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柳生語録 第11号 「パーティー」

今回、この語録を書くにあたって、ぼくはぼく自身の尊厳や仲間からの信頼を失うかもしれませんが、筆を止めません。
なぜなのか、それはぼくよりも悪い人間がいるんです。そいつをつるし上げるためです。
 
みなさんにはこの事件を語り継いでもらわなければなりません。
よろしくお願いします。
 
あれは大学のひとつ上の先輩たちの最後の試合でした。勝ったらリーグ残留、負ければ降格といういわゆる入れ替え戦です。大学生活の部活において最も大事な試合と言っても過言ではありません。
 
ぼくはある男から、その試合の前日に開かれるパーティーに誘われていました。神戸付近の学生がクラブに集まって楽しもうというものでした。
 
この催し物に誘ってきた人物が悪の根源のような男です。最近の世界の事件はほぼこいつのせいだと思ってもらって構いません。
別に誘ってくれたことを怒っているわけではありません。日時が良くありませんでした。
 
まぁ、彼が試合のことを知らなければ、そのことを伝えて、ていねいにお断りするんですが、実は彼は同じ部活のチームメイトなんです。大事な試合の前日だということを知った上で誘ってきていました。なんてやつでしょうか。こんなやつがチームメイトだったことをぼくはすごく恥ずかしく思います。
 
まぁ、パーティーには行きました。
 
でも、22時には帰ることを決めていました。試合には影響が出ないようにするためです。
正直言うとパーティーの間も試合のことばかりを考えていて、心底楽しめたとは言えませんでした。
 
気が付いたら終電の時間まで遊んでいました。
 
まあ、でも試合の集合時間には遅れることなくちゃんと着くことができました。
彼は試合のメンバーではないので、気の抜けた間抜け顔で集合していました。
ぼくはありがたいことに試合のメンバーだったので、気合をいれていました。前日にパーティーに行っていたとは誰も気づかないであろうとても凛々しい顔を意識しておりました。
 
試合は負けました。
 
直接の原因がぼくにあったわけではありませんが、団体スポーツなので、ぼくにも敗因がないとは言えません。
 
先輩、同期や後輩が悲しみに暮れている中、とても申し訳ない気持ちになりました。
 
奴はというと、チーム内で一番落ち込んでいるんじゃないかというくらい落ち込んでいました。
 
いやいや、絶対なんも思ってないやん。昨日むちゃくちゃ女の子と楽しそうにしてたやん。
と言ってやりたかったですが、そんなこと言おうものならぼくも行っていたことがばれてしまうので、どうしようもできませんでした。
 
彼は引退する先輩に「4年間お疲れ様でした」とすごく悲しそうな顔で声をかけていました。
 
いやいや、昨日、試合は関係ないからどうでもいいわって言うてたやん。ハリウッド級の演技するやん。
と言ってやりたかったですが、先輩の前、そんなことを言おうものならぼくが昨日、年下の女の子にデレデレしていたことがばれてしまうのでやめました。
 
結局、この事件はばれることなくぼくらは引退しました。
奴がどう思っているかは知りませんが、ぼくはあの日のことを後悔しております。
 
以上、部活大好きだったよというお話でした。

次回 栁生語録 第12号 「もし、あの日に戻れるなら、年下の子を落とせるようにもっと頑張ったのに」

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