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北明翰留学日記 #13 ー伏線の回収ー

デンマークに流れるゆったりとした時間のなかで,好きな哲学者の話,これまで読んだ本の話,人生とコーチングの話をしていたら,不思議な幸福感で胸がいっぱいになっていた.人と違う前提で生きていることが当たり前のなかで,同じものを知っていて,前置きなく話せることの貴重さを思う.違っているのが当たり前だからこそ,共通してわかるものがあったときの喜びは大きい.

デンマークの滞在は4泊(到着したのが深夜だったので実質3泊といってもよい)と短かったものの,自分で行き先を決め自分の足で歩く満足感は大きく,他人事でない時間を過ごすことができて素晴らしかった.コペンハーゲンを発って,フランクフルトへ向かう飛行機の中から見えたÖresundsbron,あれはビーチを歩いた時に見えた橋だな,と妙な懐かしさを覚えているうちに,すぐコペンハーゲンは見えなくなってしまった.

フランクフルトは,初めて海外旅行をしたときに一度乗り継ぎで使ったことがある.飛行機の到着が遅れたので空港の中を慌てて走って,やっとゲートに着いた時は他の乗客は搭乗したあと,それでも係員の人がにこやかに迎えてくれた記憶がある.今はそこに大学時代の友人が仕事で住んでいる.

フランクフルトに着いて少し落ち着いたらもう夕方になってしまったので,近くの大聖堂に出かけた.一見してゴシック様式の立派な聖堂である.中に入るとオルガニストがパイプオルガンを演奏している.壁のいたるところにキリストが十字架を担ってゴルゴタの丘へ向かう絵が書かれており,中央にはキリストが磔にされた大きな十字架がかかっている.

私自身は今でも信仰は持たないものの,中高がミッションスクールだったために,敬虔な信仰を持つということがどれほどひたむきで力強いことであるかは知っている.長年人々の思いを受け止め続けたキリスト像もまた力強く心を揺さぶるようである.私は何一つ拒まれることなくそこにいて,ただパイプオルガンの音色を聞いていた.

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