ファシリテーションが教育の未来を照らす
2020年春に東京に戻ったら、粛々と多種多様なオンラインの講座をアプライドインプロファシリテーターアカデミア*で共に学ぶプラクティショナー**の方々の専門を活かして開催していこう!
それが、2019年12月末~20年年始の年初の誓いでした。
その頃は、まさか世界が感染症でこんな風に変わっていくとは微塵もおもってはいなかったのですが、そうなったからには、それをYes,Andして、自身の頭の中にあった構想を実際に形にしていくしかない!
と、猛烈にパソコンにむかっていたのが4月―5月。
オンラインサロンを開催して、今年で3年目。
zoomを活用し始めたのが6年くらい前で、その頃はもっぱら海外のアプライドインプロを学び合う仲間との定期カンファレンスに参加する形でしたが、オンラインサロンを開催しようと思ったのは、日本全国で学び合うプラクティショナーの方々との定期的な学びの共有ができたらという想いでした。
また、ミネルバ大学のような学び舎の構想を持ち始めたのもアプライドインプロファシリテーターアカデミアを設立した大きなきっかけになります。
時をさらにもう少しさかのぼると、FDer(Faculty Developer=教育力向上を支援する人)として、活動をはじめたのが、2011年秋。
慶應義塾大学藤沢湘南キャンパス(Keio SFC)でおこなっている授業スタイルを他大学の先生方にもできるような研修を!というご依頼がキッカケで、あれよあれよという間に、全国各地の大学や高校をまわることになりました。
その背景には文科省からの「アクティブラーニング***」という言葉と紐づいていたのですが、ここで気づいたのは、「アクティブラーニング」を手法として手っ取り早く学びたい人が多いなぁ、、ということでした。
わたしが行っていたのは、手法ではなくマインドセット。
目の前にいる生徒や学生をよく観察=>洞察し、そして、どんなきっかけで行動を変容(学びたいという気持ちを引き出せるか)につなげられるか。
そのためには、まず、与えるではなく、受け取るという姿勢から。
先生という職業柄、一つでも多くの知識を与えるということに注力しがちに思います。
そして、世間は、先生はなんでも知っていると思いがち。
また、先生もそのイメージにそれに応えたい。それは、逆を返すと、先生は間違うこと、失敗することをとても嫌います。
だから、とても慎重になってしまう。
さて、その現状をどう打破できるか、、
それが、アプライドインプロを教育で活かしていこうとおもったきっかけです。
そもそも、インプロ(即興演劇)は、ステージの上で、演者がお客さんからいただくお題をもとに即興で演じます。
一人芝居から、複数の演者で60分以上を即興で演じるものまで。
チームを組んで、バトルのように、より即興力を競うもの(シアタースポーツとよばれています)もあります。
演技力だけではなく、発想力、柔軟性、臨機応変に切り替える能力から、記憶力や論理的思考能力も必要になってきます。
もともとインプロに出逢った頃のわたしは企業研修の講師をしていたのですが、インプロのお稽古を通して、様々な能力の開発ができることにワクワクして、インプロを取り入れた能力開発(=アプライドインプロ)に大きくはまっていき、世界各国で同じ仕事をする仲間と出会い、研鑽し、東京でカンファレンスまで開催し、そして、アカデミアを設立しました。
また、ファシリテーションとインプロはとても親和性があります。
ステージで複数の演者でインプロするとき、自分以外の演者たちが向かいたい方向、発想、現時点での感情、、等々、、ものすっごく読みます。
読みながら、自分自身はどんな立ち位置で、なにを発すればこの場はその目指したい方向に動くのか、、、
それを瞬時に行っていくのですが、、
これ、まさに、ファシリテーションなのです。
オンラインサロンを開催始めた当初は、対面での講座の補習のような扱いでした。基本的に知識注入部分については、「テキストにしているからそちらを読んでください」としていたことを、その背景も含めてレクチャーしてほしいというリクエストを多々頂いたことがきっかけでした。
そこで、日本全国から空間を超えて、同じ時間に集まる学びを深める方々との時間を過ごし、オンラインでさらに学び合い、学びを深めることの楽しみをみつけることができたのが、この3年くらいになります。
そして、いま、40名~60名という人数をオンラインで学ぶことになり、想うことは、、
オンラインでも、インタラクティブに学び合い、学びを深めることは可能であるということ。
また、オンラインならではの、学び合いの手法があり、つながりやネットワークを提供できる素晴らしいツールであることをもっと社会に知ってほしいと感じています。
ツイッターをみていると、第2波に備えて動画づくりを強制されている先生のやるせない気持ちを目にしたりしています。
これは、教育の本質を知らない人たちからの指示なのでしょうか、、、
世の中にはすでに素晴らしい動画教材も揃ってきています。
こどもたちの声を聴いていても、学校に行きたいと願い根底には、「ともだちに会いたい」「ともだちをつくりたい」「先生としゃべりたい」など、社会とのつながり自体を求めています。
これからの社会や未来がどうなっていくかの不安などもひとりで抱え込んでいたりします。
そこに対して、もちろん明確なこたえもありません。
ただ、そんな不安や、自分のココロの中のもやもやを吐き出せる安心安全な場所の確保が現状では必要なのでは、、と感じています。
いくら、素晴らしい知識を与えても、心が不安なままでは何も入ってきません。
心のもやもやの共有、傍にいるよという安心感、聴いてもらえる&相手もおなじことを感じていたという共感、、などなどができる場づくり。
それは、対面でもオンラインでも可能です。
学校が再開されても、ようやくともだちに会える!ともだちをつくれる!と思っていた中で、ソーシャルディスタンスと言われ、マスクをしたまま、話すことも遠慮してしまう。
教科書や消しゴムを忘れても借りれないし、貸せないし、、、
いま、こどもたちが必要としていることは、なんなのか?
震災、感染症、、歴史に残る事象の中で生きる我々は、「いまを懸命に生き残っていく」ために、支え合い、学び合い、自分ができることを提供し、提供されることをありがたく笑顔と感謝で受け取り、成長しあっていくことなのではないかしら。
そして、それをつなげていくことがファシリテーションであり、いま、学校で先生方に活かしていただきたいスキルとおもっています。
*アプライドインプロファシリテーターアカデミアとは、インプロ(即興演劇)のマインドセットとスキルセットを取り入れたファシリテーションをオンラインとインパーソン(対面)で深め研究する学び舎です。
詳しくはこちらをご覧ください。
https://www.ai-fa.org/
**プラクティショナーとは、学びを実践に変え、リフレクションとフィードバックで研鑽し、またさらに新しいスキルと知識を取り入れながら、常に前線に立っている実践者のこと。
***ファシリテーションとは、関わるコミュニティや組織、人間関係において、常に中立な立場で関係構築のための企てを行ったり、それらが目的に到達するための「問い」を立てたり、出てきた意見やアイデアをまとめる支援を行うこと。
そのためには、ときにはリーダーをするときもあるし、フォロワー、または、ニッチャー、チャレンジャー、など多彩な役割となり場に風を送りこんでいく。
ファシリテーターは、それらを行う人のことであり、それらを行えるためには、観察力、洞察力、想像力、多様(論理的、水平的、多角・多視点的などなど)な思考力、創造力、瞬発力、内省できる力などが必要となる。
さらに、柔軟性や挑戦心、失敗を認める素直さとわからないことはわからないと言える正直さも必要となる。
わたしがファシリテーターに必要とおもう、アプライドインプロの視点からのコンピテンシーをこちらにあげています。
https://www.youtube.com/watch?v=EO0S8GE9xQk
***文科省の狙いは、アクティブラーニングをすることではなく、学び手がアクティブラーナー(主体的に興味関心をもった状態で学びにとりくんでいる)になっている授業にすること。
そのための第一歩は、教え手自身がアクティブラーナーとなって、多種多様な学びを自らはじめ、学びの本質を学ぶことだとわたしは感じています。
社会のひとりひとりが自分らしくを楽しめる文化にしたいと一言でまとめきれないくらいのいろんな活動をしてます。 感謝と愛に溢れた社会づくり・人づくりにすこしでも貢献できたら、と、学びを楽しみに変える教育の改革活動をしています。 サポートいただけたら勇気になります!ありがとうございます