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#12 Olivia Rodrigo 『GUTS』

こんにちは!
今回は、9月8日にリリースされたばかりのOlivia Rodrigoの2ndアルバム『GUTS』について書いていきたいと思います。

 いきなり安直な感想になってしまうが、彼女の書く歌詞は、とにかく本当に面白い。面白いというのは、興味深いというより、笑えるというか。(もちろん笑えるだけではないが)しかし、そのベースには、自らの不安や焦り、失敗、後悔、反省、社交不安や恋愛、ある人に対する恨み、嫉妬など、複数の感情や考えが感じられる。今年の2月に20歳を迎えた彼女の現在地がアルバムの軸としてあり、複数の感情や考えがアルバム12曲を通して描かれている。

皮肉っぽいとこもあり、こういう言葉を使って、こういう表現をするのかとか、様々なフレーズや表現を駆使して面白い歌詞を書くなと思いました。(もちろん笑える要素だけではないが)
 彼女の歌詞は、いろんな出来事の中で湧き起こる様々な感情、考えを、多くの皮肉やユーモア、メタファーなどを用いて表現している。
 おかしな例えだと思うが、映画で例えるならば、彼女の身の回りで起こる悲喜こもごもなできごとを、多くの皮肉やユーモア、メタファーを用いて描いたようなコメディ映画のようだと思う。笑える場面もあったり、真剣な場面もあったり。

 可憐なアコースティックギターのつま弾く音で始まる1曲目では、コーラスでかき乱される激しいエレキギターの音とともに性急な展開を迎える。その二つの部分が繰り返される構成で成り立つこの曲では、前者においては、いわゆる世間(アメリカ)一般からみて「気品と誠実さ」を兼ね備えた理想の女性像であるということを自ら誇示するような歌詞になっているのだが、後者においては、激しいギターサウンドの上で、「実際、私だって大変なんだ」というばかりに、現代社会の中で、周囲から求められる女性像のように振舞うことに対して、彼女なりに自らの心の中で対処しようとあがいている様子が描かれている。彼女も20歳になり、いわゆる「大人の女性」として、なおかつ、恐らく男性社会が作り上げたとも言える「理想の女性像」として振舞うことがより求められる年齢を迎えているという自覚があった上で、「私は完璧なアメリカの女性」であると自分にも言い聞かせているようで、言い切ることで周囲にアピールをしているとでもいえるようなだが、その反面、コーラス、ブリッジ辺りでは、その状況に対し抗いたい感情を抑えられず、「Ah〜」と叫ぶことで対処しているようだ。

 2ndシングル「bad idea right?」では、元恋人と関係を修復できるかもしれないという期待から喜びの面だけを描いてもいい場面ではあると思うが、元恋人の急な連絡に喜びは感じつつも猜疑心が生まれたり、意図せずとも友人についてしまった嘘をついていたことを考えたり、関係を修復できるかもしれないと内心期待しつつ、不安に足を取られたり迷ったり、最終的には、周囲に対して言い訳を押し通し、彼のところへたどり着くのだが、そこまでに彼女の頭の中で様々な考えが巡り、一筋縄ではいかない。この曲のアウトロでは、今作の制作時にアドバイスを求めたというジャック・ホワイトの演奏を彷彿とさせるようなギター?ソロが入っているが、そういった音色がポップソングに入ることも最近では珍しいことなのではとも思った。
 歌い方にもバリエーションが増えたことも注目すべき点だろう。「all american bitches」の前作にはない力強さを感じさせる太い歌声から、「lacy」の嫉妬深さを感じさせる声、「love is embarrassing」のとても耳に残るひょうきんな歌声、「pretty isn't pretty」(サウンドも最高)まで、歌い方を変化させることでよりエモーショナルな表現に繋がっている。

昨今マシンガンケリーやウィロー等、ポップロックなどの影響を受けたアーティストも見られるが、彼らの楽曲とは、楽器一つ一つの音色でも、また違った質感でいいなと思いました。


音楽面でも良くて、他にもたくさん語るべきところは多くあると思います。今年を代表する一枚になると思うので、ぜひ聞いてみてください。

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