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「物理の学び直し」で「ハードルを下げること」の重要性を再認識

※全文を公開している「投げ銭」スタイルのノートです。

※物理の内容にはほぼ触れていません。「学び方」についてのノートです。

熱力学第2法則を勉強していました

ちょっと必要になったため、ここ数日ほど熱力学第2法則について勉強し直していました。カルノーサイクルの重要性と、第2法則とエントロピーの関わりについて、恥ずかしながらようやく納得できたような気がします。

大学生のときに熱力学を習ったときにはチンプンカンプンでした。あれから約十年。高校で物理を教える経験を経て、多少は「物理の学び方」の経験値はたまっています。一冊の教科書を最初から最後まで通読しようと試みて挫折する、なんてあの時と同じ失敗はしません。

学び直しの流れ

以下のような流れで学び直しました。全て大学生のときに買った本です。

(1)とりあえずWEBでさらっと→ EMANの物理学さんの関連ページをザーッと通読。このとき数式の展開はあまり気にせず、つまり「ちゃんとした理解の優先度」は下げ、本文のストーリーを追うことを最優先。もちろんモヤモヤや全然わからないところも出てくるが、まずはその程度で。

(2)とりあえず教科書レベルの本をさらっと→ 『単位が取れる熱力学ノート』(橋本淳一郎)を(1)と同様に。(1)と(2)の共通項から、この分野で議論されていることの大筋が見えてくる。

(3)次に『物理数学の直観的方法』(長沼信一郎)の第9章「エントロピーと熱力学」を読む。ここも初めはサーッと本文を通読するが、その後はノートに式や図を書きながら、疑問点についてもノートで考えながら「ちゃんとした理解の優先度」を上げて読み進めていく。『物理数学の直観的方法』は専門書のように数式をガリガリ使うわけではなくタイトル通り「直観的な理解」に重きを置いているので、専門書を読むための準備にちょうどいい。(リンクしたのは現在売られているブルーバックス版。私が読んでいるのは教科書サイズの第2版です)

(4)その次に、専門的な内容にも触れつつ、物理的背景や物理学者の意図を教えてくれる本として朝永振一郎先生の『物理学とは何だろうか 上』の第II章を読む。新書なので縦書きだが、数式もそこそこ出てくるし「物理学生への注」があるので専門書への接続がしやすい。(リンク先のAmazonでは、この『上』は中古品しかない…『下』は新品があるのに…??)『物理数学の直観的方法』での理解がここで活きてきて、理解が加速する。楽しい。

(5)ここで(1)で読んだEMANの物理学に戻ってくる。そうするとスラスラ理解できる!(今ここまで来ています)

↓ここからはまだです。これからやろうとしていることです。↓

(6)教科書レベルの(2)をちゃんと数式を追いながら読み進める。(5)の段階で流れはつかめているので、手を動かしながら自分に数式をなじませていく作業です。

(7)専門書を読み進める。自宅にある本の中でその標的となっているのは田崎晴明先生の『熱力学 =現代的な視点から』です。大学生のとき憧れと評判の良さから買ったはいいものの全然読めず挫折しました。ここを克服するのが今後の目標です。

ハードルを下げて学ぶ

と、以上のような流れで熱力学第2法則について学び直しました。

理解は気にせずに、専門書をいくつか通読して、議論されているトピックスとストーリーの流れをざっくりつかむ。入門書で理解の下地をつくる。再び専門書にトライ。

物理に限らず、何かを学ぶときには「自分の中にあるハードルを下げる」という行為を意識的に自力で行うことが大事なんだなあと再確認しました。

・「これくらい理解していなくちゃ恥ずかしい」というハードルを下げる ⇒ 理解しきれていないことがあるならいくらでも学び直そう
・「書いてあることを全て理解しなくちゃいけない」というハードルを下げる ⇒ 初めて読むときは数式を飛ばしてもいいんだ
・「ちゃんとした教科書を読まなきゃいけない」というハードルを下げる ⇒ 少しでも理解につながるならWEB上の解説ページだっていいし、薄い入門書でもいいし、本格感ゼロの参考書チックな本でもいいし、高校生向けでも中学生向けでも小学生向けでも猿向けでも犬向けでも猫向けでも……

高校で物理を教えているときに、生徒に「勉強することのハードルを下げる」という話をしたことはありました。生徒に言っていることはそのまま自分にも当てはめられるなあと改めて実感しました。

もちろん当たり前ですよね。「個体差」は置いておくとして、自分に当てはめられなさそうな方法論は他人に提案できませんから。ただ「教える」というのはちょっと特別な作業です。「教える」ために学んでいるときは、単純に自分一人で学んでいるときには考えもしないことに気づいたり、自分だけのための勉強ではとても到達できなさそうな理解へ辿りついたり、ということがあります。今回改めて、自分の学び方を通して、「教える」過程で自分自身も成長してきたのだな、と実感したのでした。

次のノートに続く…

実は「熱力学第2法則の学び直し」をきっかけとして本当に書きたかったのは別の話でした。『物理学とは何だろうか』の中で朝永先生が「すぐれた物理学者の条件」について語っています。そこで「物理と数学の違い」について「なるほど!」と感じたので、次こそ朝永先生の語る物理学者像について書こうと思っています。

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