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過疎自治体ファンクラブ(自治体PR・実態調査中)

そもそも過疎地とは

 「過疎地」と呼ばれる地域が存在する。法律上、明確な定義があるが、おそらく詳細に理解している人は余りいないだろう。むしろ一般用語として使われる過疎と混同しているケースが多いのではないだろうか。

 「過疎」とは一般に、人や建物など が、度を越して少なくなっていること、過疎地とは、寂しい状態の地域を想像するだろう。過疎自治体、イコール、寂しい地域というイメージで考えてしまう人が多いと思う。

法律による過疎対策は、これまで、昭和45~54年度が「過疎地域対策緊急措置法」、昭和55~平成元年度が「過疎地域振興特別措置法」、平成2~11年度が「過疎地域活性化特別措置法」、平成12年度から制定された「過疎地域自立促進特別措置法」は、平成22年、平成24年、平成26年及び平成29年にそれぞれ「過疎地域自立促進特別措置法の一部を改正する法律」として制定され、令和2年度まで過疎対策が取り組まれて来ました。
 令和3年度から「過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法」が令和13年3月31日限りの時限立法として制定され、引き続き過疎対策が実施されています。             総務省「過疎対策の概要」より

 この法律によって、過疎自治体の定義は定められているが、ここで見るように法律自体がどんどん改廃されて行くので、若干分かり難いだろう。
 最新の法規である「過疎地域持続的発展の支援に関する特別措置法」では、過疎自治体とは「人口の著しい減少に伴って地域社会における活力が低下し、生産機能及び生活環境の整備等が他の地域に比較して低位にある地域」と規定されている。しかし、「著しい」とか「活力が低下」とか、これもかなり曖昧な定義であり、どうしても一般的な「過疎」のイメージで捉えられてしまいがちである。
 そのため、具体的に、特定の期間における「人口要件」と「財政力要件」が定められている。総務省の資料では、以下のように示されている。ただ、こうした国の人口関係データでは、労働力人口を15歳から65歳までとしており、ここでも高齢者は65歳以上、若年者は15歳から29歳と、その基準を踏襲している。つい先日まで人生100年時代とか喧伝していたが、そしてその年齢に近づいて来た自分のことで言えば、別に高齢者になったという気が全くしない。別に若ぶっているとかそういうことではなく、そんなに人っていきなり老いるものか、若干疑問なだけである。

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 過疎地とは、こうした要件に該当する市町村を指すが、実は過疎指定を受けることで、自治体自体は様々な特別措置の恩恵を受けることにもなる。要は過疎自治体に対しては、国から支援が行われるわけであり、確かに高齢化や人口減少、財政面の課題を抱えた地域には、非常にありがたいことでもあるように思う。実際、税金を納める側としても、無駄な箱物やイベントごとに費やすよりは、遥かに納得のいく使われ方だと思う。
 偏に、「過疎」という言葉が良くないのだろう。

 つまり「過疎」とは、地域の一つの状態であり、決して否定的な意味の用語ではないし、本稿でもそれ以上の意味で使うものではない。

過疎地域のインパクト

 過疎の条件やイメージ云々よりも重要なのは、こうした過疎地域の存在意義である。2021年現在での日本の全基礎自治体の数と、過疎自治体の数を地域ごとに整理してみたのが、以下の表である。現在、基礎自治体(要は市町村)は、この国には1,718ある。うち、過疎指定の自治体は650、37.8%、四割弱が過疎地ということになる。

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 尚、基礎データは2015,2020年の国勢調査によるが、特に過疎地域に関しては、以下のサイトに詳しい。

 実は現行法には、市町村合併の特例として、「一部過疎」と「みなし過疎」が設けられている。一部過疎は、合併前の旧市町村のみを過疎地域とみなす制度で、みなし過疎は、合併後の新市町村が過疎地域の要件を外れていても、人口や面積など一定の要件を満たしていれば新市町村全体を過疎地域とみなす制度である。

 平成27年の国勢調査のデータによれば、これらには該当しない「全部過疎」の地域が、650ほど存在している。そしてそれらの地域に居住している人口総数は、8,305,007人、みなし過疎、一部過疎を含めると、11,312,501人、日本の総人口が、127,094,745人なので、過疎地の住民は8.9%、全部過疎だけだと6.53%でしかない。面積で言えば、日本の国土は377,970.71K㎡、うち過疎地は 227,026.14K㎡であり、割合としては60.1%、全部過疎で言えば、183,079.93K㎡、48.4%の割合である。要するに、物理的に国土の半数以上を占めている地域が過疎地であり、そこには国民の1割も暮らしてはいないということ、確かに人が少ないから過疎なのだということがよくわかる。

 恐らく普段意識することは少ないとは思うが、そもそもこの国は、国土の約75%が森林であり、人が住める地域は少ない。国土交通省は、「標高500m以上の山地及び現況の土地利用が森林、湿地等で、開発しても居住に不向きな土地利用の地域」を非可住地、要するに人間が住めない地域として定めている。それ以外の地域が、「可住地」となる。さらに、内閣府の資料によれば、世界には約1500の活火山があるが、そのほとんどが環太平洋地帯に分布しており、日本には活火山の約1割があるとのことである。森林と火山がこの国の国土の大半を占めているということである。

 可住地面積は約103,500㎢であり、国土面積の中の約27.4%が、人が住める地域ということになる。例えて言えば、北海道、鹿児島県、岐阜県の合計面積くらいが可住地面積ということになる。

 例えば、あるプロジェクトでの知見だが、以下の図は、四国の徳島県をGoogleの航空写真で俯瞰して、鉄道路線を辿ったものである。見てわかる通り、四国山地の合間にある河川の流域に僅かに出来ている平野部に、集落が出来ており、確かに人が住める場所自体、絶対量が少ないのは確かな話である。こういう地勢環境から、この国では都市部と離れた地域では、過疎化していくのが、当然とも言えるだろう。この国は、森林の中に人が居させてもらっているのがその実態なのだ。

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全過疎自治体を列挙してみる

 以下には、その650の過疎自治体を、北から順番に列挙する。本来なら公式Webのリンクを貼るところであろうが、大量のリンク付けがnoteの仕様上可能かどうかわからないし、手間の割には、余り価値のある作業でもないだろう。

赤井川村 厚沢部町 厚真町 安平町 今金町 岩内町 浦河町 江差町 えりも町 奥尻町 長万部町 小樽市 乙部町 上ノ国町 神恵内村 木古内町 喜茂別町 共和町 黒松内町 様似町 島牧村 積丹町 白老町 知内町 新ひだか町 寿都町 せたな町 壮瞥町 洞爺湖町 豊浦町 新冠町 仁木町 ニセコ町 日高町 平取町 福島町 古平町 真狩村 松前町 むかわ町 森町 八雲町 余市町 蘭越町 留寿都村 愛別町 赤平市 芦別市 歌志内市 浦臼町 雨竜町 枝幸町 遠別町 音威子府村 小平町 上川町 上砂川町 上富良野町 栗山町 剣淵町 猿払村 士別市 占冠村 下川町 初山別村 新十津川町 砂川市 鷹栖町 秩父別町 月形町 天塩町 当麻町 苫前町 豊富町 奈井江町 中川町 中頓別町 長沼町 中富良野町 名寄市 沼田町 羽幌町 浜頓別町 美瑛町 比布町 美唄市 美深町 深川市 北竜町 幌加内町 幌延町 増毛町 三笠市 南富良野町 妹背牛町 夕張市 由仁町 利尻町 利尻富士町 留萌市 礼文町 稚内市 和寒町 足寄町 厚岸町 池田町 浦幌町 遠軽町 雄武町 大空町 置戸町 興部町 上士幌町 清里町 訓子府町 小清水町 更別村 佐呂間町 鹿追町 標茶町 標津町 清水町 斜里町 白糠町 新得町 大樹町 滝上町 津別町 鶴居村 弟子屈町 豊頃町 西興部村 根室市 浜中町 美幌町 広尾町 本別町 紋別市 湧別町 羅臼町 陸別町 鰺ケ沢町 板柳町 今別町 大間町 大鰐町 風間浦村 五戸町 佐井村 三戸町 七戸町 新郷村 外ヶ浜町 田子町 つがる市 中泊町 南部町 西目屋村 野辺地町 平内町 深浦町 横浜町 蓬田村 一戸町 岩泉町 岩手町 大槌町 大船渡市 釜石市 軽米町 葛巻町 九戸村 住田町 田野畑村 遠野市 西和賀町 二戸市 野田村 八幡平市 洋野町 普代村 宮古市 山田町 陸前高田市 加美町 栗原市 気仙沼市 七ケ宿町 丸森町 南三陸町 山元町 井川町 羽後町 男鹿市 鹿角市 上小阿仁村 北秋田市 小坂町 五城目町 仙北市 大仙市 にかほ市 能代市 八郎潟町 八峰町 東成瀬村 藤里町 美郷町 三種町 湯沢市 横手市 朝日町 飯豊町 大石田町 大江町 大蔵村 小国町 尾花沢市 金山町 川西町 鮭川村 白鷹町 庄内町 戸沢村 西川町 舟形町 真室川町 村山市 最上町 遊佐町 会津美里町 飯舘村 石川町 猪苗代町 小野町 葛尾村 金山町 川内村 川俣町 北塩原村 鮫川村 下郷町 昭和村 只見町 田村市 浪江町 西会津町 塙町 磐梯町 檜枝岐村 平田村 古殿町 三島町 南会津町 柳津町 矢祭町 大子町 利根町 塩谷町 那珂川町 茂木町 片品村 神流町 下仁田町 中之条町 長野原町 南牧村 東吾妻町 みなかみ町 小鹿野町 東秩父村 大多喜町 勝浦市 鋸南町 長南町 東庄町 南房総市 青ケ島村 大島町 奥多摩町 新島村 八丈町 檜原村 三宅村 真鶴町 阿賀町 粟島浦村 出雲崎町 糸魚川市 魚沼市 佐渡市 関川村 津南町 十日町市 村上市 朝日町 氷見市 南砺市 穴水町 珠洲市 能登町 羽咋市 宝達志水町 輪島市 池田町 大野市 南越前町 市川三郷町 小菅村 丹波山村 道志村 南部町 早川町 身延町 上松町 阿南町 飯山市 生坂村 売木村 王滝村 大桑村 大鹿村 大町市 小川村 小谷村 麻績村 木島平村 木曽町 木祖村 北相木村 小海町 栄村 信濃町 筑北村 天龍村 中川村 長和町 南木曽町 根羽村 野沢温泉村 平谷村 泰阜村 山ノ内町 揖斐川町 下呂市 白川町 白川村 関ケ原町 東白川村 飛騨市 七宗町 八百津町 伊豆市 河津町 川根本町 下田市 西伊豆町 松崎町 南伊豆町 設楽町 東栄町 豊根村 大台町 尾鷲市 紀北町 熊野市 大紀町 鳥羽市 南伊勢町 伊根町 笠置町 京丹後市 京丹波町 南山城村 宮津市 与謝野町 和束町 千早赤阪村 岬町 淡路市 神河町 香美町 佐用町 宍粟市 新温泉町 養父市 明日香村 宇陀市 上北山村 川上村 黒滝村 五條市 御所市 下市町 下北山村 印南町 かつらぎ町 北山村 紀美野町 串本町 九度山町 高野町 古座川町 新宮市 すさみ町 太地町 那智勝浦町 日高川町 湯浅町 由良町 岩美町 江府町 大山町 智頭町 日南町 日野町 三朝町 若桜町 海士町 飯南町 雲南市 大田市 邑南町 隠岐の島町 奥出雲町 川本町 江津市 知夫村 津和野町 西ノ島町 益田市 美郷町 吉賀町 安芸太田町 安芸高田市 江田島市 大崎上島町 北広島町 庄原市 神石高原町 世羅町 府中市 三次市 阿武町 上関町 周防大島町 長門市 萩市 美祢市 鏡野町 吉備中央町 久米南町 新庄村 高梁市 奈義町 新見市 西粟倉村 備前市 真庭市 美咲町 美作市 矢掛町 海陽町 勝浦町 上勝町 神山町 佐那河内村 つるぎ町 那賀町 美波町 美馬市 三好市 牟岐町 琴平町 小豆島町 土庄町 直島町 東かがわ市 まんのう町 愛南町 内子町 宇和島市 大洲市 上島町 鬼北町 久万高原町 西予市 松野町 八幡浜市 安芸市 馬路村 大川村 大月町 大豊町 越知町 香美市 北川村 黒潮町 四万十町 須崎市 田野町 津野町 東洋町 土佐清水市 土佐町 中土佐町 奈半利町 仁淀川町 三原村 室戸市 本山町 安田町 檮原町 赤村 芦屋町 大任町 嘉麻市 川崎町 香春町 鞍手町 上毛町 小竹町 添田町 田川市 築上町 東峰村 みやま市 福智町 八女市 大町町 白石町 江北町 多久市 太良町 壱岐市 雲仙市 小値賀町 五島市 西海市 新上五島町 対馬市 平戸市 松浦市 南島原市 あさぎり町 芦北町 天草市 五木村 産山村 小国町 上天草市 球磨村 甲佐町 相良村 高森町 多良木町 津奈木町 和水町 南関町 美里町 水上村 水俣市 南小国町 山江村 山都町 湯前町 苓北町 臼杵市 玖珠町 国東市 九重町 佐伯市 竹田市 津久見市 日田市 姫島村 豊後大野市 豊後高田市 えびの市 串間市 五ヶ瀬町 椎葉村 高千穂町 高原町 都農町 西米良村 日南市 日之影町 美郷町 諸塚村 阿久根市 天城町 奄美市 伊佐市 伊仙町 いちき串木野市 指宿市 宇検村 大崎町 喜界町 肝付町 錦江町 さつま町 志布志市 瀬戸内町 曽於市 龍郷町 垂水市 知名町 徳之島町 十島村 長島町 中種子町 西之表市 東串良町 枕崎市 三島村 南大隅町 南九州市 南さつま市 南種子町 屋久島町 大和村 湧水町 与論町 和泊町 粟国村 伊江村 伊是名村 伊平屋村 大宜味村 国頭村 久米島町 座間味村 多良間村 渡嘉敷村 渡名喜村 東村 南大東村 本部町 与那国町

 大変な数であるが、果たしてこの中のいくつを知っているだろうか。行ったことがあるのはいくつで、詳しく知っているのはいくつで、と考えてみるのだが、大半の自治体を全く知らないのではないだろうか。よしんば知っている地域があったとしても、例えば事件があったとか、災害で名前が出て来ただの、どちらかと言えば、ネガティブな側面でのことが多いだろう。
 公式WebやPR映像、公式チャンネルなどからその地域を知るといった行動は、殆ど無いように思う。実際に足を運ぶとか、いわゆる関係人口として関わるほどの地縁を、いくつの地域に持てるのだろうか。結局、都市部で暮らしている人間は、たとえ地方出身者であろうとも、殆どの過疎地を知らないのがその実態なのだ。

 例えば、筆者にも全く地縁の無い場所なのだが、以下はある過疎地域のPR映像である。大野市、あえてどこの広域自治体かは述べないが、恐らく殆ど知られていないだろう。少し毛色が変わったPR映像で、外に向けたPRではなく、特に高校生を想定した、同地の出身者のUターンを訴求するものである。移住を誘致する自治体は多く、それ向けの映像も多い。しかし端的に言って、どこの地域にも豊かな自然と四季折々の風景や食べ物があり、人情に篤い魅力的な人々がいて、この国の地方は、どこも素晴らしい場所なのである。
 にも拘らず、若者は進学や就職のために地域を出て都市圏に移動して行く。その層に向けたPRであり、日本の地域そのものに差別化要因が殆ど無い状態においては、出身者という地縁が最も強固な繋がりなのはよくわかる。そしてそこをターゲットにしたPR戦略は、今の地方が抱えている状況を見る限り、理には適っている。映像も、余所者に向けたものではないのだろう。だから2019年4月の公開から、視聴回数が4,862 回と、余り多く無いのもわからないではない。

 ここでは、大野市のこの戦略を云々したいわけではなく、この映像の中に垣間見れる、大野市の風景や人々の佇まいが、それはそれは魅力的に見えるのである。この町に生まれ育った人を嫉妬するほど、素敵な町に見える。

 よくある地域PRのように、都市部や東京を貶すのではなく、また祭りなどハレの風景にフォーカスを当てるのでもなく、地域に暮らす人々の日常に、現地の高校生たちの活動と共に入り込んで行く。どちらかと言えば、淡々とした映像である。
 出身地なら、祭りなどは長い日常のごく一瞬でしかないことはわかっているだろうし、そのためだけに移住をするなどという行動もあり得ない。その町の何気ない経済活動など、日常こそが訴求すべき何かなのだという事が、とてもよくわかる。なまじ観光客に向けたものではないがゆえに、そこに見える大野市の佇まいが、本当に魅力的に見えるのである。

 もう一つ、東吾妻町という過疎地域がある。こちらもどの都道府県かはあえて述べないが、実は難読地名と言えるかもしれない。行政区の一つである「町」ですら、「まち」と読む地域と「ちょう」と読む地域がある。「あずまちょう」と読みがちだが「あがつままち」と読む。同町の公式Youtubeチャンネルは、「ろぐびと(記録人)」と題されており、以下の概要に示されているように、PRというよりは、地域のリアルタイムの記録を意図したもののようである。

群馬県吾妻郡東吾妻町をとにかく撮影し続けるYOUTUBEチャンネル『ろぐびと』。週1~2回更新で田舎の風景をお届けします!VLOG感覚でお楽しみください!

 例えばその中の最新のものが、以下の映像である。同地の日常の風景を淡々と撮影したもので、とても惹きこまれる。地域PRではお約束のように取り上げられる祭りが出てくるわけでも無いし、誰かが演技するわけでも無いし、やはり東京と比較するわけでも無い。どの映像も全て2,3分でまとめられており、PRではなく、記録として捉えてもいいのだろう。おそらくこの映像はバズることも無いだろうし、大きな注目を集めることもきっと無いだろう。記録としての価値で言えば、映像だけではなく、付随する音声も重要であるとは思うが、この映像は、10年、20年と時を経て行く間で長く価値を持つだろう。地域PRとしては、まずはこれでいいように思う。

 この2つの地域のPR方針や映像の例は、数ある過疎地域のプロモーションの中でも、極めて興味深い。どの地域でも通用するような価値のある試みではないだろうか。
 他にもいくつもの過疎市町村を見てみたのだが、どこも個性が豊かで、正直言えば、非過疎自治体よりも、面白い地域が多い。こんなにたくさんの魅力的な地域があったということ、そしてそのどこもが、その町の人々にとってかけがえのない場所だということに、都市部で暮らす、地縁を持たない人間は気づくのである。
 そもそも、我々都市部の人間は、過疎自治体を知らなすぎる。偏に「知る機会がない」というのが、本当のところだろう。事件や災害でも無ければ、地方の淡々とした日常を知ろうなんて気持ちは起こらない。

 学生とそういった話をしていて、こういう過疎地域の情報発信、地域PRの実態はどうなっているんだろうという疑問が起こって来た。都市部の人間が地方を知らないのは、そもそも発信側にも理由があるのではないだろうか。
 各自治体は、どういう方針や体制を持って地域PRを行っているのだろう。特に動画コンテンツは、地域PRにおいてどういう位置づけで製作されているのだろう。そして、実際にPR活動を行うにおいて、どういう課題があり、どういう目標を掲げているのだろう。こうした疑問を、可能な限り、これらの自治体にぶつけてみることにした。一口に過疎自治体と言っても、大変な数があり、島しょ部などは固有の考えもあるだろう。
 最近は、公式Webから、メールやWebなどでの問い合わせが可能なシステムを採用している自治体も増えて来た。もちろん、電話しか公開していない自治体も結構な数が存在するが、そのこと自体も自治体の情報発信に纏わる姿勢の表れでもあると言えるだろう。アンケートお断りという自治体もあるし、回答がもらえない自治体も結構ある。それでも現時点で、貴重な意見が集まりつつある。まずは、過疎自治体のPRに関する実態調査を進めている。

 併せて、各自治体の公式Webや映像チャンネル、情報源などを可能な限り集約して行こうと考えている。題して「過疎自治体ファンクラブ」、過疎地そのものではなく、その地で様々な努力をしている自治体を応援しよう。
 はたしてどこまで出来るか、特に過半数が過疎地である北海道のデータを見ると、怯むものもある。しかし個々で情報発信をするのにも限界はあるだろう。折角、「過疎」という括りを持っている地域だから、どこかで情報は集約されるべきだろう。過疎地の課題は、人々が「知らない」ということでもあるはずなのだ。

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