マガジンのカバー画像

【小説】あしたの祈り【連載まとめ】

7
連載小説「あしたの祈り」をまとめていきます。 記事を順次追加予定です。
運営しているクリエイター

記事一覧

【小説】あしたの祈り【第7回・最終回】#創作大賞2023

 八畳ほどの部屋には、センターテーブルに向かってソファが対になっている。白い壁は蛍光色の…

内藤えん
11か月前
9

【小説】あしたの祈り【第6回】#創作大賞2023

 うーっと唸るような声は、高くなったり低くなったりする。もう二十一時だ。学校での仕事を終…

内藤えん
11か月前
9

【小説】あしたの祈り【第5回】#創作大賞2023

 教室の中では、鉛筆の走る音だけが響いた。  普段の授業ならば常に私語に注意しながら行わ…

内藤えん
11か月前
3

【小説】あしたの祈り【第4回】#創作大賞2023

 学校に戻るとすでに十七時を過ぎ、職員室では田辺が帰り支度をしていた。 「どっか行ってた…

内藤えん
11か月前
4

【小説】あしたの祈り【第3回】#創作大賞2023

 家庭訪問の期間が慌ただしく終わると、ゴールデンウィークに突入する。  バスケ部の練習や…

内藤えん
11か月前
4

【小説】あしたの祈り【第2回】#創作大賞2023

 ガラスの割れる音が響き、真樹子は反射的にその音のした方向を向いた。何が起きたのかを確認…

内藤えん
11か月前
8

【小説】あしたの祈り【第1回】#創作大賞2023

 ビニール袋の内側には油が浮かんでいた。チーズの乗ったパンや砂糖がまぶされたドーナツなどがいくつも乱暴に詰め込まれている。米山真樹子は、そのビニール袋に浮かぶ油を眺めた。 「で、あんたが担任?」  投げかけられた声に、真樹子ははっとして相手を眺めた。四十代くらいだろうか、腹の出たパン屋の主人は、胡散臭い物でも見るかのように、真樹子を上から下に見た。  はい、となんとか返事はしたものの、真樹子は自分の頬が熱を帯びてくるのを感じた。  始業式の今日、初めて生徒に接したばか