見出し画像

異世界転移SF映画『不思議惑星キン・ザ・ザ』

日本ではカルト映画で有名、らしいけど、普通にいまみても、おもしろくて、よくできた映画だった。

調べてみたら、公開当時は本国ソ連では1570万人の動員を記録、とのことで、1980年代のソ連の人口は、1億3900万人 なので、ほぼ9人に1人は劇場に足を運んだ、ということなので、ここまで流行ると、カルト映画というよりは、ソ連(ロシア)人の国民的映画、だろう。

映像もいいし、脚本もいいし、重たいものを描いているけど、映像はずっと軽やか、いい映画だ!
なんで今まで観てなかったんだろう。

砂漠、おっさん、ダンス! 怒涛の開始12分。

画像1

都市にいたのに、開始5分で、とうとつに、異世界の砂漠にとばされる現代人2人。

状況がわからないまま、砂漠をあるいていると、ペンギンを蒸す機械そっくりのUFOがやってきて、そこから汚い格好したおじさんがでてきて、変なポーズで「クー!」と叫ぶ。

そして、よくわからないダンスをはじめる。ここまでで12分!
キーイベントも、インサイディングイベントもこなしながら、主要メンバーの自己紹介を終わらせ、キーアイテムもほぼすべて登場させている、最高のフック(掴み)だ。

みんな大真面目、コメディじゃないからこそ、成立するコメディ

いかにもお笑いをねらった演出って、しらけてしまうんだけど、『不思議惑星キン・ザ・ザ』は、みんな真剣で、真面目だから、笑いに嫌味がない。

故郷に帰りたい真剣な地球人と、なんとかして生き抜きたい真剣な異星人の文化のすれ違いが結果的にコメディなっている。

主人公のヒーローっぷりにほれる。

物語において、ヒーローは強さではない
ヒーローとは「学び、成長するもの」であり、「決断し、犠牲を払うもの」であり、「死と向き合って、選択をするもの」だ。

本作品の主人公マシコフその3つをすべてそなえていて、とくに「決断し、犠牲を払うもの」という点で、かなり高水準のヒーローとなっている。

こんな「クー」とか「キュー」とかいってるコメディ映画で、突然「わたしだったら、こんな選択できるかな……」と思わせてしまうヒーローが顕現するのだ。

それに、わたしはこの映画のラストが気に入ってしまった。
この主人公じゃないと、ああいうラストにならなかったと思うからだ。

以上。

わたしは元々タルコフスキー好きだったので、ロシア映画は結構好きな作品が多いようだ。
次は「ざくろの色」をみてみたいと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?