分析する時の切り口について
考えることを仕事としている人たちにとって、分析するということは非常に重要かつ切っても切り離せない思考方法だろう。
僕らは学生時代に様々な勉強をしているおかげで、分析することには慣れている。例えば、今言った勉強という話を例にすると、僕は勉強ができないというのではなくて、英語と国語はできるのだが、数学と理科ができないみたいな風に、自分の現状に対して、勉強という漠然としたモノではなく、教科という切り口で分けて分析した上で、課題を認識しているのである。
学生のうちなら、こういった分析は世の中にすでにある切り口で考えればよかった。しかしながら、考えることでお金をもらう我々は世の中にすでにある切り口で分析すること事態には付加価値がほとんど付かなくなってきた。
正直、先ほどの教科ごとの分析であれば簡単なデータベースだけ構築して、それをアップデートして、ビジネスインテリジェンスツールに繋げば、かなりグラフィカルでより学力向上にむけた分析を簡単にすることができるのが現代である。テクノロジーの進歩によって、美しい分析が1時間もかからないうちに出来上がるだろう。これ自体には正直付加価値がほとんどつかないのは当然である。現代のビジネスマンであれば10年前のエクセルやパワポ程度に相当する当然の知識であるからだ。
では、現代の考える仕事をしている人の価値とは何にあるのかと言えば、分析においては、それはそもそもの切り口を決めることである。勉強を分析する際に、教科という切り口なのか、記憶や応用という切り口なのか、勉強方法という切り口なのか色々考えられる。目的を意識した上で最適な分析の切り口を考えて、目的達成のための課題を割り出し、解決につなげることをしなくてはならない。
当たり前を外す
人間というのはいろいろな当たり前を持っているので、そういった物を外した上で感情を排除した思考をする必要がある。こういったことを可能にするには一朝一夕には行かないが、分析という作業・仕事が世の中に大きな影響を与えるきっかけにもなりうる所以でもある。
まず僕らが気にしなくてはならないのは、当たり前という枠組みを外して全体像を分析するということである。
例えば、地球温暖化の問題がある。これについて考えてみたい。
地球温暖化と言えば、みんな二酸化炭素の排出を削減しよう、冷房の温度をあげようとか、できるだけ車は乗らず公共交通機関を使おうとかという思考になっている。
しかし、分析思考で考えた時に、地球温暖化の原因というのは人間の作り出す二酸化炭素のみではないことを明らかにする。
実際には、温室効果ガスの半分は二酸化炭素ではないし、二酸化炭素においては、ほとんどが人間が排出したものではなく、自然が排出したものなのだ。
ここで地球温暖化を食い止めるという目的があるのであれば、自然が排出している二酸化炭素を削減する方法という選択肢もあるはずである。にもかかわらず、京都会議のような国際的な会合であっても話し合われるのは人間の二酸化炭素排出を削減しようという話ばかりである。
ここまでみてきた通り、分析をする上で、当たり前の枠組みを外して、全体像から、それぞれの要素を分解して考えることによって、実は重要でないところばかりに力を注いでいて、実際は全く違う部分で簡単に問題が解決することも可能なのである。
地球温暖化の話については、専門家ではないので問題解決に本当につながるかはわからないが、少なくとも今話されている以外にもかなり大きな論点があることが全体像で考えるだけで広がることがわかっていただけたと思う。
だいたい人が悩みや課題を抱えている時は、その部分に集中しすぎていて全体像が見えなくなってしまっているので、全体で考える習慣が思わぬところで解決をもたらしてくれることは多い。
目的に適合した切り口を選択する
例えば、自社の車の販売台数が下がっているという問題があったとして、他社との比較分析をしようとした時に、どういった切り口で考えるべきなのか。
よくある切り方というのは、顧客の年齢や性別、地域によってどういった違いがあるのかということが行われる。
それで例えば自社の製品は40代以上に売れていて、他社は30代がメインの顧客であるとなった時に、30代への訴求をもっとしようというが、すでに打てる施策は特にないような状態だったとする。
こうなったとしたら、自社の製品の販売台数を増やすことが目的という視点で考えた時に、この分析の切り口は意味がない。無駄な作業である。確かに、その状況や特徴を示しており、好奇心を満たすものにはなるかもしれないが、目的を達成しなくては何の意味もない。
例えば、この時は分析の切り口として、車の保有台数という物を置いたとして、自社の製品は2台目以降の保有として人気があり、競合は1台目としての保有がメインということがわかったとする。であれば、なにかしら特定の目的の部分が気に入られて、2台目以降の保有車として人気があるのかもしれない。さらなる調査をすることによって、強みを打ち出したプロモーションと機能改善によって、確固たるポジションにつなげることが可能かもしれない。
このように教科書的な分析も役に立つことも多いし、面白い示唆を与えてくれる。しかしながら、本当に目的を達成する分析になるのかと言えば、そんな簡単には物事が進まないことが多い。目的を意識した上で、どういった切り口で分析することが、最も効果的な施策につながっていくのかということを意識・考え、はっきりとさせることが、分析を仕事とする人の本領と言えるだろう。
2軸で分析する
経営コンサルタントという人種はすぐに2軸を引いて、4象限の絵を書き出す。
そしてそこに分析対象となるものをプロットする。
これはなぜかというと、
人間は2つのことまでは同時に考えることができる。3つのことになると難しくなるということ。あとは、義務教育でX軸Y軸で思考することは誰しもが慣れているので、相手に理解してもらいやすい。ということもある。
これに加えて、軸が1つだけの分析は概して、重要な観点が抜けもれてしまうことが多い。
例えば、誰を管理者として昇進させるのかと言った時によく起こる。昇進の軸として優秀さという漠然とした軸だけで判断した時に、優秀な人だったのに全く管理できないでマネジメントがうまくいかなくなった組織がよくある。
技術者がいたとして彼の技術力やタスク処理能力は非常に高く、周りの上司から信用を受けていてかなり優秀だったとしても、管理者としての昇進軸はそういったタスク処理能力、技術力ではなく部下からの人望だったり、面倒見だったり、その軸が大事だったりする。にもかかわらず軸を漠然としたがために、本人にとっても会社にとっても損をさせてしまうというようなことが起きてたのだ。人事コンサルタントとして心苦しい限りである。
ここでは、個人スキルとチームワークスキルという2軸に分けて、候補者をプロットしていく方法を考えることができるだろう。組織ごとにその組織の管理者にとって最も大事な軸を考え抜き、社員をプロットすることによって失敗のない、結果を得ることができる。
最後に
分析という作業は、テクノロジーによってかなりの部分が簡単にできるようになってきた。Rのような統計に特化したプログラム言語や、Tableauのようなビジネスインテリジェンスツール、もはやレガシーのような扱いになっているエクセルも自由度高く分析ができるので未だに使い道は多い。
しかしながら上記まででみてきた通り、これらのツールを使用する前の、分析を実際に実施する前の分析の下準備作業のようなところが最も分析においては重要な部分であり、作業自体についてはツールによって非常に簡単にできるようになったからこそ、この上流の分析の根幹となる部分の思考がより重要である。この部分についてはテクノロジーの発展では代替できない人間の脳みそに汗をかかせることでしか実現できない。
分析を通して世の中の問題の構造を明らかにして、問題を解消していく道を開くことが我々、思考するプロフェッショナルの役割である。それを忘れず、分析軸を切ることによって、より良い社会を切り開きたいものだ。
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