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「デットファイナンス」の現状と課題 -36億円調達しました-

こんにちは。ファンズの藤田です。この度、36億円の資金調達を実施しました。スタートアップ冬の時代と言われる非常に厳しい状況の中、我々を信じて投資をいただいた株主の皆様には心より感謝申し上げます。お預かりした資金は大切に使わせていただきます。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000158.000023781.html

せっかくの機会なので、Fundsについての現状や今後の展望、今考えていることなどをお伝えしようと思ったんですが、Fundsの話だけしても少し微妙なので、昨今のホットトピックである「デットファイナンス」の話に絡めてお伝えできればと思います。

存在感が増す「デットファイナンス」

皆さんも最近、メディアなどで「デットファイナンス」というワードを目にする機会が増えているのではないでしょうか?

デットファイナンスとは、借入れによる資金調達のことです。株式を発行して資金調達するエクイティファイナンスと比べると、返済義務はあるものの、"株式の希薄化が伴わない"、"経営に口出されにくい"、"相対的に調達コストが安い"などのメリットがあります。

利上げの影響でテック企業の株価が冷え込んでいる中で、エクイティファイナンスでの調達環境が悪化しています。また先行きの見通しが困難な経済環境の中で手元資金を厚くしておきたいというニーズも高まっています。そうしたことを背景に、今、世界的にデットファイナンスへの活用が進んでいるのです。

その波は、国内スタートアップ業界にも波及しており、最近では、エクイティとデットを組み合わせた調達を実施しているスタートアップも増えてきました。最近ではUPSIDERやタイミーなどのデットによる大型調達が話題になりました。

STARTUP DBの調査によると、2022年にデットファイナンスを含むエクイティ以外での資金調達額は前年対比で2倍以上と急拡大しているのがわかります。

デットファイナンスの種類と世界的な潮流

デットファイナンスというとシンプルな銀行借入れをイメージされる方が多いと思いますが、実際は多様な選択肢があります。

例えば、公募債や私募債などに加えて、CB、CP、シンジケートローン、プロジェクトファイナンスなど、目的や企業の規模によって様々です。

プレイヤーも多様化しており、近年では伝統的な商業銀行以外のプレイヤーがファンドを組成し、直接的な融資を行うプライベートデットと呼ばれる手法が欧米で拡大しています。

さらにここ数年、スタートアップを対象としたベンチャーデットも急拡大しています。ベンチャーデットは米国のスタートアップの中では割とメジャーな調達手段で、2022年には約290億ドルまで市場が拡大しています。

USのVenture debt activity

利用用途としては、次回ラウンドまでのランウェイを伸ばすためであったり、エクイティ調達の不足部分を埋め合わせるためなど、様々な使われ方があります。

ベンチャーデットの主な使われ方

スタートアップのバリュエーションは調達時点の売上や利益に対して、マルチプルをかけて算出するケースが多いため、足元で事業が伸長している場合は少しでもラウンドの開始を遅らせたほうがバリュエーションが上がり、調達時の株式希薄化を抑えることができます。

必要金額が集まり切らない場合や積極投資のためにより多くの資金を調達したい場合などに、エクイティと組み合わせてベンチャーデットを活用するケースもあります。

スタートアップ側は株式の希薄化を抑えながら次のラウンドへ進むための事業資金を確保することができ、貸す側は負債に対して新株予約権などを付することで、金利収入に加えてエクイティキッカーによるアップサイドを期待することができます。

よく資金を借入れることをレバレッジ(てこ)と呼びますが、その名の通り、デットファイナンスは効果的に活用することで、手金資金だけで事業運営していくよりも、事業成長を飛躍的に加速させられる可能性があります。米国のスタートアップはエクイティに加えて効果的にデットを活用することで、より高い成長性を手にしているのです。

先日、米国のベンチャーデットを牽引してきたシリコンバレーバンクが経営破綻したというショッキングなニュースが飛び込んできましたが、どちらかというと保有する債券価格が下落したことを受け、信用不安による取り付け騒ぎが生じた結果の破綻であり、「ベンチャーデット」そのものの存在意義やビジネスモデルを覆すものではないと考えています。

国内でも、一部のメガバンクであったり、あおぞら銀行、SDFキャピタル、大和ブルーフィナンシャル、Siiibo、Fivotなどベンチャーデットを提供するプレイヤーが登場し始めています。周囲のスタートアップ経営者の間でも、以前に比べてデットファイナンスに関する話題が増えてきているなという印象です。

上場スタートアップにおけるデットファイナンスの課題

ベンチャーデットは、一般的に未上場企業を対象にしたデットファイナンスを指します。一方で、日本国内においては、上場後も急成長を志向する上場企業(以下、上場スタートアップ)に対するデットファイナンスの環境を整えることも重要だと個人的には考えています。

日本の上場マーケットは欧米に比べて比較的IPOがしやすく、米国ではミドル〜レイターに位置づけられるような規模感の上場企業も多数あります。時価総額300億円以下の企業が全体の約6割を占め、2000社以上もあり、ここにユニークで成長ポテンシャルの大きい企業が多数存在しているのです。

一方で、時価総額300億円以下の上場企業に関しては、流動性が乏しかったり、証券会社のカバレッジからも外れやすいなどの理由から、せっかく上場したにも関わらず、約9割の会社が上場後にエクイティファイナンスを活用できていません。公募社債などは投資適格の格付けが必要であり、こちらも実質的に利用できる企業は大企業に限られます。

上場したのだから、銀行がお金を貸してくれるのではないかと考える方もいるかもしれませんが、トラックレコードのある運転資金の借入れであればまだしも、実績がまだ出ていない新規事業への投資資金、まだ買収先が定まっていない場合のM&A資金など、いわゆる成長資金に関しては、機動的な資金調達が難しいケースがあります。

成長資金を確保するための選択肢が限られていることで、成長投資が先細り、結果、上場後の成長が止まってしまっている企業も少なくありません。これは上場後の死の谷問題とも呼ばれています。

つまり、未上場企業を対象としたベンチャーデットの拡充はもちろんのこと、上場スタートアップに対しても、成長資金確保のための方策を検討していく必要があります。

Fundsの現在地

こうした日本特有の課題に対して、より多様な選択肢を提供すべくFundsは2019年末より上場スタートアップ向けのデット調達プラットフォームとして「Funds」を展開してきました。

累積の募集総額は320億円を超え、現在は毎月20億円ほどの資金を上場スタートアップを中心とした成長企業様にご融資しています。

成長性の高い優良な上場スタートアップに対して、既存金融機関だけでは、満たしきれない成長資金をFundsでご提供させていただくことにより、成長の後押しをさせていただいています。

類型募集額の推移

個人投資家から資金を集めて、上場スタートアップにデットファイナンスするという世界的にみても珍しいモデルで、当初は企業側からも個人投資家側からも理解を得るのがとても難しく、立ち上げ直後はかなり苦戦を強いられました。

しかし、コツコツと地道に実績を積み上げていく中で、徐々に理解が広まり、そこに昨今のデットファイナンス活用の機運が後押しとなり、この1年で急速にサービスが成長しています。

利用実績も着実に増えており、これまでメルカリ、マネーフォワード、ユーグレナ、GAテクノロジーズ、ジーニー、ツクルバなどといった、国内を代表する上場スタートアップ企業の皆様にもご利用いただいています。

昨年の9月には楽天証券、10月にはMUFGと大手金融機関との連携も開始し、さらに勢いを加速。この成長性を投資家の皆様にご評価いただき今回の資金調達につなげることができました。

日々様々な上場スタートアップの皆さまと接していて感じるのは、本当にユニークで成長可能性のある素晴らしい企業がたくさんあるなという点です。

岸田政権は「スタートアップ 5か年計画」の中で、ユニコーン100社を創るということを名言されていますが、未上場スタートアップだけにとどまらず、上場スタートアップの成長についても、より促進していくことが日本経済の成長をより加速させていくことに寄与すると考えています。

最後に

Fundsはここからさらに事業領域を拡大し、より総合的なデットファイナンスのプラットフォームに進化していきます。

現在は上場企業を中心にサービスを展開してきましたが、今年はベンチャーデットにも進出する予定です。

年内にファンドを組成し、ミドル〜レイター前半の有望な未上場スタートアップに対して成長資金を提供していきます。それによりさらに日本のスタートアップエコシステムの活性化に貢献していきたいと考えています。

Fundsを通じて、日本に滞留する1000兆円の預金を、日本の成長企業に流していくことで、企業の成長を後押しすると共に、日本の経済成長に貢献していきたいと考えています。

現在、ファンズでは一緒に新しい「金融のカタチ」をつくってくれる仲間を募集しています。金融は難しい印象を持っている方も多いですが、実際に携わってみると非常にエキサイティングでやりがいのある仕事です。

これからも、現状に留まらず革新的なサービスを次々にリリースしていく予定です。少しでもご興味ある方はぜひお気軽にお声がけください。







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