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【2024年目標】最小限の費用で合格するロードマップ【司法試験予備試験・勉強法】

はじめに

この記事では、”私が勉強初期に戻れるならこれを使ってこういうふうに勉強する”というテーマで、教材・勉強方法をご紹介します。

ベストなのは、予備校で講座を一式揃えることかもしれません。しかし、それには莫大な費用がかかります。私もそれが嫌で、予備校の活用は最小限にとどめていました。
そのような私の経験を軸にしつつ、無駄を削ぎ落とし、また必要なものは加えるといった形で記事にします。

あまりお金をかけずにコスパよく合格したい!という方にはぜひご一読いただければと思います。


基本的な方針

▼合格に必要なこと
・口述合格のために…
 →論文合格に必要な知識+アウトプットの練習
・論文合格のために…
 →基礎知識の習得+型の習得+アウトプットの練習
・短答合格のために…
 →基礎知識の習得+短答プロパーの知識の習得

こうしてみると、勉強の基本方針としては、基礎知識の習得を中心とした論文対策を軸としながらも、時期に応じて適切に短答または口述対策をすることになります。

勉強開始時期を10月として、モデルプランを下記に提示します。

論文対策

大まかな流れ

全科目共通で、『伊藤塾呉明植基礎本シリーズ』(いわゆる基礎本)を使用して基礎知識のインプットをします。
まだ発売されていない行政法については、『基本行政法』、会社法については、高橋ほか『会社法』(いわゆる紅白本)、民事訴訟法については、『有斐閣ストゥディア 民事訴訟法』で代用しましょう。

(なお、行政法については、金銭的余裕があれば『有斐閣ストゥディア 行政法』を読んだ後に後述の問題集を使い、疑問点があったときに『基本行政法』で調べる方法がおすすめです。)

基礎本を読む中で一区切りついたら、読んだ部分に対応する箇所について短答の過去問(教材は後述)を解いて脳への定着を促します。

1つの科目の基礎本を1周できたら、続いて次の科目の基礎本を読み始めながらも、それと並行してすでに読み終えた科目の問題集(以下で紹介)を解いていきます。また、適宜各科目の型を学習(後述)します。

年内で全科目の基礎本を1周できれば、スムーズに論文対策を進めることができると思います。

過去問について

問題集を3周程度し終わった段階で、予備試験の過去問を実際に本番と同じように解くこと(起案)を徐々に始めて行ってください。いくら型や処理手順を頭に叩き込んでも、実際に過去問を書いてみないと、いつまで経っても本番で答案を書く力は身につかないからです。

その際には、ネット上の再現答案を参考にすることも考えられますが、個人的にはStudyweb5さんのウェブサイト上にある解答例を参考にするのがおすすめです。
必要最低限の文字数で答案が書かれているためです。本番では試験時間がタイトであるため、必要最小限の分量で過不足なくアウトプットする力を磨くことは有益です。

なお、過去問を解く目的は、前述の通り本番で答案を書く力(アウトプット力)をつけることにあります。
過去問と全く同じ問題が出題されることはおよそあり得ないので、過去問の後追いにならないように注意する必要があります。

問題集の解き方

▼問題集の目的
当該問題集を完璧にすることで、予備試験で出題されうる問題に対応できる知識や頭の使い方を身につける

▼周回目安・期限
論文式試験本番(来年の9月)までに、3〜8周程度(解き方により変動)回すことを想定

▼1周目の解き方
⚪︎目標:論文式の問題に慣れる
まず問題を読み、六法と基礎本を使いながらなんとか自分の力で解けないか検討してみます。ただし、正解できないことが前提ですので、あまり時間をかけなくて大丈夫です。基礎本の復習程度に考えていただけるとちょうどいいかと思います。

次に答え(解説)を読んだ上で、参考答案を1段落ごとに一言で要約します(紙やwordに書き出しても脳内で済ませてもOK)。要約を終えた段階で、何も見ずに参考答案と似たものを再現できるような答案構成を作り上げるイメージです。

*参考答案の無い問題集については、ネット上で参考答案を探す、答案の型を別途勉強した上で、基礎本等をカンニングしながら一度自分で回答を作る等の方法が考えられます。

このときに意識すべきは、答案がどのような構造から成立しているのか、その段落は前後の段落とどのような関係・意味を有するのか、ということです。

▼2周目以降の解き方
⚪︎目標:典型的な事例について、処理方法をパターン化し頭に叩き込む
2周目以降は、基礎本は使わずに、六法のみで答案構成をします。
ただし、論証(詳しくは後述)については直前期に暗記すれば良いので、論証集をカンニングしてもOKです。

また、2周目以降は解いた問題に○、△、×でマーキングをします。論点抽出も答案の流れもあてはめ方も完璧にできたものは○、いずれかが欠けていれば△、何を問われているのかすらわからなかったものは×にします。
論文式試験本番が近づいてきたら、○の問題は飛ばすことで効率よく学習できるようにするためです。

ある程度勉強が進むと、論点の抽出がスムーズにできるようになってくると思います。
その段階に到達したら、論点を抽出するだけでなく、どういう流れで当該論点が問題になるのか、そして問題文のどの事実をどうやって使うのか、というところまで考えることが有効です。

問題集

いずれの科目も、できればアガルートの「重要問題習得講座」を購入してこれを軸となる問題集にするのが一番効率がいいと考えています。
もっとも、この記事では最低限の費用で合格することを目的としているため、「重要問題習得講座」に代わる問題集を下記では紹介します。

  • 憲法

    • 合格思考憲法
      これを軸に答案の書き方・考え方を学ぶ。後半に載っている問題の参考答案を再現できるようなるまで繰り返す。

    • 憲法ガール』(余裕があれば)
      基礎本で学習した判例をどのように使うかを学ぶ。司法試験の過去問を解説する形の本なのでレベルが高い。他の勉強が進んでいなければ、そちらを優先する。

  • 行政法

    • 基礎演習行政法
      これと予備試験過去問を軸に、行政法の事例問題の考え方を抑える。

    • 行政法解釈の技法

    • 基本行政法判例演習
      行政法に関しては、判例のロジックを押さえた上でアウトプットの練習をするのが効率いい。
      「行政法解釈の技法」には予備試験の過去問と答案例が載っているため、これを使ってアウトプットの練習をする。
      「基本行政法判例演習」には重要な判例と関連問題が載っているため、これを使って未知の問題に立ち向かうために必要な知識・考え方を学ぶ。

    • (『事例研究行政法』)
      予備試験過去問を起案用に残しておきたい場合は、代わりに事例研究行政法を基礎問題集として使う。
      若干レベルが高かったりするのでおすすめはしない。直近の過去問だけ起案用に残し、それ以外の過去問を基礎問題集として使うのがいいと思う。

  • 民法

    • Law Practice 民法 I〜III
      答案の書き方については、ネットに転がっている参考答案を使うか、民法の答案の基本的な型(後述)を身につけた上で、自分だったらどのように書くかという観点から一度答案を作ってみるのがいい(Wordでも可)。

  • 商法

    • Law Practice 商法
      民法と同じ
      商法については基本的知識+細かい条文知識で勝負が決まるため、Law practiceを完璧にした上で短答対策もきちんと行えば十分に戦える実力がつく。

  • 民事訴訟法

    • Law Practice 民事訴訟法
      民法と同じ
      民事訴訟法については、原理原則を念頭においた応用問題が出題されることが多いが、応用部分について適切に回答できる受験生は多くない。
      したがって、原理原則を完璧にしておくことが大事となる。

    • ロジカル演習 民事訴訟法』
      Law practiceかロジカルのいずれかを軸にする。ロジカル演習だと参考答案がついてる分使いやすいかも。

    • 読解民事訴訟法
      問題集ではなく参考書であるが、上記で身につけた原理原則について勘違いをしていないかチェックし、また試験で戦いうるレベルまで理解を深めるために、一度は読んでおく。

  • 刑法

    • 刑法事例演習教材
      そこそこの網羅性があり、司法試験委員の先生が問題を作っていることから予備・司法対策としてこれほどぴったりな問題集は他に無い。
      難易度としてはやや難し目ではあるが、これに慣れれば予備試験は余裕。
      解答例については、法律解釈の手筋(高木さん)のもの(無料)を参考にすることが考えられる。ただし、高木さんの答案の書き方には少しクセがあるので、人によっては別途答案の型を抑える必要があるかもしれない。
      また、共犯・正当防衛らへんについては、副読書として『刑法総論の悩みどころ』を参照しながら学習するといい(必須ではない)。同じ著者の本なので理解が進む。

  • 刑事訴訟法

    • 予備試験過去問
      刑事訴訟法については予備試験の過去問を軸として問題演習をすることを強く勧めたい。

    • 事例演習刑事訴訟法
      論点の網羅性がある程度あることから、予備試験過去問だけじゃカバーできない論点が無いか確認するために使うといい。
      学説相互関係の複雑性ゆえに通読すると混乱する可能性が高いため、あくまで穴を埋めるための本として使う。

答案の型について

予備試験・司法試験においては、答案を適切な構造で書き上げる必要があります。この「適切な構造」を、一般的に「答案の型」と読んだりします。
答案の型は、参考答案や再現答案を読んでいる中でなんとなく書き方のパターンのようなものが見えてきて、参考にして抑える受験生が多いと思います。
しかし、それでは効率が悪いですし、答案や一般的な文章の読み方には個人差があります。
そこで、答案の型について解説したNoteを今後書きますので、ご参考いただければ幸いです。もうしばらくお待ちください。

論証について

本番で論文の答案を書けるようになるためには、判例の規範(公式)を覚える必要があります。判例の規範と、それを導く理由づけを合わせて、「論証」と呼びます。したがって、論文対策にあたっては論証を覚えることになります。

▼覚え方
Ankiを使って覚えるのが効率いいです。
詳しくは下記のNoteをご覧ください。https://note.com/ydimpact/n/n508a3c9dd370

▼教材
憲法については、前述の『合格思考憲法』の前半部分を頭に入れます。
行政法については、『趣旨規範ハンドブック 公法系』を使うことが考えられます。もっとも、覚えるべき事項が少ない科目ですので、前述の問題集等を使いながら必要な部分をWord等で自分でまとめることで足りると思います。
その他の科目については、市販のアガルート論証集がおすすめです。網羅性抜群です。

添削の要否について

自分で問題を解いてフルで答案を書いたとき、これを誰かに添削してもらうことは有効なのは当たり前だと思いますが、必ずしも添削を受ける必要があるのか疑問に思う方がいらっしゃると思います。

この点については、「必ずしも全ての答案について添削を受ける必要はないが、最低でも2・3回は添削を受けるべき」というのが私見です。

答案の書き方について、自分では気づかない部分を添削者に指摘してもらうことが有益であるため、何回か添削を受けるべきだと考えます。
他方で、添削者は司法試験委員ではないので、添削を受けることにより得られるメリットは上記の点に尽きます。
したがって、短期間のうちに何回も添削を受ける必要はない(添削で指摘されたことができているかどうかは自分でチェックできるはず)です。

実務基礎科目の対策について

7科目全てについて基礎本を1周し終えた段階で、実務基礎科目の対策を始めます。実務基礎科目は、予備試験論文式試験において2科目分の配点があるため、合格との観点で極めて重要なものになります。

実務基礎科目の勉強をこの段階で始めるメリットは以下の2つがあります。
①民法・民事訴訟法、刑法の論文に活きる
②民事訴訟法・刑事訴訟法の短答が得意になる

①については、要件事実的な思考や、請求原因・抗弁を意識した答案構成をすることができるようになるため、民法で検討漏れすることが少なくなります。
また、民事訴訟法における特定の論点(既判力関連、補助参加らへんなど)は、要件事実の理解が無いと適切に処理することができない可能性が高いため、これらの論点の処理能力に直結します。
刑法については、予備試験・司法試験ともにさまざまな結論がありうる問題が出題されるため、説得力のある当てはめをするために、実務基礎科目で学事実認定の考え方が役立ちます。

②については、単純に実務基礎科目対策を通して手続き面について学ぶことになるところ、これらの科目の短答では手続き的な知識が直接問われるからです。

実務基礎科目の対策にあたっては、以下の教材を使いながら、予備試験の過去問を通してアウトプットを積むことになります。
ただし、過去問については短答式試験を終えてから着手しても遅くはないので、適宜自分のペースで進めると良いと思います。

選択科目について

実務基礎科目と同じくらいのタイミングで、選択科目についても着手する必要があります。
私は租税法を選択しており、他の科目についてどのように対策すべきかは存じ上げないため、適宜他の方のNoteやブログを参照してください。

短答対策

時期

短答は意外と難しく量も多いため、それなりに勉強しなければなりません。もっとも、一般教養の点数次第では、法律科目をあまり勉強せずに間に合うケースもあります。

そこで、一度法務省のサイトで公開されている一般教養の過去問を解いてみて、どれくらいの点数が取れるかテストしてみてください。
目安としては、以下の通りで考えるとちょうどいいかと思います。

・35点以上:短答本番の2〜3ヶ月前から短答対策を始める
・35点未満:短答本番の5ヶ月前から短答対策を始める(2〜3ヶ月前までは論文対策を並行)
・20点未満:短答本番の7ヶ月前から短答対策を始める(5ヶ月前までは全体の勉強時間の4分の1程度でOK)

勉強のやり方

過去問を使い、選択肢ごとに1つの独立した問題として捉えて解いていきます。教材は『短答過去問パーフェクト』が定番ですが、『肢別本』でも大丈夫です。
ちなみに、法改正や判例変更がない限りは、1・2年古い年度の教材でも問題ないです。

結論が合っていて、かつ理由もわかっている場合には、○でマーキングします。
結論が合っていて、理由も想像つくが自信がなかった場合には、△でマーキングします。
それ以外は×でマーキングします。

2周目は、もう一度通しで全ての問題を解きます。その際に1周目と同様にマーキングします。
3周目以降は、2回連続で○がついた問題は飛ばします。

直前期

直前期には、×がついてる問題のみを回します。さらに、再度間違えた問題については、別途Word等にまとめて試験本番の休み時間に見直せるようにします。

加えて、一般教養で35点以上取れない方は、法律科目でそれなりの点数を稼ぐ必要がありますが、過去問で得られる知識のみではなかなかこれが難しかったりします。そこで、条文知識を抑える必要が生まれます。
とりわけ、憲法(統治)・行政法・民法・民事訴訟法・刑事訴訟法については条文の素読がかなり有効なため、直前期は条文を読む時間も設けます。
中でも民法については、過去問未出題の問題については、大体条文知識であることが多いため、条文を抑えるだけで高得点(25点以上)が期待できます。

口述対策

結論として、対策を始める時期は論文式試験の合格発表があってからで十分間に合います。
ただし、論文の段階で用件事実に苦手意識があった/民事実務基礎が苦手なまま合格できた方は、1日1時間弱でも良いので論文試験後からコツコツ勉強すると安心できます。

大まかな流れ

合格発表直後に各予備校が口述模試の参加者を募集し始めるのでこれに申し込み、模試をペースメーカーとして勉強します。

また、過去問を使って実際に声を出して練習します(聞かれたことに対して頭の中で整理しながら声に出して回答するのには慣れが必要なため)。
周りに法曹志望の友達がいればその人に、いなければ家族や友人でも構わないので、練習相手になってもらいます。実際にアウトプットの練習をすることに価値があるので、後者でも十分意味があります。

口述の再現を見ていると、合格者と不合格者で大差がなく不安に思うはずです。
しかし、口述試験では、法律の知識はもちろんのこと、受け答えの姿勢(コミュ力)も問われており、得点に影響しているのではないかと推測されます。

本番で聞かれたことに対して答えが思いつかなかった場合でも、「あ〜それは◎◎◎に関する問題なので、◎◎◎で〜」みたいな感じで、頭の中に浮かんできたものをそのまま口に出して自分が最低限の理解を備えていることをアピールすることや、適切に受け答えすることができるかどうかで合否が決まると考えられます。

私も、本番の民事において自力で答えを出すことができなかった場面が多々あったものの、うまく受け答えをすることで試験官の方にたくさん誘導していただき、そこそこの点数を取ることができました。
そのため、実際に受け答えの練習をする重要性は極めて高いです。

過去問練習と並行して、インプットも進めます。

民事

民事については、アガルートの1問1答で問題化されている形式で口述試験も進むため、これを完璧にしましょう。
また、これや他の教材で詳しく言及はされていないけど論文で頻出の条文知識が問われたりもするため、軽く条文の確認もしておくと安心できます。

刑事

手続きについては、『刑事実務基礎の定石』を復習します。あとは短答知識でカバーできるはずですが、不安な方は『基本刑事訴訟法』も見てみると安心です。
刑法部分については、『基本刑法』を読んで知識をおさえます。とりわけ各論について、学説の争いがある論点が本番で問われることが多いため、判例・通説に加えて反対説の考え方もしっかり抑えます。
また、『基本刑法』には短めの設問が載っているため、これを使って誰かと受け答えの練習をすることも有効です。

終わりに

以上がモデルプランとなります。教材は少し違いますが、この記事に書かれているほとんどの部分は、私が予備試験に合格するにあたって実際にこなしてきた内容です。
何か質問等ありましたら、X(旧Twitter)上でご連絡ください!

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