「なう」は接尾辞だけなのか?
写真は「孤独な鵜」です。意図はありません,きっと。
Twitterでは10年ぐらい前から「なう」を文末などに付けて「〜してる最中」ということを表します。この表現の言語学的な分析については我らが田川さんがやはり書いてくれていました。
この記事では「なう」を「ている」のようなアスペクトの意味を持つ接尾辞として分析していました。接尾辞は「-ている」や「青さ」の「-さ」のように何かの後ろ(尾)にくっつく言葉になります。僕も見ていてそうだよねえと思っていたけど,ちょっと気になる使い方があったので,メモ代わりに。
ただ僕は文法方面に弱い(ザ・マミィのネタのように文法を無視した文を話すという意味ではない)うえにろくに文献を調べてないのでけっこう大きな勘違いがあるかもしれません。ちなみにザ・マミィのネタの例は以下のツイートにあります。これはこれで分析してみたくなる面白さでした。
ちょっとだけ追記があります(2021/01/02,18:29)
「なう」の使い方(今さらパート)
「なう」には「行くなう」のように動詞に「なう」が付いた表現があり,その他に「国会なう」のように場所名詞に「なう」が付いた表現もあります。
いずれにせよ,これは接尾辞の一種で「今」「中」「ている」の仲間(置き換え可能な表現)として分析されています。
「なう」の前に助詞!?
ところが,先日あるところで「なう」の前に「場所名詞+に」のように助詞「に」を伴うものを見つけました(この投稿自体は鍵アカなので引用しません)。それで調べてみるとけっこうこれが出てきたのです。例えば下のツイートでは「海になう」と「に」を伴っています。
名詞に助詞を求めるのは動詞,形容詞などの述語の性質です。つまり,これらは「なう」が「いる」のような述語の仲間として使われていることになります。ただし,形として「なう」が変わることはないので「参加」のような漢語動名詞の仲間として考えるのが良さそうです。
変幻自在なう
ただ面白いのは「なう」はそれ自体が決まった助詞を求めるわけではないところです。例えば次のように「〜を」を求めることもあります。
これは「食べている」を置き換えたものと考えることができます。しかし,他の動詞の置き換えもできます。
結論は出てません
もっともこういった「を」を伴う用例は単純に「する(している)」のような動詞一般の形を置き換えたものかもしれません。
ただいずれにせよ,「なう」は接尾辞の他にも用言(動詞,形容詞,形容動詞)のように単独で述語として使えることもあるようなので,もう少し用例を集めると同時に,何らかの形で質問紙調査などもやってみたいように思います。あと,私自身がこの辺のことが勉強不足なのでそちらもですね,はい…
追記:用例の適切さをどうするの?
こういったSNSでの表現は予測変換による打ち間違えということはありますね。実際,助詞+なうの用例はだいぶ少ないです。SNSでの数の大小を測るのはAPIを使わないと難しいところがありますが,ツイート間の時間を見ると擬似的にですが見ることができます。
例えば「駅なう」は数分間隔ですが,「駅になう」は数日〜数か月間隔になります(ところで「〜駅になうな人」というのもこれが形容動詞的になってるという意味で今回の話と関わるかもしれませんね)。なお同じことは「山なう」と「山になう」など他の場所名詞でも言えます。
もしくはSNSならではというべきでしょうか,ちょっと表現効果を出すためにあえて使ったという可能性もあります。こういった可能性を排除できるのかも考えないといけません。
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