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線を引き直し続ける

大阪駅前の旧大阪郵便局跡地に開業したKITTE大阪が、大変な賑わいである。職場が近いのでランチなどに利用できるかと期待していたが、人が多すぎて近づくことも躊躇われ、結局馴染みのある堂島地下街や大阪駅前第Nビルに流れてしまう。
長年空き地だったところに、基礎工事が始まるや否や一気に巨大なビルが育ち、聳えてしまった。また少し狭くなった梅田の空に、人間の営みが高く高く突き上げている姿には圧倒される。

このところ、自分の在り方を少しずつ見直している。先日アナログの絵を描き始めたことから始まり、データではない実態を伴うものに触れる機会を増やそうとしている。
特に、書籍を読むようにしている。インターネット記事やSNSは、只今の情報取得や個人の表出には長けているが、短文で深掘りの余地が薄い。そのことに飽きてしまった。みたいもの知りたいものはあらかた見尽くした感があり、どの言説も新鮮味を失いつつある。
幸い、ジュンク堂書店 大阪本店も職場から近いので、ランチついでに立ち寄り書籍を購入する頻度が増えた。

この本が平積みになっていたので手に取った。Twitter(現X)では長らくフォローしているものの、著作を読んだことがなかった。

「勉強する」ことの指南書のようなものだと位置付けられるだろうか。勉強するということは、これまでの自分を一度破壊しその先に進むことである、と言った趣旨だ。やや偏屈に見える(そのこと自体を私は大変好ましく感じている)日頃の投稿に比べると、意外なくらい丁寧に平易に説かれており、章を改めるごとに事前の話を再度確認し直すような、バラエティ番組のCM後のようにおさらいを繰り返して進むような形で話が進んでいく。また、根本にあるスタンスがとてもやさしい。
「信頼に値する他者は、粘り強く比較を続けている人である。」
この言葉には、救われたように思う。人生の多くの物事について、落としどころをなかなか見出せずにいる自分にとっては、まだその余地が許されているように思えた。

KITTE大阪前の街路樹には、まだ若い楠が等間隔に植えられていた(トップ画像参照のこと)。温暖な近畿地方ではよくみられる帰化植物だが、樟脳に使われていたくらい花も葉も爽やかな良い香りがする。
ただ、歴史ある寺社の境内ではしばしば楠の巨木を見かけるくらい、大きく育つ樹木だ。この丸く切り取られた枠内に収まり切れるのだろうか。
将来的にはこの枠を引き直し、拡張するのだろうか。

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