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経年劣化、あるいは経年刷新

アイドルに純真無垢であることを求めるファンの姿勢は、率直に気色が悪いと感じる。
しかし、変わっていく幼馴染に、「変わらないでいてほしい」と願う気持ちはそれに似た不愉快な色をしているのかもしれない。

ユーモアがあって、堂々としている彼女が好きだった。
自分の好きなものを好きだと言える彼女の気持ちのいい性格が好きだった。

田舎の女子高を卒業して、都会の大学に進学した彼女は変わっていった。
人の顔色を伺うような様子が見られるようになったし、
自分の見た目に対して強いコンプレックスを持つようになった。

結果的に彼女は面白いこと(時にはスベるリスクも伴う)を言わなくなったし、以前好きだったものへの関心は失って、今は美容に一番関心があるようだ。

私は内心そんな彼女に「変わらないでほしい」と願ってしまう。
「男ウケ」なんて言わないでほしいと願ってしまう。
都合のいい女になんてなり下がらないでほしいと願ってしまう。
そんなものさしから離れたところでのびのび生きていた彼女が好きだったから。

それと同時に、彼女の変化を受け入れられない自分が嫌になる。
人間が生きていく上で変化しないでいることなんてできるはずがないのに。
彼女に起きた変化は、彼女が生きていくための適応なのかもしれないのに。
素直に受け入れることができない、過去に縋る自分が嫌になる。

「男ウケ」への極端な嫌悪感も、「都合のいい女になんてなるな」という気持ちも、私のミサンドリー(男性嫌悪)のせいだなんてことはわかりきっている。
それを友達である彼女に押し付けることが間違ってることも、もちろんわかっている。

所詮、私だって「気色悪い」と感じた処女厨のアイドルファンと同じ。
自分の思想を他人にまで押しつける姿勢への嫌悪感は、同族嫌悪だったのかもしれない。

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