見出し画像

「緊急地震速報が発表されなかった強い揺れの地震」をまとめてみた

【はじめに】
この記事では、一般向け「緊急地震速報」が発表されなかったものの、強い揺れが観測された地震をリストアップします。

1.緊急地震速報(警報)の誤差について

気象庁のホームページより「緊急地震速報の特性や限界、利用上の注意」のページには、「誤差」について、以下のとおりの記載があります。

緊急地震速報は……ごく短時間のデータだけを使った速報であることから、予測された震度に誤差を伴うなどの限界もあります。
予想には誤差が伴います
少ない観測点での短時間の観測データから地震の規模や震源を推定し、各地の震度等を予想するため、予想震度は±1階級程度の誤差を伴うなど、精度が十分でない場合があります。
また、予想の誤差により、緊急地震速報(警報/予報)の発表基準を満たさず、緊急地震速報(警報/予報)が発表できない場合があります。

緊急地震速報(警報)は、最大震度5弱以上と推定される地震に対して発表されるものです。言い換えれば、最大震度4以下と推定された地震に対して「警報」は発表されず、「高度利用者向け」だけ発表される事となります。

画像1

とはいえ上記記載を直接的に捉えれば、「最大震度4」と推定した地震が、実際には「最大震度5弱」だったケースについては『的中』とも言えることに鑑み、今回取り上げるのは「最大震度5強以上」(誤差:2階級以上)に絞ってリストアップしようと思います。

2.(例外)最大震度6強で発表されなかった事例

先に、「例外」的に最大震度6強でも緊急地震速報が発表されなかった事例をご紹介しておきます。それが、

・2011/03/11 15:15 43km M7.6 6強 茨城県沖

東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)当日、本震発生から30分足らず後に起き、一連の余震活動で最も大きな規模だった「茨城県沖」の地震です。

茨城県で震度6、関東全都県で震度5以上を観測する大地震だったものの、ちょうど東北地方の沿岸に巨大津波が来襲するタイミングと重なる時間帯に起きたこの地震は、「津波からの避難」の優先が求められる時間帯でした。加えて、大規模な停電などにより正確な警報発表が難しかった事情もあったこともあろうかと思います。

画像2

NHKでも「字幕」のみで大きく触れられる事のなかったこの地震の扱いは、津波による甚大な被害を思えば致し方ない部分がありましょう。それが故に「非常時」の対応といった観点から、例外として最初に取り上げさせてもらいました。

ただ例外ではあるものの、歴史的な大震災となったケースに当てはめると、今後もこうしたケースが発生する可能性は十分にありうるかと思います。

例えば、濃尾地震や鳥取地震、福井地震の様に活動が極めて活発な場合は、「熊本地震」の様に全ての大地震に対応できないかも知れません。また、「震度7」クラスが連発した「関東大震災」や、それに類する巨大地震が発生したケースでは、『足切り』のようなことが再度起きるかも知れません。

3.最大震度5強以上で緊急地震速報(警報)が発表されなかった事例

正直、1例ぐらいあるのかと思っていたんですが、上記(例外)を除いて、「最大震度6弱」以上で緊急地震速報(警報)が発表されなかった事例はありませんでした。ここから、「5強」なのに警報が発表されなかった事例を2010年以降でリストアップしてみました。

2010年代前半
・2011/03/11 17km M6.6 5強 岩手県沖(16:28)
・2011/03/23 09km M4.7 5強 福島県浜通り
・2011/06/02 06km M4.7 5強 新潟県中越地方
・2011/09/07 10km M5.1 5強 日高地方中部
・2011/10/05 10km M4.5 5強 熊本県熊本地方
・2011/11/20 09km M5.3 5強 茨城県北部
・2012/05/24 60km M6.1 5強 青森県東方沖
・2012/08/30 60km M5.6 5強 宮城県沖
・2013/05/18 46km M6.0 5強 福島県沖

画像3

陸域ではM5前後の浅い地震、海域では若干深いM6前後の地震で多い模様。

2010年代後半
・2015/02/17 50km M5.7 5強 岩手県沖
・2015/05/30  682km M8.1 5強 小笠原諸島西方沖
・2016/04/15 11km M5.0 5強 熊本県熊本地方(00:06)
・2016/04/29 07km M4.5 5強 大分県中部
・2017/06/20 42km M5.0 5強 豊後水道
・2018/05/25 06km M5.2 5強 長野県北部

画像4

2015年に発生した「小笠原諸島西方沖地震」では、全国47都道府県で震度1以上を観測し、震度5クラスを小笠原だけでなく本州関東地方でも観測しましたが、深さ682kmの深発地震だったので、警報は発表されませんでした。

○ 緊急地震速報の発表
 この地震に対し、地震検知から3.4秒後に緊急地震速報(予報)を発表しました。なお、緊急地震速報(警報)については、深発地震では正確な震度の予測が困難であることから発表していません。

こうした事例は、2020年代に入ってから今の所ありませんが、今後も引続き強い揺れをもたらす地震でも、緊急地震速報が必ずしも発表されるとは限らないことをご確認いただければと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?