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神と和解せよ。(新宿~(表参道)~銀座ギャルソン探訪記)


コムデギャルソンという「恐れ」

私にとってのコムデギャルソン、およびその分家筋のブランドは「モードの中でも着ない服」として存在していた。
教室であきやさんにもはっきり印をつけてもらったのに?
何度も試着してるのに?なぜ?

一言でまとめるととっても陳腐だが
「親と姉が着てる服だから」
である。(最近の読者さん向けに書いておきますがおだまきさんは実家の女達と仲が悪いよ!)
大学入学時にスーツを新調しようとしてギャルソンの路面店に連れ込む母と
その隣にあるデパート内のヴィヴィアンウエストウッドに無理矢理向かった私。
その勝負は無事ヴィヴィアンが収めたが、何かあると着させられそうになるまたは着ているのを見ていることが多い服といえばギャルソンだった。

自問自答後モードに傾倒した私だが、やはり過去の思い出は拭い去れずに自然と川久保玲よりも山本耀司に惹かれてその周辺のブランドを愛することになったのだが。

赤いシャツ狂想曲

ある日の仕事帰り、ギャルソンの店舗前ではっとなった。
真っ赤なワンピース。鮮やかな色に呼応する自分がいた。

「(最近、梅棒のビジュアル解禁でみんなが真っ赤なドレス着てるの見たからかなあ………)」

店内を覗くとモノトーンの世界の中で様々な色の赤が輝いている一角があった。
「(アンミカさん、赤は一体この世に何色あるんですかーー!!)」
と思いながらも近づいてみるとオーガンジーで作られた赤いシャツの組み合わせが2点あって「(綺麗だな)」と思わず鏡で合わせてみた。
それでもやっぱり無理矢理に着させられそうになった思い出があって、やめとこ、と棚に戻して静かに帰った。

数日後、やっぱり仕事帰りに私はギャルソンの店舗前にいた。
やっぱりあの2点のシャツがよくてもう一度鏡で合わせてみて「(よき)」と思いながらサイズを確認して少し小さいかもな……と危惧しながら帰った。

これを私は一週間で3回繰り返した。

それ以外にもフロアを見ると赤い服があって、今年のはやりなのかな……といくつか当ててみたがどれも素敵だったがやはり最後はギャルソンに行き着いて同じシャツを鏡で合わせて繰り返すだけだったのだ。

ある日曜の決心(ケイニノミヤ編)

さすがにそろそろ蹴りをつけねばなあ……と思っていたところで、予定のない日曜日を迎えた。
少し寝坊したので録画したがっちりマンデーを見てあきやさんの活躍に大変満足し、まだぐうぐうと眠っている配偶者をほったらかして昨日買ったばかりだったり届いたばっかりの化粧品を使って丁寧に化粧をして髪を巻いている頃にのっそりと起きた配偶者がおはようと声を掛けてきて、洗濯や朝ご飯の支度をして貰っている間に着替えを終えてリビングに向かう。
テレビではキングオージャーがやっていて、ああしまったヤンマ総長回だったのにラストにさしかかってると焦っている間に昨日の残りのカレーが出される。
カレーを食べながらキングオージャーを見て、キングオージャーが終わったらradikoに切り替えて日曜天国を聞いていると今日はどうするのと声を掛けられる。

「今日は早く起きれてもう出かける支度も出来たからこのまま出かけようと思って」

新宿伊勢丹を軽く覗いてから表参道のニュージュエリートウキョウを見に行こうと計画していたのでそう答えるとじゃあいってらっしゃいと見送られる。
友人に勧められたハットをやっと被れる時期が来たと喜びながら外に出る。
天気は良くて、洗濯ものもよく乾きそうだった。

新宿三丁目に向かう電車は混雑していて、日曜日を感じる。

人の大半は新宿三丁目で降りて、街の中に人が溶け込んでいく。
私もその一体になって伊勢丹の中になだれ込もうとしてふと足が止まる。
そういえばパタリーさんのイベントでみどりさんが買ってこようとして買えなかったと言っていて、あきやさんからもあまりにも美味しいから是非にとオススメされた富士見堂のあんこ天米を購入しようとしたら
いた場所が「ここは最後尾ではありません」と言うところだったらしく店員さんに最後尾に並びなおさせてもらう。
この時期は贈答品用が多いのか、小さめのサイズやばら売りはなく、最小10個入りからと書いてあってこういう時家族がいて良かったと思う。
五日間のおやつ、と思いながら並んで他のおかきも一緒に買う。
朝イチで良い物が買えたと喜びながら一路、3階へと向かった。

リスタイルのHYKEでは気になっていた赤いドレスがなくて少しホッとして、
リスタイルの正面に新たな居城を構えたY'Sで気になった黒い縦ラインの糸縫いが目立つワンピースを試着してみた。
相変わらず可愛い。よい。だがしかし「(赤じゃないんだよなあ)」と赤にとらわれた状態でお礼を伝えてじゃあギャルソン近辺を覗くか……と移動。

まずノワールケイニノミヤを見てあいかわらずかわいいな……と思っていたところで「こちらにニットもあるのでご覧下さい」と案内頂いた先にあったものが可愛すぎて「かわいい……」と店員さんの説明を食う勢いで口にしてしまった。
今季最後の入荷で……と言われて広げて何通りかある着方を教えて貰うと更に可愛い。

ちょっと丈が短めの仕立てだったので一番大きいサイズを出して貰って服の上から試着すると本当に「いい」としか言えない。
ノワールケイニノミヤの特徴的なフリル使いが本当に美しかった。

「これお願いしてもいいですか」

自問自答を超える「直感」が働いた。多分実家の家族がこれを見たら嫌な顔をするタイプの服なのは分かる。だけどこの機会を失ったらあとはないと思って購入出来た喜び、なにより「ギャルソン系列を買えた!」という自分が勝手に雫ちゃん現象を起こしていた対象を乗り越えられた喜び!
これは私、今日こそ赤いシャツが買えるかもしれない!

と、受け取ってすぐに隣のギャルソンに向かうとそこの店舗には赤いシャツは揃っておらず、じゃあ……と諦めそうな瞬間に「いや、銀座行く」と決意することが出来た。今日は絶対赤いシャツが着れる。そんな自信に満ちあふれていた。

寄り道ニュージュエリートウキョウ

「銀座に行くには表参道に出るのが一番効率的だから」
という言い訳と共に表参道に出てそのままSPIRALに直行してニュージュエリートウキョウへ。
まだ開店したばかりで人も少なくスムーズに見ることができました。
色んなところを見て本当に素敵なのが沢山あったのですが
(今年はなんだかパールが多かった感じがする!!)
ふと足を止めて試着したのは2-3階の階段の途中にある「RIN KAMEKURA」というブランドでした。

アメジストを囲むように星に見立てたスワロが輝く様子がかわいらしくて、少し手放すのが惜しいと感じながら三階へ向かい一通り見渡して
(otayoriさんにもご挨拶することができました!今日も推し刻印リンク着けてますと報告したら大変喜ばれました……!)
やっぱりだめだ!!と猛然と三階から階段へ戻りもう一度伺って、先ほど試着したサファイヤのリングを別のサイズでオーダー出来ないか尋ねたところ
周りのスワロの色も選んでオーダー出来ますという更に嬉しい報告を受け取ったので紫色のアメジストを囲む暗めと明るめの緑のスワロを選びました。
はい、これで北海道新幹線ちゃんリング完成です😊
人差し指にしっくり来る指輪が無かったので人差し指用に特別に作ってもらいたくて……と話すと本当に喜んで頂けてありがたかったです。

いやあ、今年のニュージュエリーでは何も買わんぞと言う誓いは簡単に崩されましたね、ははは。

ある日曜の決心(コムデギャルソン編)

電車に揺られて銀座三越に移動する。HYKEの赤いドレスがなくなったことを片目で確認してコムデギャルソンに向かい、仕事帰りに毎日のように見ていた赤シャツを二枚手にして店員さんに試着をお願いするとぜひどうぞと合わせるためのパンツも用意されてするすると試着することに。
思った以上にあっという間だったと驚きながら着替えてみる。
腕がオーガンジーになっているシャツと前身頃がオーガンジーになっているシャツ。
どちらも素敵で着てみていい!!って思えるところがあったのですが
どちらも「微妙に条件に達しない……」という残念なところもあり、
他にもワンピースなどを提案して貰えたけどさっきのケイニノミヤやニュージュエリートウキョウのように雷や直感が働くわけでもなく
「とりあえずコムデギャルソンで試着を満喫した」という実績が解除されただけだった。

が、それだけでも私にとってはすごいことなのだ。私にとっては偉大な一歩。

今度はもっと怖がらずに積極的に試着しようと決めながら店を出たが、同時に私の心にはメラメラと炎がまだ燃えていた。

「銀座三越がだめならドーバーがあるじゃない!!」

その後フロアを降りてエンフォルドを見ると私が夏場に頼っていたグレー地のワンピースの長袖版が出ている。
「(今日ドーバーで何も見つからなかったらこれを買っても良いかもしれない)」
服を妥協で選ぶのも失礼だったが、少し「妥当な」エンフォルドの優しさに惹かれている自分もいた

ある日曜の決心(ドーバーストリートマーケット編)

一階からとにかく「赤い服……」と囚われながら見に行くとまずGRLのところで足が止まる。かわいい。白いシャツに赤いリボンがついててキュート。
赤というか赤チェックが多くてこれじゃないのよね~と思いつつ同じフロアの別の商品を見ると赤いスカートがあるがサイズが合わず断念。
赤い服、赤い服、と探しながら登っていった先、TAOのあるフロアにたどり着いた瞬間「(そうだよTAOがあるじゃん!!)」と閃いて直行する。
キルト地でふんわりした赤いスカート、ウール地で裾にフリルの着いた赤いスカート。どちらもぱぁん!と頭の中ではじける音がした。
どちらも試着させて貰って悩んだが私の心はほとんどウール地のフリルに傾いていていた。
「(だってケイニノミヤのニットもウール地だったしフリル着いてるしそっくりで絶対似合う)」
だが一度疲れたので休みたいという気持ちもあり、「他の階を見てお茶して多分帰ってきてこちらを買うと思いますがちょっと待ってて貰っていいですか」と宣言してドーバーの他の階を覗き他にいい赤色の服に出逢えなかったこともあり外へ出て銀座を歩く。

すぐそばのメルサにスタバがあることを発見して、ちょうどココさんからもらった誕生日お祝いのドリンクチケットもあるからと席を確保して並ぶ。新作のピスタチオフラペチーノは濃厚な味がしておいしかった。
(昔の私はスタバでフラペチーノしか頼まなかったが、珈琲が飲めるようになってから最近ではカフェミストが定番になっている)

自分でも考えつつ試着写真を送りながらLINEで配偶者と話す。
「このスカート可愛い」
と言われたのは私が悩んでいたウール地の赤いスカートだった。
「だよね!!私もこれ買おうかで悩んでて!!」
と前のめりで答える。
似たような形や色のワンピースを持っているけど春先ぐらいまでエンフォルドでお茶を濁すか、ちょっと上乗せしてこの季節向きのTAOを買うか、と悩む私に
「それなら赤いスカートの方だよ」と言われてはっとした。
「無難・お茶を濁す・曖昧にしておく」なんて私が一番嫌なことじゃないか。
今着れるものを今買う。惹かれたものを身につけるって、そりゃ、そりゃそうだよ!!

だって私そうやってずっと自問自答してきたじゃない!

あとはもうフラペチーノを飲みきって店を出るほかなかった。
もどかしく日曜の混雑する道のりを歩きながらドーバーに向かい4階に向かう。
「おかえりなさい」と言われたときにはすでにウールのスカートが我が手にあった。
「すみません、こちらご用意して貰っていいですか」
決して安い買い物ではない。だが私にとって今日三度目の実績解除。
「ドーバーストリートマーケットで買い物をした」
川久保玲のこだわりが詰まったビルの中で手にした真っ赤なスカートの色はドキドキ鳴る心臓が全身に行き渡らせる血液のようだった。

家にたどり着いて、全身鏡の前で。

新しい服を買うととりあえず真っ先に着てみせて配偶者に自慢するのが常だが今回はどんな反応をされるかと思うと
「かわいい!」の一言が即座に帰ってくる。
着方を変えられるブラウスを見せるといいねと言われてボタンの留め方はこのあたりで終わらせておくとフリルが目立って良いかもしれないとアドバイスまで貰える。

「上のニットもイイし赤いスカートやっぱり可愛いね」

無理矢理、家族に着せられそうになっていたあの頃から違って私は自分で選ぶことが出来た。
その服を新しい家族がよろこんでくれる。

今はそれだけでいい。十分すぎるぐらい、今日の私は今までの「恐れ」を乗り越えることが出来た。

ーーと、ホッとして倒れる前にnoteを立ち上げたところであっという間に文章が埋まってしまって己でも驚いている。
良い服は人を雄弁にさせてしまうもの、なのかもしれない。

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