクのなくなったボールペンを1本捨てるところから始めてみてほしい。ひいてはそれが、ゴミを捨て、過去1年間使用しなかったモノを捨て、迷ったら捨てるための行動を生み出し、加速度的にミニマリストに近づくための第一歩となり得るのだから。


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