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抱きしめる

数年前、自分の本来の名前とは別のなまえがある日突然降りてきて、
わたしはそのなまえを使って、表現をするようになった。

その子は、それまでの私とはまるで違った。
自分なのに、まるで別の存在のようだった。

人前に立つ、スポットライトを浴びることが出来る。
わたしにとっては強い光のような存在。

その子だったら大丈夫。

強くて、明るくて、ぐいぐいわたしを、ひっぱってくれる。
大丈夫だよって、笑って、手を引いてくれる。

わたしにとってその子は、そんな感じの心強い希望だった。

その子として
表舞台に立つようになって数年がたち、

わたしは最近、
その自分に違和感を持つようになった。

その子は私なのだけど、

わたしはその子でいる時、
つまりは、
自分が表現をするとき、

めちゃくちゃに”子ども”なのだ。

わたしは今大人なのに、
ものすごい子どもなのだ。

まるで幼い子どものように、
素直で、まっすぐで、
すぐ笑う、すぐ怒る、すぐ泣く

とっても感情的で、わがままだ。



はっとした。


ああ、
これ、

”子どもの頃の”わたしだ。






子ども時代、私は全く子供らしくない毎日を過ごしてた。

正確に言うと、子どもらしく過ごせない環境にいた。

いつも周りの顔色を伺い、
いつも誰かに嫌われないように怒らせないように気を使い
身近な人たちを世話することで、周りに大切にされたくて、
好かれるようにとにかく頑張って生きていた。

だから、子ども時代のほとんどを子どもらしくなく過ごしていた。

あの時の、本当のわたしが
その、数年前に突然、降りてきた子、だったのだった。

すごく可愛くて、
子どもっぽくて、
すぐはしゃいで、
スキップが大好きで、

すぐ怒ってすぐ本気になって
すぐ悔しがって泣き叫んで
わがままな、

あの子。


あの子はわたしの希望だった。
ひかりだった。

大好きだった。


でも、

あれは


過去の




わたしだったのだ。





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