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青葉のトンネル

              野本美登里

山道を登ると   道は細くなり
両側の木が伸びて   重なり合い
緑のトンネルになる
木洩れ日が  キラキラ輝いて
カッコウの声が  遠く近く  聞こえる

青々とした芝生が見え
ゴルフを楽しんでいる人
車は  ぐるぐると  山の裾野をめぐり
緑の葉をわけて  ドライヴ
孫達は楽しそうに  景色を見ている

フッと  目の前の山道に
重い  じゃがいもの包みを背負って
もんぺをはいた若い私の姿が
幻のように  見えた
終戦の年の夏だ
私は  思わず黙りこみ
戦争中のきびしい暮らしを
暗い気持で思い出していた

*2003年10月詩誌「爪」72号野本美登里作品

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