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わたしがとびおりた話。

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あの頃から毎日人の2倍は動いていた。母が居なかったので私が母の代わりだった。女が家事をするのは当たり前だと父に教えられて育った。それが当たり前になっていった。

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朝起きてまず新聞をとる。
それを机の上に置いたら急いで朝ご飯とお弁当を作る。
その間に洗濯機を回しておく。朝ご飯が出来たら弟を起こす。
弟が朝ご飯を食べているあいだに洗濯物を干す。
洗い物をしながら父が起きてくる時間丁度に出せるようにコーヒーを煎れる。友達が迎えに来るのでそこから一緒に登校。
学校では毎日ニコニコして勉強する。
学校が終わったら急いでスーパーで買い物をして家に帰る。
弟のお弁当箱と制服を洗って洗濯物を取り込んで掃除をして晩ご飯の準備。
父の分は帰ってきたら温かい状態で出せるようにしておく。
お風呂の準備をする。帰って来た父のスーツをかけて残った家事をする。

家の事は何から何までしていた。

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それでも父は満足しなかった。寧ろお前は出来ない子だと叱られた。
何で怒られているか毎日分からなかった。
この頃は叱られた時に反抗し始めた時期だった。怒られて納得がいかないと言い返した。さらに怒鳴られた。これが毎日続いた。

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ただ父に認められたかった。弟と同じように接して欲しかった。少しでいい、褒めて欲しかった。

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日が経てば経つほど私の身体と心に傷が増えていった。その傷が原因で何人も離れていった。

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誰かが居るとニコニコして楽しくさせようとする私だったが、それにすら疲れてしまった。


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毎日毎日死にたかった。私みたいな人間がどうして生きているんだろう、生きているだけで迷惑だ、って考えてた。
たった1人の父親から人格を否定され続け、自己肯定感が持てず自己否定感にとらわれていた私からするとこの考えが普通だった。

死にたい私に保健の先生はこう言った。

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死にたいなんて、ゆちゃんおかしいよ。
生きたくても生きられない人もいるんだよ。

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死ぬほどムカついた。わんわん泣いた。
こちらからすると死にたくない先生の方がだいぶおかしい。生きたくても生きられない人の事なんか知らないし関係ない。けどおかしいのは私らしい。

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その日の夜、色々あって意識不明になって救急車で運ばれた。
目が覚めてガッカリした。何で生きているんだろう。

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退院した次の日、私は自宅マンションから飛び降りた。

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1度飛び降りようとした事がある。その時は高い所が怖すぎて飛び降りれなかった。飛び降りた日、友達の家が同じマンションの3階にあって、用事を済ませた後飛び降りた。気が付いたら飛び降りてた。もう限界だった。

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落ちた。痛い。痛すぎるってレベルじゃないくらい痛かった。死ぬほど痛かった。飛び降りている途中で意識がなくなって痛くないなんて大嘘。声を出そうと思っても声が出ない。体は動かない。駐車場に居たおばさんの悲鳴が頭にめちゃくちゃ響いた。雪が真っ赤だった。

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目が覚めたら病院だった。生きていた。
骨が何本も折れた。頭を縫った。手術もした。知らないO型の誰かの血を輸血して貰った。ありがとう知らないO型の誰か。

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毎日めちゃくちゃ身体中痛かった。父は1度も面会に来なかった。

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毎日友達がお見舞いに来てくれた。お見舞いに来る友達全員に泣きながら怒られた。

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私が死のうとして泣いてくれる人が居た。それと同時に死のうとした事を反省した。私が死ねなかったのには何か理由があるんじゃないかとその当時本気で思った。

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時は流れて来月には20歳になる。
死に損なって生きてきたこの19年間今思えばあっというまだった。
当時は地獄で毎日死にたかった。が、今は環境が変わって大分マシになった。

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もうわたしはあの時みたいに殴られる事は無いんだよ。殺されかけることも無いんだよ。飛び降りるのはやめよう。一生寝たきりになるかも。歩けなくなるかも。手が動かなくなるかも。記憶がなくなるかも。

このまま生きてたら、もしかしたら好いてくれる人が現れるかも。そのまま結婚出来るかも。友達が増えるかも。こんな私にも楽しい事があるかも。

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今までの分幸せになれるとかは思ってないけど、もしかしたら幸せになれるかもしれない。

幸せになれるかもしれないその日を夢見てとりあえず今日は生きる事にする。

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