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わがまま大口案件を取るべきか?

ビジネスをしていると、まとまった売上が期待できる、いわゆる「大口案件」の引き合いが来ることがあります。

これさえ取れれば、売上目標達成、ということも多いと思います。
ぜひ取りに行きたいところですが、本当にそれでいいのでしょうか?

大型イレギュラー案件は属人化の始まり

結論としては、条件付きだと思います。
イレギュラーな注文がないこと。許容範囲であること。

他の顧客と違う注文を引き受けてしまい、特別対応が多く発生してしまうと、案件専任社員が発生します。

このお客様には、この人しか対応できない。
こういう話、よく聞かないでしょうか?

受注したときはいいのです。
注文に対応できれば、売上は前年比○割アップ!当期の目標達成!テンションも上がりますよね。

この手の案件は、その場その場の当意即妙な対応が要求されることも多いので、優秀な社員を担当に当てることになります。

問題はそのあとです。
この仕事、他にできる人いますか?

どんな社員も、いつかは辞める

その社員がずっとあなたの会社で働いてくれればいいのですが、いつ辞めるかはわかりません。

その時に、他の社員で対応できるでしょうか?
優秀なその社員だから1人でできたのかもしれません。通常の能力の社員で穴埋めしようとしたら、何人必要でしょうか?

人数を投入して解決すれば、まだいいほうです。
どうやっても、優秀な社員のセンスは頭数で穴埋めできないケースもあります。

また、多くの社員を投入して穴埋めができたとして、他の顧客への対応は大丈夫でしょうか?

その社員も、今までブラブラしていたわけではなく、別の仕事を担当していたはずです。

社員は疲弊すれば辞めていってしまいます。この場合の疲弊は、体力的、というよりも精神的なもの。急に難易度の高い仕事を与えられて、うまく行かなければそのクライアントに罵声を浴びせられるかもしれません。責任感が強ければ、耐えられなくなってしまいます。

加えて、今はどの会社も人手不足。
労働市場は、完全に売り手有利です。ある程度仕事ができる人なら、転職先に困ることはないでしょう。

仕事は、自社にとって「良い顧客」から取る

大口の案件を取る場合、全社売上に占めるその取引先の割合が飛び抜けて高くなることがあります。

解約されたら、大打撃です。
一気に赤字になり、リストラの必要が出るかもしれません。

その恐ろしさから逃れるために、より一層イレギュラーな注文を受け入れてしまう心理に追い込まれていきます。

こうなってくると組織のバランスがどんどん崩れていきます。元に戻すのは容易ではありません。

売上アップは、抗いがたい魅力、いや魔力を持った現象です。
経営者であれば、誰もが揺れると思います。

その時に判断軸になるのは、

「自分の会社にとって、"良い顧客"とは誰か?」

というポリシーです。

お金の払いは良くても、注文の細かいクライアントは、本当に自社にとって良い顧客なのか?

社員が振り回されても、良い顧客と言えるのか?

最初から、自社にとって、「良い顧客」に「良いサービス/商品」を提供することを明確な方針として打ち出していれば、その都度迷うことがなくなって、スッキリします。

とは言え・・・、
よほど思いを巡らせて、顧客と商品を突き詰めておかないと、やっぱりグラっときてしまうと思います。経営者も人間ですし。

その時に踏みとどまれるかどうかは、企業の成長に大きなインパクトを与えます。

ポリシーを決めずに、色々な属性のクライアントから、色々なお困りごとの解決依頼を受けていると、社長か優秀な社員しか対応できなくなり、結局社長と幹部社員のキャパシティが、会社の成長限界となってしまうからです。

遠回りに見えても、「取らない商売」「取る商売」を決めて、取るものについて、社内でどうやって分業するか?ということと、個々のプロセスをマニュアルに落とし込み、誰かがいなくなってもカバーできる体制を作っていくことが、事業を大きくしていくためにはとても重要になってきます。


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