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文科系のための情報科学 授業資料(12)

プログラムはどこにあるのか?

「プログラム内蔵方式」を分かりやすく説明するのは、とても難しいと思っています。特に文科系の学生さんには、いくつかの段階を経て考えてもらいたいです。

まず、
「ワードで作った文書」と「ワードそのもの(プログラム)」の違い
を説明してください。

ワード

自分が見る限り、これに自覚的な学生さんは、コンピュータの操作スキルが高くなると思っています。
繰り返しになりますが、プログラムとは、アルゴリズムを記述したものです。ですから、ワードのプログラムとは、ワードのやること、書式を設定したり画像を貼り付けたり、保存したりなどなどの機能が、書かれているものということになります。
それに対して、ワードの文書とは、ワードのプログラムによって作られたデータのことを指しています。そこには、アルゴリズムは書かれていません。アルゴリズムによって操作された結果が文書です。

例えてみると、プログラムは料理のレシピみたいなもの、で文書はその文書によって作られた料理のようなものと言っていいでしょうか。

レシピPG

では次に、ワードで作った文書について、2つの問いかけをします。

「ワードで作っている文書」はコンピュータのどこにありますか?
「ワードで作った文書」を保存する場合、どこに保存されていますか?

これは、コンピュータの機能に纏わる本質的な問いかけです。
コンピュータは、5つの機能を持っているというのは既に説明しました。
これはその中の「保存」機能に関するものです。

例えばあなたが、ワードで文書を作っている場合を想像してみてください。
その時に、私が傍に行って、あなたのコンピュータのスイッチを消してしまったらどうなりますか?
殆どの人は「消える」と答えると思います。
実際に教室でこの問いかけをした際に、「ムカつく」と答えた学生がいました(実話)。これは笑った。君はムカつくだろうけど、なぜムカつくのかということを聞きたいわけです。

「消える」というのは正しいです。皆さんは、コンピュータについて、直観的に理解していることがいくつもあると思います。スイッチを押したら消えてしまうというのは、殆どの人も直観的に理解しているはずです。
この授業では、それをきちんと説明できるようにしたいわけです。
では、コンピュータのスイッチを消したら、何が何故消えるのでしょうか

まず消えるということは、今は記憶されているということです。ただしその記憶は、コンピュータの動きを止めたら、消えてしまう記憶です。
コンピュータには、動いている時にだけ記憶をする場所があります。
それを「メモリ」と呼んでいます。人間で言えば、短期記憶に当たります。
ワードで作っている文書はメモリに記憶されています。
文書を作る場合、キーボードから入力して情報をコンピュータに伝えます。
伝えられた情報は、メモリに記憶されます。勘違いしている人が多くいますが、画面に記憶されているわけではありません。

入力記憶出力


メモリに記憶されているものが、画面に出力されていると考えてください。つまりコンピュータを操作している場合に、画面で見ているものは、全てメモリにあると思っていいです。ネットを使ってWebページを見ている場合でも、画面で見ているものは、全てメモリに記憶されています。

コンピュータのカタログを見てください。
メモリという項目が、CPUの下に必ずあるはずです。これは、コンピュータが動いている時に使われる記憶場所で、例えて言えば、仕事をしている時に使う机の上みたいなものです。
メモリは、コンピュータが動きを止めた場合には、全てが消えてしまいます。無くなってしまうと仕事が無駄になってしまいますので、電源スイッチを消しても記憶をする場所があります。その場所を、ディスクと呼んでいます。

実は、ディスクのスペルには、discとdiskの2種類あるのに気づいていますか?
オーディオCD、CD-ROM、DVD-ROM、DVD-RAM、DVD-Videoディスクは、discで、フロッピーディスク、コンピュータのハードディスク、外部ハードディスクは、diskです。
discは光学式メディアで、diskは磁気メディアを指します。

ディスクは人間で言えば、長期記憶です。
実はUSBメモリも、メモリとは名前が付いていますが、機能的にはディスク装置です。
カタログには、メモリの下に「ディスク」という項目もあるはずです。これは主に、パソコンの本体の中に組み込まれているハードディスクを示しています。

つまり、コンピュータは、短期記憶のメモリと、長期記憶のディスクの二重化された記憶システムを持っているわけです。
コンピュータを使っている場合、作業は全部メモリの上で行います。これは机の上だと思ってください。作業が終わったら、メモリの上にあるものを全部引き出しやカバンにしまいますよね。これはコンピュータで言えば、保存をすることだと思ってください。

メモリディスク

保存とはメモリの中にあるものを、ディスクにコピーする作業のことを言います。記憶装置の間で、コピーをしているわけです。特にディスクの中に保存されているものを、「ファイル」と呼んでいます。

実はこの「ファイル」の発音で、コンピュータに詳しいかそうでないかがよくわかります。一般用語としては、「フ↑ァイ↓ル」というように、起伏のある発音をしていませんか?
それに比べてコンピュータ用語としては、「ファ→イル」のように、平坦なイントネーションで発音します。個人的な感覚ですが、技術用語は割と平坦に発音するものが多い気がします。メモリ、ディスク等々。

次に仕事を継続する場合、引き出しからやり掛けの仕事を机の上に開いて、続きを始めます。これはコンピュータで言えば、「開く」という操作で、実際にはディスクからメモリへのコピーを行っています。

保存

メモリは机の上、ディスクはカバンや引き出し、そう考えると、メモリが大きい方が快適に仕事が出来るわけです。さらに引き出しやカバンが大きければ、たくさんの仕事を保存することができます。
ただし、後から机を一回り大きくするというのは、やってできないわけではありませんが、至難の業です。カバンや引き出しは、後から買い足せばいいわけですが…。つまりコンピュータを買う場合は、お金の許す限り、メモリを大量に備えたほうが使い勝手がいいということになります。

ここまでは、まぁ直観的に分かることに対して、説明を与えているわけで、それほど難しくは感じないはずです。
では次の問いかけです。

あなたがワードを使っているとしてください。コンピュータの中では、つまりメモリの中では何が起こっていますか?
問いかけがちょっと抽象的ですね。
ワードは、今あなたのパソコンで動いているプログラムです。あなたのコンピュータには、他にExcelもPowerPointも入っていますよね。でも今はワードしか使っていません。
では、動いているプログラムと動いていないプログラムの違いは何ですか?

多分、ここまで来ると、わからない人も多いと思います。

そもそも、 「プログラムが動く」とは、どういうことでしょうか?

結論的に言えば、それを端的に示す概念が「プログラム内蔵方式」ということになります。その解説は、次回に続きます。


トップページの写真は、Tome館長さん回路写真をお借りしました。一瞬、ドローンで見た都市部のように見えました。感謝いたします。





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