僕とそいつ #1 文学の授業より

 時間が空きましたが、第2回目投稿です。創作意欲がいまいち湧かないので過去作連投になりますが、読んでいただけたらと思います。今回からは何度かに分けて過去作の小説を連載します。

 今回の投稿は文学の授業で書いた短編小説「僕とそいつ」です。ちょうどこのまま音楽を続けるのか、別の道に進むのか葛藤して吹っ切れないもやもやが常にあった時期に書いたからか、単にそういう時期というのも手伝ってか内容はとても暗いです。あらためてざっと読んでみるとただの暗い下手な小説でしかないですが、最後まで書き上げた最初で最後のの小説です……。

僕とそいつ

 気が付いたら草の上に寝ころんでいた。
立ち上がってあたりを見渡してみたら、ここが学校の裏の芝生だとわかった。



なんでこんなところにいるんだろう。



僕は急いで教室に戻ろうとして立ち上がった。

「……?」



今、柵に突っ込んだと思ったんだけど。全然痛くない。気のせいか。



学校の表にまわったら人だかりがあった。

「何があったの?」

聞いても誰も答えてくれやしない。

いつものことだ、と思った瞬間、僕は僕に驚いた。



何で話しかけてんだ?!



人に話しかけたのなんていつぶりだろう。



まぁいい。



僕は人だかりの隙間を見つけて内側に入り込んだ。よくわからないけど、人なんか誰もいないみたいに、さっさと内側に入り込めた。



そこには僕がいた。









帰ってきてドアを開けると、奥の方から小さい子たちの楽しそうな笑い声が聞こえてきた。僕は靴を脱いで靴棚に入れると、急いで自分の部屋へ上がった。



体操着をベッドに放り投げると、勉強机の椅子を引いて机の上のパンダに目をやった。まだ両親が優しかったころ、動物園に行ったときに買ったものだ。その時からパンダが大好きで、勉強する前にいつも見てしまう。



かばんから、転校してきたばかりの学校の教科書を床にぶちまけた。その中から数学の教科書だけを拾う。他の教科なんて嫌いだ。義務教育なんて、なんでそんなにくだらない決まりがあるのか理解できない。



やりたいやつがやればいいだろ。



早くも手になじんできた教科書を大切にめくっていく。

次の瞬間、僕は目を疑った。



まだ転校してきて一週間もたたないのになんで……。



やり場のない戸惑いにとらわれた僕の目の前には、赤や黒の乱雑な文字が教科書のページいっぱいに書き殴られていた。







目を開けるとパンダがいた。

勢いよく起き上がったら、嫌というほど思いっきり天井に頭をぶつけた。



ってえなぁ。だいたいここは天井が低すぎるんだよ。しかもパンダなんているわけない。



僕は白と黒の天井を睨みつけて、二段ベッドから飛び降りた。机の上には昨日の教科書が開いたままだった。



昨日、あれからどうしたのか記憶がない。いつものことなのに、一体今さら何にショックを受けたというんだろう。

 

何気なく時計を見たら、七時五十分だった。僕は仕方なしに、ぶちまけた教科書をかばんに放り込んで制服を着ると、急いで下に降りた。



「おはよう! 遅かったのね。早くご飯食べちゃって!」



言われるままに食卓に着いた。名前も知らない施設のおばさんは、それだけ言うと小さい女の子に引っ張られて、部屋を出ていった。



周りには十人くらい、黙ってパンを食っている奴らがいた。もの珍しそうに、話しかけたそうな顔で見てくる奴もいたが、こっちはかかわりたくない。



「お兄ちゃん! お兄ちゃんでしょ? 新しくお山の上の施設から引っ越してきたの」



十歳くらいの男の子が話しかけてきた。まったくただでさえ最悪なのに。話しかけてくるなよ。



「お兄ちゃんは、どうしてこんなところにいるの?」



はぁ? まじでなんなんだよ、こいつ。



「まぁいいけど。お兄ちゃんもきっと喋りたくないんでしょ? あのね、ボクはね、パパとママが交通事故で死んじゃったの。でも、誰もボクと一緒に住める人がいなくて、ここに入れられちゃったの」



「……」



「あっ、やばい! 学校遅れちゃうよ。ボク歩くの遅いから先行くね」



これが僕とそいつとの出会いだった。

つづく

読んでくださってありがとうございます^^*


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