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インバスケット昇進試験の対策方法は? 評価基準-時間配分-ありがちな失敗を解説

多くの企業の管理職昇進試験において、インバスケットが一般的な課題として設けられています。この試験は小論文や面接等の試験形式と異なるため、昇進試験を成功させるためには、その特性と対策方法をあらかじめ理解しておくことが重要です。

本記事では、インバスケット演習の概要と、評価基準や時間配分、そしてありがちな失敗など、これからインバスケット試験を受けようとする人に向けた内容となっています。


1. インバスケット昇進試験とは

インバスケット昇進試験は次のようなものです。

  • 60-90分という制限時間内に架空の役職・人物になりきり、20-25件ほどの処理を行う試験です。
    だいたい、前任者(部課長レベル)が急に倒れたりして、その穴埋めで代理をするというケースが多いです

  • メールボックスでまだ開封されていないメールがたくさんあり、それらを一定時間内に見て、返信や対応をするなどの処理を行います。

  • プレイヤーではなくマネージャーとしての資質を採点されます。

インバスケットを昇進試験に利用している会社はそれなりにあり、私も昇進に際して受けました。
その感想ですが、かなり短い時間で沢山の案件をこなす必要があり、何も対策をしないとまず合格はできないでしょう。
各案件に対して回答する優先順位をつけていなかいと厳しいです。


1.1 実際の問題を知る

実際の試験問題ですが、だいたいは決まって以下のパターンです。

<シチュエーション>
 ・急遽上層部に任命されて支店のマネージャーとして抜擢される。
 ・研修などで数日事務所不在にする(その間に部下と連絡取れない)

<案件の例>
 ・案件には不在中に締め切りがあるものが多数ある。
 ・取引先からのクレーム
 ・コンプライアンスを無視した部下(でも成果は出している)
 ・今後の新規事業の方向性を考える
 など

これだけでは具体的なイメージが湧かないと思いますので、実際の問題を見てみましょう。
以下に、さまざまな問題を解いてきた経験から、私がまとめた問題と各案件を載せます。

【シチュエーション説明】

【具体例1】

【具体例2】

こういった内容が全部で20〜25案件ほどあります。
このような各案件を制限時間内に読み込んで、メール形式で返信する(実際の文章形式で)といったもので、非常に時間が足りなく感じると思います。
※以下の章でこのようなパターンの採点基準・回答テンプレートも用意しております。


1.2 優先度の決め方

 インバスケットでは、よっぽどではない限り全ての案件を処理することはできません。
むしろ、捨てるべき案件を見極められているかも採点対象に上がることもあります
そのため各案件について”優先度”をつけて、優先度が高いものから手を付ける必要があります。
優先度は緊急度と重要度の二つの観点で次のように考えます。



ここでポイントなのは、優先度2と3の考え方です。
緊急度が高いけど重要度が低い ものと 緊急度が低いけど重要度が高いものをどうするか ですが、

緊急度が低いけど重要度が高いもの」を優先的に対応することが求められます。
多くの人は、重要ではないのに緊急な要件に時間を取られて本当に大事なものに着手でません。
しかし、そういう重要なものを後回しにしてしまうと、後々大きな問題や機会損失に育っていきます。
(※この考え方は「エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする」を読めばより納得していただけるかと思います。)

なので、この優先度2と3の考え方非常に重要です。

また、以下に緊急度×優先度について、具体的な事案の例をまとめましたので、参考にご覧ください。



2.インバスケット試験の評価基準


2.1 昇進後の権限

面接の評価方法に入る前に、まずは昇進後の職位に何が求めらられているのかを把握することが大切です。
これは会社毎に異なるかと思いますが、一般的な評価基準例を以下に提示します。

①部長(Department Manager)

  • 部門全体の戦略的計画や目標の策定と実行に関与します。

  • 部門の予算を管理し、リソースの割り当てを行います。

  • 部門のパフォーマンスと成果を監視し、必要に応じて改善策を導入します。

  • 部門内のスタッフを指導・育成し、業務の効率性と効果性を向上させます。

  • 上級管理職として、組織の意思決定プロセスに参加し、上司との連携を強化します。

②課長(Section/Division Manager)

  • 部門内の特定のセクションやディビジョンを管理し、その業務に責任を持ちます。

  • セクションまたはディビジョンの業績を追跡し、上司に報告します。

  • 部門の方針や目標を実行するために、部門内のスタッフを統括し、業務プロセスを管理します。

  • セクションまたはディビジョンの予算を管理し、リソースの適切な配分を行います。

  • 部門の方針を実行するために、部門内での業務プロセスやプロジェクトに関する意思決定を行います。

③係長(Team Leader/Supervisor)

  • チームまたはグループの日常業務の指導と管理を行います。

  • チームのタスク割り当て、スケジュール管理、業務効率の維持を担当します。

  • チームメンバーのパフォーマンス評価を行い、フィードバックを提供します。

  • 上司と連携し、チームの業績や進捗を報告し、必要な場合にはリソースの調整を行います。

  • チームの問題解決や効果的なコミュニケーションを促進し、協力を奨励します。

これらの役職の権限と責任は、組織内での役割や業界によって異なります。また、上記の役職の上にさらに上級の役職が存在する場合もあります。組織の階層構造や業務内容に応じて、役割と責任が調整されることが一般的です。


2.2 インバスケット採点基準

次にインバスケット試験の採点基準について説明します。
以下表は"ビジネス偏差値 70の人の答え"より引用した、インバスケット試験の採点基準です。
各案件ごとに次の表のような10の評価項目で採点されています。

例えば、次の案件を例に具体的な回答と評価基準を見てみましょう。
【案件例】

【評価基準例】

このように、1つの案件で非常に多くの回答パターンとその評価基準が設定されていることがわかります。

また"ビジネス偏差値 70の人の答え"では、どれかが著しく欠落しているのは、マネージャーとしてはNGとなります。良くも悪くもマネージャーにはバランスが必要だとされています。

そのため、どのような評価カテゴリがあるかを正しく理解する必要があります。


3. インバスケット試験でありがちな失敗と回避策

ここではインバスケット昇進試験でありがちな失敗について説明していきます。


3.1 試験のルールに従わない

まず初めに挙げるのは「試験のルールに従わない」です。
これは当たり前ですが、当たり前すぎる故に忘れてしまう人がいるポイントです。
例えば
・問題用紙に記入してはいけないのに記入する。
・回答の指示に従わない(言われた書き方と異なる書き方をする)
などがあります。

スポーツでルールに反したらペナルティや退場となるように、昇進試験でも回答の指示に従わないのは致命的です。
試験用紙の解答要領はしっかり読んでや試験監督の指示には確実に従いましょう。


3.2 優先順位の考え方を誤っている

次は「優先順位の考え方を誤っている」です。
先に述べた、緊急度と重要度の考え方の「優先度2」と「優先度3」を取り違えてしまうパターンです。

これも教科書を読んで理解していれば間違うことは少ないですが、知らない場合は優先度を逆にしてしまいます。


3.3 一貫性が無い

各案件に100点で答えているようで、全体を通してみると考え方一貫してない場合もダメです
案件によって売上を優先したり、利益を優先したりがブレブレになってしまうことがあります。
インバスケット試験では全体で80点を取れればよいので、個別回答で100点を狙い過ぎずに、全体として一貫性を持たせるようにしましょう。
「一貫性を持たせろといっても、どんな軸を持てば良いかわからない」
と悩んでいる人は、6章のテンプレート戦略を参考にしてください。


3.4 挨拶や感謝をしない

試験では論理性や問題解決だけを問われていると思っているパターンです。
ヒューマンスキルも評価対象です。
とりあえず「ご連絡ありがとうございます」や「今回課長に任命された○○です」と書いておきましょう。
これも採点基準を知っていれば失点はないですが、知らないと加点されず致命的になってしまう失敗になります。


3.5 高得点の回答を狙いすぎて時間切れ

 上の一貫性の話でも述べましたが、何でも最高レベルの答えに行き着きたいのが意識高い系会社員。高得点の回答を狙うあまり次のようなミスを犯してしまいます。
① 問題を読みすぎ
 試験時間的に各案件の問題文を全部読んでいる時間はなく、取捨選択する必要があります。しかし、1つの設問ごとに高得点を狙う意識高い社員は読み込んでしまい時間切れになります。
② 関連課題を整理しすぎ
 インバスケット試験は課題同士が関連していることがあり、その関連も適切に整理していることが得点をとるための要素の一つです。ただし、関連がわかっておらずとも得点が減るだけで0点になるわけでは無いです。
一方で意識高い会社員はその関連の見落としに耐えられません。そのため、何度も何度も各案件を見直して相関関係を完璧に整理します。ただし、そのために貴重な時間を使い切ってしまい、十分な回答を作成する時間がなくなってしまいます。
インバスケット試験は各案件を100点をとる試験ではなく、短い時間で80点をとっていく試験です。
時間配分を意識しながら詳細に囚われすぎないようにしましょう。



4. インバスケット試験の時間配分

4章ではインバスケット試験の時間配分について考察と説明をしていきます。

4.1 試験時間の構成と時間比率

まず初めに、試験時間における各作業の時間比率を考えます。
「インバスケットの本では"優先度判断が重要"と書かれているので、当然そこに時間を割くことになるのだろうと。」と、トレーニングを行う前まではそう考えていました
しかし、インバスケットのトレーニングを2題ほど取り組み、下図のように時間配分の認識が変化しました。

実際に時間がかかっているのは「問題を読む時間」と「回答を考える時間」です
逆に優先度判断は、その考え方さえおさせておけば一瞬でできました

なので、本noteでは、この「問題を読む時間」と「回答を考える時間」をいかに短縮できるかについて焦点を当てて解説していきます。


4.2 試験時間の短縮戦略

先に説明した通り、
「問題を読む時間」
「回答を考える時間」
をいかに短縮するかが肝となります。


ポイントは「案件がわからない中で詳細まで読んでもダメ」「全ての案件を把握してから詳細を読み出す」
インバスケット試験は圧倒的に時間が足りない」と言われています。
しかし、実際が私が試験対策のトレーニングをしていた時と、本番の試験では全然そんなことはありませんでした。
それは
「問題の読み方と読むべきポイントを定めていたから」
「答えをパターン化しておいて、考えずに70点の回答を出せるようにしたから」

です。
トレーニングをする前と後での「時間が足りない」の認識は次のように変わりました。
問題を無駄に読んだり、回答を考える時間が思っていたよりも大きなものでした。
そのため、無駄を省き、回答テンプレを準備しておき、0から考えて作り出す時間を減らしました。


4.3 回答時間の短縮方法 〜パターン別に回答テンプレを利用する〜

お決まりの回答パターンがあるので、そういったものは文章を用意しておく
② パターン化しておいた回答を利用する。
 答えをパターン化する。ある程度インバスケット試験の問題を解き、採点項目を見ていると、書くべき内容をパターン化することができました。「あ、これ進○ゼミでやった問題だ!」というような感じで、思考停止でパターン化した回答を書けばOKな問題が7割はある感覚でした。
完璧主義に走ると、全てをしっかり考えて100点の回答を出したがりますが、時間を優先して確実に70点の回答を早く出していく戦術です。



5.トレーニング方法


さて、前章までインバスケット昇進試験におけるインバスケット要素を説明しました。
重要なのは、「インバスケットはスキルであって、知識ではない」ということです。
頭では理解していても、いざやってみるとトレーニングを積んでいないとなかなかできないものです。
合格に向けたステップを次の4ステップとしました。

  1. インバスケット昇進試験が何なのか知る

  2. 考え方のトレーニング(試験問題を見て)

  3. 時間配分のトレーニング(自分の弱点を補強する)

それぞれ順に解説していきます。


4.1 インバスケット昇進試験が何なのか知る

本記事の1章でも簡単には説明した内容です。
時間があれば、書籍などを読んでより具体的に知る必要があります。

4.2 考え方のトレーニング(試験問題を見て)

実際に問題を見てみて、自分の考える方向性が正しいかチェックしましょう。
いきなり問題を本番さながらに解いても時間の無駄です。
(1回目だけは、時間が足りないという現実を知るためにやってもいいかもしれません)
問題集はインバスケット研究所というところで購入できます。
ただ、試験が終わった人がメルカリで安く出品していることもあります。
【参考:メルカリ& ラクマ】
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4.3 時間配分のトレーニング(自分の弱点の補強)

インバスケットの考え方に慣れた後は、試験時間を意識しながら試験問題を解いてトレーニングをしましょう。

「インバスケットはスキルであって、知識ではない」です。
いざやってみると、想像以上に時間がかかると思います。

また、これは私の体験から考えることですが、多くの人はインバスケットの”考え方”はわかっても、スキルとして身についていないと感じます。
このトレーニングを通じて
“できるまでやる”
ことが合格を分けるもっとも大切なことだと考えています。
下の図がスキルとして身についた度合いと合格レベルを表しています。

ちなみに制限時間以内にできるようになるためには、私は”回答のテンプレート化”という戦術を使いました。
とうのも、何度も問題を解いているうちに、案件のパターンが見えてきました。
「こういった案件にはこういった回答をしておこう」
というものを、採点基準を見ながら作り込み、本番では半分思考停止で高速で回答を作れるようにしました。
(もちろん、問題を読みながら適宜微修正はしましたが)
結果的に、10分時間を余らせて全ての案件を処理するに至りました。
トレーニングを積めば、そのように余裕を持って合格することも可能です。

回答のテンプレートについては、こちらの記事にまとめてありますので興味のある方はこちらもご覧ください

https://note.com/yerobu/n/n8229476be9df


最後に

 いかがでしたでしょうか。私は実際にこの戦術をとり、1回目の試験で合格することができました。実際の成績が返ってきましたので、それを見て今回の戦術の弱点も記載しておきます。

反省点

 着任後の会議を多用しすぎて決断力が弱くなってしまいました。もう少しその場で決めたり決断を任せてしまっても良かったのでしょう。

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