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2023年度より本格始動!メタバース上の学びの場「メタサポキャンパス」とは?

愛媛県内で、先進的なデジタル技術である「メタバース」を活用した新たな取組がスタートしたので紹介します。

今年度より、愛媛県総合教育センター内に愛媛県教育支援センターが設置されました。そこで運営している「メタサポキャンパス」は、メタバース(仮想空間)上の学びの場であり、不登校児童生徒との「つながり」をつくり、個々の状況に応じた学習の機会を保障し、社会的自立に向けた支援の充実を図ることを目的としています。現在、「メタサポキャンパス」を利用しているのは、29名の小中学生(令和5年12月末現在)。「メタサポキャンパス」では、子どもたちが「所属感」を感じられるように様々な工夫をしているといいます。今回は、「メタサポキャンパス」についてお話を伺いました。

■メタサポキャンパスについて

令和5年7月に「メタサポキャンパス」が開設されました。「メタサポキャンパス」とは、メタバース上での不登校児童生徒の「つながり」の場であり、「学習の機会を保障する」場です。開設当初は中学生8名が利用していましたが、9月27日より愛媛県内全ての小中学校の児童生徒が利用できるようになり、令和5年12月末現在は29名が利用しています。

「メタサポキャンパス」内では、愛媛県総合教育センターの担当スタッフであるメタっちの坪田さんとサポっちの長谷部さんの2人のほか、愛媛大学の大学生10名(学生サポーター)もサポートに参加。メタサポキャンパス内で、児童生徒と関わり、支援しています。「メタサポキャンパス」は平日の9〜16時に利用可能。その時間内であればどんな活動も自由に行うことができます。

メタサポキャンパス内では、アバターが自分の代わりとなってその空間を体験します。自分のアバターは、その日の気分で体型や服などを自由に選ぶことができ、印象を変化させることができます。また、コミュニケーションは、チャットや絵文字機能、音声機能(マイク機能)、リアクション機能(ジェスチャー機能)などを使います。

■メタサポキャンパス内

「メタサポキャンパス」内は、利用目的によっていくつかの部屋に分かれています。

スタートルーム
クッキングルーム
ムービールーム
ワークショップルーム

「メタサポキャンパス」は以下のような部屋で構成されています。

・メタサポキャンパス内で最も広いスペースで、イベントなどを行う「グリーティングルーム」

・時間割の提案をする「スタートルーム」

・学習動画を活用した自主学習が行える「スタディルーム」

・料理に関する情報が提示された「クッキングルーム」

・おすすめの映画を紹介し合う「ムービールーム」

・タイピングを行う「タイピングルーム」

・動画等を活用して調べ学習ができる「リサーチルーム」

・毎月1回、昭和女子大学の森さんのワークショップが開催される「ワークショップルーム」

また、スタディルームでは、「eboard」と「えひめ学習動画ライブラリ(中1の基礎基本)」の2種類の動画を使って学習が可能。「eboard」を利用する際、ログインをして学習を行うと、学習の進捗がメタっちとサポっちに共有され、その後、学校にも報告されます。ただ、ログインせずに学習を行うことも可能で、児童生徒に学習を強要するものではありません。

※学習の進捗を学校に報告した場合も、それが指導要録上の出席扱いになるかどうかは各学校の判断に任されています。

■自分の存在・居場所を感じられる場所

メタっちの坪田さん(左)とサポっちの長谷部さん(右)

利用する児童生徒が、「メタサポキャンパス」で所属感を感じられるような工夫がたくさん施されています。
「グリーティングルーム」では、児童生徒が活動を行った際のアバターの写真を飾ったり、「楽器の達人とスポーツの達人、どっちの達人になりたいか?」といった簡単なアンケートを行い、集計結果を掲載したりするなど、自分の意見が反映される「場」の工夫をしています。こういった、存在を認めてもらえる機会を増やすことで、「メタサポキャンパス」に所属しているという意識を児童生徒は持つことができます。また、学生サポーターとの交流を通して、他者とのコミュニケーションを行う場面も増やしています。

また、開設したばかりの「メタサポキャンパス」が、より良いものになるために、日々のアップデートも欠かしません。
「スタートルーム」で提案される、「時間割」は児童生徒の声をきっかけに生まれたものだといいます。
「『メタサポキャンパスに来たけど、何をすればいいか分かりません。』という子どもたちの声を聞いて、時間割を提案することにしました。しかし、『これをしなくてはいけません』というものではありません。やるかやらないかはあくまで自由です」と坪田さん。
さらに、「すごく料理の得意な子がいて、その子が作ったお菓子の写真をクッキングルームに飾れないかと相談しています。そうやって、自信をつけたり、ここを自分の居場所のように思ってくれたりすると思っています」と長谷部さんは言います。

■今後の展望

「リサーチルーム」では、砥部焼の体験活動の動画を通して、家族の会話や実際に出かけるきっかけにつながる工夫もされています。「メタサポキャンパス」での活動が次のステップに繋がるきっかけになるような工夫も。
さらに、「メタサポキャンパス」には、「家族以外の大人が自分のことを見守ってくれている」という安心感があると保護者の方々からの意見もあると言います。
「7月に利用していた中学生で、『メタサポキャンパス』を通して、自分でやっぱり高校に進学したいという目標を抱き、自らの意思で学校へ復帰した生徒が2人います。学校復帰だけがゴールなのではなく、その子が今後どうしたいかについて一緒に考えてくれる『人』と『場』がここにある。メタサポキャンパスがこのような存在になって展開していくといいと思っています」と坪田さんは話します。
また、長谷部さんは「基本的には子どもたちが望みを叶えられるようサポートすることが一番大切だと思います。私たちから子どもたちに会いにいくことはできないので、『メタサポキャンパス』に来てくれた子どもたちに提案はできるけど、最後に決めるのは子どもたちです。そういった意味でも、キャンパス内がより充実したものになるよう子どもたちの意見を取り入れていきたいと思います」と続けます。

最後に、児童生徒が学校に登校しない理由はそれぞれ。「メタサポキャンパス」は、児童生徒の気持ちを優先することを最も大切にしています。学校復帰だけがゴールでは決してありません。
児童生徒の夢や希望が叶えられるよう、オンラインを使った「メタサポキャンパス」のようなサポートが今後もきっと拡大していくことでしょう。


愛媛県教育支援センター 指導主事 坪田 朋也さん

「これまで、県内の小・中学校や特別支援学校、松山市内の適応指導教室で勤務してきました。中学校では生徒指導主事や校内サポートルーム設置校の登校ナビゲーターとして、子どもたちの思いや願いを大切にしながら、関わらせていただきました。メタサポキャンパスを通じて、子どもたちと一緒に『自立に向けた小さな一歩』が踏み出せるよう、共に成長できればと思います!」

愛媛県教育支援センター 指導主事 長谷部 真由美さん

「西条市の中学校で国語科の教員として子どもたちと関わらせていただきました。学級担任として、『学級が安心できる一人一人の居場所づくりや活躍できる学級経営』を心掛けてきました。また、校内サポートルーム設置校の登校ナビゲーターとして学校や教室に行きづらい子どもたちと関わってきました。メタサポキャンパスにおいても、子どもたちの気持ちに常に寄り添い、個性を引き出せるように支援していければと思います!」

連絡先:愛媛県教育支援センター
「メタサポキャンパス」についてもっと知りたい方はこちらにご連絡ください。→ 愛媛県教育支援センター 089-963-3113(内線:126)


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