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2008年 京都大学経済学部 論文試験 解答例

【自己紹介】

 私は、2016年(特色入試初年度)に京都大学経済学部に特色入試で入学しました。論文試験では500点中317点でした。これは(おそらく)この年度の最高得点になります。 
 推薦入試専門塾での勤務経験もあり、小論文カリキュラムを作成や、京都大学特色入試をはじめとした難関大学受験生の小論文指導経験があります。
TwitterID:@yc5sh4

【2008年論文試験概要】

 2008年論文試験は2016年以降実施されている特色入試の前身、論文入試の時代のものです。2016年の特色入試実施に当たって、サンプル問題としてHPに公開された年度でもあります。実際のところ、京都大学特色入試の傾向がよく表れており、過去問演習としてはもってこいだと思います。

 課題文[A]はV・E・フランクル「〈生きる意味〉を求めて」、[B]は鷲田清一『「聴く」ことの力―臨床哲学試論』から出題されました。

 課題文は著作権の観点から掲載しませんが、Twitterなどで相談してくだされば個別に対応させていただきます。そのほか、質問などもございましたらDMやリプライで対応させていただきます。

 今回2016年度の解答例を公開した記事のように解説やコメントはつけておりません。ご了承ください。

【設問】

設問1.[A]にもとづいて「意味の発見」はどのようにして行われるのか、を説明しなさい。句読点を含めて800字以内で解答すること。(90点)

設問2.[B]にもとづいて「観点変更」の意義について説明しなさい。句読点を含めて800字以内で解答すること。(90点)

設問3.[A][B]それぞれにおける「ホモ・パチエンス」の理解・評価を比較し、現代を生きる私たちに「ホモ・パチエンス」はなにを問いかけているか、を論じなさい。句読点を含めて1200字以内で解答すること。(120点)

【解答例】

設問1.[A]にもとづいて「意味の発見」はどのようにして行われるのか、を説明しなさい。句読点を含めて800字以内で解答すること。(90点)


 伝統として、伝えられる価値が消えつつある今日でも人は生きる意味を見出せる。なぜなら現実が具体的状況として、現れる限り、状況は唯一無二である。その意味もまた唯一無二だからである。そして意味は個人的発見に関わり、自分自身で探求、発見するものだ。意味を発見する機会は、瞬間の可能性であるがひとたび可能性を実現できれば、それは揺るぎない現実に転換することが出来る。意味の発見とは、この可能性を自覚することであり、自分の直面している状況に応じて現実を変えることだ。だから、意味のない人生は存在しない。意味の存在を理解する人は何かを創り出したり、何かをしたりすることで意味を発見することに慣れている。だが、重要なことは希望のない状況に犠牲者として直面しても人は意味を見出せることである。このような時には、人間の可能性の形を発見し、苦境を偉業に変えることが必要だ。自分の力で状況を変えられない時には自分自身を変え、成長することが求められる。そして苦しみの意味を発見できる。無条件に存在する意味への無条件の信頼によって、苦しみや死の中に意味を見出しうる。人生の意味はいかなる条件に関わりなく、すべての人が発見できる。条件によって意味の発見の難易は異なるが、いかなる条件においても意味の発見は可能だ。
 意味の可能性は階層構造をとる。苦しみを通じて見出された意味は仕事や愛の中に見出される意味は別の次元に属する。ホモ・サピエンスは成功は成功と失敗を両極とする座標上にあり、成功に意味を見出す。苦しみから意味を見出すホモ・パチエンスは意味の実現と絶望を両極とする座標軸にある。ホモ・サピエンスの失敗においても、ホモ・パチエンスは意味を実現し、自己を実現できるのである。


設問2.3は有料記事とさせていただきます。

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