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祥月命日 石田柳子

母の三回目の祥月命日の朝
母の遺品の下着を身につける

今年はとくに法事もしないけれど
丁寧に拭ききよめたお仏壇に
白檀の線香をくゆらせよう

   昨日は処暑
  この夏は  ほんなこつ暑かったばってん
   朝晩な  すこうし秋めいてきたよ

伊賀焼の壺のふたをあけ
手許に置いている幾つかの骨片の中から
ひとつ取り出して掌にのせる

瞼の裏にとどめようもなく膨れ上がってくるものがある
去年まではとてもふたをあけられなかった
薄くてもろいそれを眺めつつ
一年という時の経過の効用を見つめている

*2008年10月詩誌「爪」92号石田柳子作品

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