【小説感想】クスノキの番人**東野圭吾

これまた東野圭吾作品。
これまたずっと気になってた1冊。
私はこれまで東野圭吾作品はミステリー系しか読んだことはありませんでした。

このお話は、とある神社にある大きなクスノキに纏わるお話。
そのクスノキは願いを叶えてくれると一部のスピリチュアル好きの間で話題になっていたが、本当はそうじゃない。

主人公の玲斗はとある容疑で警察に捕まっていた。
そこに現れたのは弁護士。その者によると、ある人から依頼を受けてここに来たと言う。
そして、その依頼人の命ずることを行うと約束するなら、釈放されるように手を尽くすと。
悩んだ末にその条件を飲み、あっという間に釈放された玲斗の前に依頼人が姿を現す。
その依頼人は玲斗の伯母であり、その伯母は、クスノキの番人をするように玲斗に命令をしてその神社に連れてきた。

命じられたのは昼間の神社内やクスノキ周辺の掃除や雑務、それと夜、クスノキに訪れる人の儀式の準備と案内。
その儀式と言うのが祈念。
祈念についての詳しいことは何も教えて貰えないまま、玲斗は見習いとしてクスノキの番人の仕事をしていく。

そして、クスノキの秘密を少しずつ理解するにつれて、玲斗も少しずつ変わっていく。

いつものミステリーとはだいぶテイストが違っていたが、このお話もとてつもなく引き込まれるお話でした。
実質3日で読んでしまいました。
上にも書いた通り、これまで東野圭吾作品はミステリーをいくつか読んだことがある程度だったので、まさか東野圭吾作品で泣かされるとは思いませんでした。

クスノキが人々に与えるものは言葉では表せないもの。
例えば現実にこんなクスノキがあったとして、後に自分がそれを受けとる機会がもしあったら、私はそれを受けてどう感じるだろうか。
また、私はクスノキに残す勇気があるだろうか。
色々考えてしまいました。

でもなんだろう。
まるでこの物語の中で、祈念を終えた人達が清々しいスッキリした面持ちをして出てくるように、私も読み終わったあとなんだか清々しい気持ちになりました。
読んだからといって、すぐに何かが変わったわけでもないし、変えるために今すぐ行動を起こそう、となっているわけではありません。
だけど、それこそこの本の帯に書かれている言葉じゃないけれど、この本に出会うことが出来て良かった、と思います。

「読み終えた人が明日に希望を持てるように、と思いながら書きました。」と、帯には東野圭吾さんの言葉が書いてあります。
今のこんな時代、私自身も今の環境に迷いや不満を抱えて生きています。
それはどちらかと言えば、迷路に迷い混む一方で、先に光は今のところ見えません。
だから、ずっと気になっていたけど買わずにいたこと本を今、無意識に手に取り読むことにしたんだと思います。

少なくとも私には、この本は具体的なものではない何か、力のようなものを与えてくれたと思います。

読んで良かった。
私の好きな本、第一位に急上昇です。

とても素敵なお話でした。

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