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気前のいい神様と割烹着を着た猫

 今朝も寒い。でも風はなく窓越しの陽の光が暖かい。天気のいい冬の朝には神様だって意外に気前がいいところを見せたりもする。

 近頃猫たちはわたしの家へ寄り付かない。玄関ポーチで日向ぼっこもしてないし、家の庭にうんちをしに来た急ぎ足の猫に、門の前の階段の途中でばったり出会っちゃったりなんかもしない。そういう時決まって猫たちは少しだけ「あ、ちっ。しまった」って顔をして、「オレ別におまえんちにうんちしに来たんじゃねーからな」ってごまかすように目をそらし、さも用事を思い出したって感じでさっさと踵を返してどこかへ走り去って行ったけど。
 あそこの軒下のベンチには、マトリョーシカ人形みたいに同じ模様の大小の猫がてんこもりになって密着してすわってたのにな。忙しいのかな。昨日の午後むこうのほうの路を小走りに行くいつものしま猫を見かけたけど。最近わたしの見かける猫といえば、どいつもこいつもみんな向こうのほうの路を行く尻尾の伸びたお尻や横っ腹ばっかりだ。わたしが思うほど猫とわたしは親密でもなかったらしい。
 まぁいいけど。

 それにしたってこんなのんきな休日の朝でさえ猫どもは皆忙しそうで、割烹着を着せ買い物籠でも持たせたらさぞかし似合うだろうとそう思えるくらい急ぎ足に路地を行く。奴らはきっと皆お母さん猫なのだ。

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