友達
小説です。
詩です。
「最低、迷惑だよ、死ね」 この投稿に、リンクされたニュースサイトは、2019年11月、中国で発生し、世界中で流行した、新型コロナウイルスに感染した男が、自宅待機を要請されていたにも関わらず外出し、入った店の従業員に感染させ、店を休業に追い込み、多大な損害を与えた。店側は、男に対して、損害賠償請求を検討している、と報じていた。 その投稿には、共感のコメントが数十件垂れ下がっていた。 立花君はしぶしぶ起き上がり、咳で喉を掻いた。経験上、喉の痒みを舌で掻けば、あっという間に悪
知らなかったことなんて何もなかった。分かった上で、全てを受け入れていた。 私は十八歳の春にモデルの事務所に所属し、芸能活動を始めた。ファッション誌の撮影モデルや、イベントのコンパニオンなどが、主な活動だった。だいたいこんなものだろうと、想像した通りだった。 はっきり言って、私はかわいい。自分の顔も、スタイルも好きだ。コンプレックスを持たない人なんておそらくいないが、私のコンプレックスは、化粧でちょいちょいと隠せばどうにでもなるレベルのもので、学校中に溢れていた、かわいそ
ライブもないし、イベントもないし、先一週間予定がなかった。アンチにディスられたせいで鬱で、出かける気も起きなかったので、出かけるにしても近所のコンビニか百均か、ぐらいでそれ以外はずっと家にいた。2021年夏の、23歳の一週間だった。 私は一応アイドルだ。かわいい衣装を着て、かわいい、かわいいってオタクから言われて、歌って踊ってたまにTVにも出ているのだから、客観的に見てみてアイドルだ。だけど私ってアイドル? なのだろうかとたまに、いや頻繁に思う。私自身で私をアイドルだって
Rが笑っている WはRについていく 部屋に通された Rは一枚の紙を示した、シフト表だった 五人入っていたところが二人になっている コロナ禍のせいだ Rは笑っていない 低い声で、ゆっくり 「周二日、一日四時間になるよ」 と言った Rは笑い Wの年齢をたずねる 実家の場所をたずねる 将来をたずねる Wは答える 「29歳です」 「千葉です」 「それは、わかりません」 Rは笑う 「それでいいので、入れてください」 とWが言うと Rから笑みが消えた 知らない男に着替えを覗かれた
まぼろしかな おかねがうかんでいるよ いちまんえんさつがさんじゅうまいだよ まぼろしじゃないよ たしかにあれは いちまんえんさつがさんじゅうまいだよ だってさ、ほら かぜにおどっているよ ぼくは へやをでて おいかけたよ えきについて でんしゃにのったよ ますくをして まどのそとをながめたよ しんじゅくえきで こうしゃしたよ しょうてんがいの おみせをあけたよ ゆうがたになって またでんしゃにのったよ きのうも、おとといもおいかけたよ それでぼくはきづいたんだ せい
君の動きは皆の時計だった 時計を失えば 四次元の放浪者 それでもカラダはここにあるから おいてけぼりだ、かわいそうに ココロとカラダは結ばれているから 重みだけがココロにある
もし、あなたの壁に穴が、開いていて、いくらでもあなたを、覗けたとしたら、その穴をあなたは塞ぐ 変態でもない限り 外には、穴、穴、穴 いたるところに穴 穴は、浮いているように思えるけれど、実は顔に開いていて、顔は首に支えられていて、胴に、腰に、足に支えられている 足は、腰を軸に回転し、穴を、あなたの前に運んだり、周りを回させたり、見上げさせたり、見下させたりする 遠くに穴、近くの穴、木の下に穴、ベンチに穴、車に穴、窓に穴 そのどれか一つでも、勝手に塞げば罰があるから、塞ぎたくな
積み重ねられたダンボールの隙間を縫って這っているうちに、身体中埃まみれになってしまった。この部屋の唯一の照明である小さな丸い窓から外を見ると、地平線の向こうまで海が続いていた。こんなところに来るつもりはなかったし、どうしてここにいるのか分からない。俺の身体は、俺の千倍大きいものの歩幅に合わせて、ゆったり揺れている。体重に対し地面が柔らか過ぎて、一歩ごと、深く沈み込み、百万の命を断つ巨人の足。それで俺の不安は限界に達した。 世界から陸が消えてしまったのだ。ヨーロッパも、中国