見出し画像

#37 障がいを受容する4

昨日は、長男の手術のこと、赤ちゃん連れの通院の工夫について書きました。
今日は、長男3歳以降についてです。
これまでは口唇口蓋裂のためのケアだったところから、知的障がいだと分かったときについてです。

一時保育で、初めて集団の中に入る

手術後は、フォローのための定期的な通院がありましたが、親子で自主保育に通ったり、時々、通訳の仕事に長男を同行したりして過ごしていたことを覚えています。その後、東日本大震災を経て、都心のど真ん中から、郊外に引っ越しました。
初めて長男が集団で過ごしたのは2歳9か月のとき、自然保育をしている保育園でした。そこがとても安心できる園だったのと、私が妊娠後期に入って、1日中長男を見るのが大変になってきたため、それから月に数回、一時保育に預けるようになりました。

保育園からは、ひとつひとつ今日はこんなことがあったというエピソードを丁寧に共有してもらっていました。その中で、同じくらいの年齢の周りの子とは、遊び方や発語など、発達が違うと分かっていきました。

わが子に障がいがあると言われて

手伝っていた通訳の仕事を、自治体に申請することにして(保育園は、仕事を含めた保育要件を満たさないと入れない)、長男は3歳になった4月から、無事に保育園に入園することができました。
一時保育から見ていいただいていた主任の先生から、ちょっと気になるから、3歳児健診でしっかり診てもらった方がいい、と言われました。
保育園の障がい児枠というのがあって、そちらに該当できることになると、以下のようなメリットがあると説明されました。

・加配(先生を一人増やすことができる→手厚くなる)
・長男についての記録を専用でつけることになるので、発達や支援方法を細かく見ていくことができる

告げられたときの私の気持ちと、園の対応

最初に障がいがあるかも(3歳児検診のときに診てもらった方がいい)と言われたときは、にわかに信じがたく、「え、この人は何を言っているんだろう」という気持ちでした。
障がいがあったところで、人として劣っていることになるわけではない。そう頭で知ってはいても、「障がい」というラベルを付けられることに、モヤモヤしていました。障がいの疑いがあると告げられたとき、私はその保育士さんに、びっくりした反応を返していたと思います。彼女は、丁寧に言葉を選んで接してくれました。
・障がい児枠の申請が通ったときの、長男にとってのメリット(上記)について。
・長男の集団生活での困難さ(障がいの具体的なところ)は、普段からエピソードを通して説明してくれていました。どんなことに困っていて、それをどうフォローしているのか。お友達がどう助けてくれたのか。この件に限らず、コミュニケーションを積極的にとって、お互いに信頼できるようにしてくれていたと思います。
・障がい児保育の枠に申請するかどうか、受診をするかどうかを決めるのは保護者であること。無理強いはしないということ。
・他の障がい児の保護者に話しかけてみるといいかもしれないこと

このとき、年少クラス19名に対して、長男を入れて障がい児3名がいました。長男は受診を勧められて、入園後に障がい児申請したことになります。

3歳児検診を受診して

障がい児保育を申請することでメリットがあるなら、と、3歳児検診で、専門の先生に紹介状を書いてもらいました(多摩療育園というところです)。予約を取って受診し、発達検査(田中ビネー)をした上で、そこでついた診断名は「広範性発達障害」「精神発達遅滞」「多発奇形(口唇顎裂を含め、足指が短かったりもしたので)」というものでした。

いざ、診断名がついたのは初めてで、その文字が意味するところは、それがどんなインパクトを与えるものなのか詳しく分からなかったですが、「普通」であることを諦めるような感覚があったのは覚えています。

それまでに、体調不良から立ち直り学んだことや、過去の苦い経験から、「すべてのことには意味がある」ということを実感していたこと。
#34で書いたような、「障がいにも意味がある」「すべての命は尊い」と知っていたことから、モヤモヤした気持ちを持ちながらも、そのモヤモヤに抗わずに、仕方ない、と、気持ちの一時保留をしていたのだと、今振り返ると思います。

障がい受容の過程

死の受容の過程

死と死期の研究をしていたエリザベス・キューブラー・ロスによると、予期された死が訪れる前に深い悲しみを感じ、多くの人は一般的に次の5つの感情を、この順番で経験すると言われています。

  • 否認
    「なにかの間違いだ」というような反論をするものの、それが否定しきれない事実である。周囲から距離を取り、孤立することになる。

  • 怒り
    「どうして悪いことをしていない自分がこんなことになるのか」。根底にはやはり「なぜ、自分が」という、死に選ばれたことへの強い反発がある。

  • 取り引き
    信仰心がなくても、神や仏にすがり、死を遅らせてほしいと願う段階。

  • 抑うつ
    死の回避ができないことを悟り、悲観と絶望に打ちひしがれる。頭で理解していた死が、感情的にも理解できるようになる。

  • 受容
    それまで死を拒絶し何とか回避しようとしていたが、生命が死んでいくことは自然なことだという気持ちになる。自分の人生の終わりを静かに見つめることができるようになり、心に平穏が訪れる。

これは、死を受け入れる受容過程ですが、障がいの受容過程についても、段階がありました。

障がいを受容する5段階

1975年にDrotarらが,先天奇形を持つ子どもの誕生に対する正常な親の反応の継起を示す仮説的な図を発表し,両親の経験する幾つかの情動的反応を一般化した. その情動的反応は,
・第1段階の ショック
・第2段階の否認
・第3段階の悲しみ,怒りおよび不安
・第4段階の適応
・第5段階の再起
である.
(中略)
第1段階の「ショック」は,普通の感情が急に崩れ 落ちるような反応と感覚のことを示す.例えば,よく 泣いたり,どうしようもない気持ちになったり,時には逃げ出したい衝動にかられることなどがこれにあ たる.第2段階の「否認」は,ある衝撃を否定する ことで,大きな打撃を何とか和らげようとする反応」 のことを示す.第3段階の「悲しみ,怒りおよび不 安」は,否認の段階に伴うこともあれば,引き続い て起こることもあるとされる悲しみや怒り,不安の 反応のことを示す.第4段階の「適応」は,不安と 強い情動反応が徐々に薄れていき,育児に自信を覚 えるようになるときの反応と考えられている.第5段階の「再起」は,現実を受け入れ,今起こっている 問題を対処しようとする気持ちになることを示す.
口唇口蓋裂児をもつ母親の受容過程に及ぼす影響 - ‎中新美保子 -

他にも、障がいの受容過程についての研究を見つけたので、紹介しておきます。
発達障害児をもつ親の障害受容過程についての文献的研究
高機能自閉症児の親の障害受容過程と家族支援

共通している、受容の過程と、私の経験

死の受容過程も、障がいの受容過程も、どちらにも共通しているのは、

  • 最初に否認がある

  • 怒り、悲しみを感じる

  • 現実を受け入れる

という順番で、受容が起こっていくことです。

息子の障がいについて、私は、いわば2度告知される経験をしました。一度は、生まれてすぐ、口唇口蓋裂だったとき。
2度目は、保育園入園した3歳のとき、障がいがあると言われたとき。

今振り返ると、どちらについても、上記の過程をたどったなと思います。静かな心で受け入れたいと思っても、ショックを隠すことはできないし、怒りや悲しい気持ちをやり過ごすこともできません。
やり過ごすどころか、感じないように蓋をしてしまうと、結局どこかでその蓋で押さえられた感情が出てきて、あとでその感情を味わうことになります。もしくは、言い換えると、感じることができないくらいショックだと、そのときは感情に蓋をして、日常をやり過ごすしかなくて、感情を感じても大丈夫なくらい生活が落ち着いたら、そのときに感情が噴出してくるのかもしれません。

私は、口唇口蓋裂については、初めての子育てでの新生児育児、通院でてんてこまいだった産後すぐのときは、感情はそっちのけだったと思います。少し落ち着いて通院が大変だったときに怒りを感じ、手術しても直接母乳が飲めなかったときに、悲しみを味わい、時間とともに現実を受け入れていきました。そして、この過程は、段階をすぎたらそれで安泰、というのではなく、何度も行ったり来たりしました。
これは小学校に上がってから、学童期にも続きます。口唇顎裂を手術で治しても、長男は鼻骨がないので、友達やお友達のお母さんから「どうして変な顔なの?」と言われ、その度に「鼻骨がないんだよ。大きくなったら骨を入れるんだよ」と説明しなくてはならず、最初は悲しくなったりしたものでした。だんだん、慣れもあり、息子は息子、そのままで素敵だと受け入れることができるようになり、時間をかけて、次第に顔のことで何を言われても、穏やかな気持ちでいられるようになっていきました。言語化が苦手な長男がどんなふうに感じていたかは直接聞くことはできませんが、私が穏やかでいられるようになるのと、本人の自信はリンクしていたと思います。

そして、顔のことを言われて穏やかでいられるようになっていったのは、知的障がいのことを受け入れていったことともつながっていると思います。

明日は、長男が小学校に上がってからのことを書いてみようと思います。

読んでくださってありがとうございました。

参考になったと思ったら、記事をお友達やSNSでシェアしていただいたり、いいねボタン(ハートのマーク)を押していただけたら励みになります^^

それではまた明日!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?