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『せかいのうまれたひ』


さいしょのおはなし


いまからずっと とおい むかしのはなし。
せかいがまだつめたかったころ。
まっくらやみのせかいに いちまいのおおきなうつわがありました。

くらいのがさみしかったせかいは
ひかりをもとめて いっぽんのろうそくをたてました。
あかりがつくのを まちます。

せんねんほど まったでしょうか。
ふっと あたたかな かぜがふき
ついにろうそくにあかりがともりました。
せかいは あたたかなひかりを てにしたのです。

とけたろうは したにながれてゆき
やがてうみへとかわり
あかりをはなつ ともしびは そらをおおきくひろげました。

こうして わたしたちのすむ せかいが
うまれたのです。


まんなかのおはなし



せかいが できて しばらくは
うつわのほうは うすぐらいままでした。
おなじだけ あたたかなひかりをとどけたいとおもったせかいは
ともしびを ごかい つよくかがやかせます。

おなじつよさのひかりよっつは うみのうえに。
ひときわつよいひかりひとつは うつわに とどけられます。

よっつのひかりは うみにおち
だいちをつくりあげました。
とけたろうのうみがかたまってできた よっつのくに
わたしたちのすむ めるとろーたいりくのはじまりです。

ひかりがおちた ちゅうしんには まもりがみがいます

はなのへび
とりのりゅう
かぜのきつね
つきのおおかみ 

まもりがみは じぶんのすむばしょを もっとにぎやかにしたいとかんがえ
じぶんいがいの そんざいを うみだすことにします。

さいしょに うまれたのは よにんのおうさま。
まもりがみにかわって これからつくりあげるくにを みちびくよう おねがいしました。

まもりがみはつぎつぎに どうぶつや しょくぶつを うみだし
よっつのくには どんどんにぎやかになっていきました。

やがて いきものは まもりがみのたすけなしで  いきることかできるようにります。
まもりがみは たくさんがんばったので ゆっくりやすむことにしました。

わたしたちのまえにすがたをあらわさなくなっても このよんたいは せかいのうまれたひからずっとわたしたちのくにを みまもってくれています。


したのおはなし


うつわは うみにしずんでいましたが
ひときわつよいひかりがとどけられると うみがよけ
おおきなくうどうが できあがりました。

つよいひかりは うつわのちゅうしん ろうそくのねもとに おち
たくさんのいきものを うみだしていきます。

さいしょに うまれたのは ちていさま
ちていさまは いのちをおえたものたちが つぎのたびがはじまるまで やすらげるように
ろうそくのねもとで おきゃくさまを もてなすよう
やくめをあたえられました。

つよいひかりは まんなかのまもりがみのように きまった かたちをなすことはなく
ひかりのまま したのうつわを てらしつづけています。

だれでも いつかは ろうそくのねもとに
いくことになります。
ねもとは いきばをなくした ものたちの かえるところ
ちていさまが あなたをむかえいれてくれるでしょう。


うえのおはなし

ろうそくのてっぺん もっとも つよくかがやく ひかり
ひかりは そらをどこまでも どこまでも ひろく 
とおく ひろげていきました。

はてのない そらうみは てんていさまがみまもってくれています。
てんていさまは ちていさまとおなじように つよいひかりのなかから うまれ
うつわで じゅうぶんなきゅうそくをとった いのちをちらしたたびびとを
つぎの いのちに うまれかわらせる やくめを
ひかりからあたえられました。

てっぺんのひかりは わけたひかりとは ちがって
てんていさまいがいに いきものを うみだすことはありませんでした。

かわりに のぞむちしきやどうぐを てんていさまにもたらしてくれたので
てんていさまが じぶんで いっしょに そらうみをまもる そんざいを くみたてていきます。

そのため そらうみには いしをもつ きかい が たくさんすむようになりました。


おわりに

せかいのはじまり まんなかにたつ おおきなろうそく

おおきなうつわが せかいをささえ
しんは いのちを はぐくみ
ともしびは すべてをてらす

だれがよびはじめたか ろうそくは 
せかいの いきものたちに こうよばれるようになりました。

ともしびを たずさえた げんしょの とう
『きょしょくのとう』と。










本に挟まれていた文字いっぱいの紙

著者:不明
制作年月:不明

中層月の国、放置された遺跡から発見された絵本。
さいしょのおはなしと、まんなかのおはなしに関しては中層にすむ者であれば誰もが聞いたことのある有名なおとぎ話ではあるが、驚くべきことに親から子へ口伝のみで伝えられてきていた。
これが見つかるまでだれも元になった本を目にしたことがなかったのにここまで広まるものだろうか?もちろん私も母から聞いている。融けた蝋が海になるものだろうかと、子供ながらに疑問に思っていたものだ。

これはようやく本の形で見つかった最古の資料だ。
今は使われていない言語であったが、保存状態もよく絵もついているため、発見後すぐに解読が終了した。この本が古代文字解読のヒントとなり、遺跡の解読も進められている。絵本とはいえ、古代文字研究分野において大きな進歩をもたらした大変貴重な資料である。
中層が最も詳細に書かれていることや、まんなかのおはなしの『わたしたちのすむ めるとろーたいりくのはじまりです。』という記述から、中層の何者かがこの話を書いたと思われる。

世界の誕生した神話が語られる書物は10歳前後の子供向けに書かれたであろうこの絵本のみで、学術者が分析したような詳細な書物は今のところ見つかっていない。

何故だ?


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