Yayoi Otsuki

1972年京都府生まれ。一児の母。子育てが一段落したことをきっかけに、捨て猫を家族に招…

Yayoi Otsuki

1972年京都府生まれ。一児の母。子育てが一段落したことをきっかけに、捨て猫を家族に招きいれ、溺愛中。ふたつの登山会に所属して登山を楽しんでしんいる。 共著「私の中のこの邪悪な感情をどうしよう?」(祥伝社)

マガジン

  • ヤギさん郵便

    • 101本

    東京で初めて会ったあの日、バラバラだったパズルのピースが一夜にして完成しました。私達の第二章のはじまりです。 ここにはキラキラした文章はありません。 エッセイのような手紙のような交換日記。お互いに宛てて書いているようで、自分に書いているようなそんな文章です。

最近の記事

ヤギさん郵便No.100「最後」

最後にかっこいい言葉で締めくくりたかったけれど、それはできそうもありません。 私はゆみさんの文章が好きでした。 ゆみさんは本音を文章に込めていたと思います。 私はどうだったかというと逃げてたと思います。 本を出して評価されることが怖かった。本を出して誰からも否定されたことはなかったけれど、自分ではないような、他人のことのようにして逃げていた。 思い返せば、ずっと逃げていた。 イベントでカラーセラピーをしていた時があるけれど、毎月出ていると明らかに私を信頼してきてくれるお

    • ヤギさん郵便No.98「再起動」

      思い通りにならないことが多い年だった。 耐えることが多い年でした。 それでもこうして今年を振り返ってみると、思い通りにならないことがあったからこそ、自分を深く見つめ直す時間が持てたと思う。 人のアドバイスを聞いて、そうかもしれないと考えてみることができたと思う。 風向きや流れ、運気というのはあると思う。感じることがある。 じっと耐える、過ぎるのを待つ、撤退する、やり直す、諦める、そういうことも必要なときもあると思う。 やめようと思ったけれど、やる意味を見失ったけれど、やめ

      • ヤギさん郵便No.96「答えはどこにある」

        ゆみさん、私ね ずっと知りたかったことがあるの。 なぜ、私はこんな辛い経験をしなくちゃいけないのか。 大切な人を二回も突然亡くしたから。 人の命は必ず尽きるものだけど、亡くなり方が辛くって、なぜ私はこんな経験をするのだろう、なぜ私だけこんな目に遭うのだろうと思っていた。答えが欲しかった。答えを教えてほしかった。 答えを探して、スピリチュアル系の本を読んだり、女性に人気のカリスマ系セラピストのセッションを受けたりしたけど、何か違うと思ったの。ネットのレヴューにあるような「心が

        • ヤギさん郵便No.94「どんな風に見える」

          職場に入ってきて数ヶ月の女性が、「よく知らないけれど、あの人は仕事ができなさそうですよね。」と言った。 なぜそう思うのか聞いてみたら、そんな顔や風貌だという。 ラジオで相撲は詳しくなかったが、四股を踏むのが健康にいいと知り、相撲中継を見ていたら、こういう四股を踏む力士はこんな勝ち方をするというのが分かるようになったという話をしていた。 生き方が顔に出る。 体の使い方でその人がわかる。 そういう話を立て続けに聞いた。 理屈ではなく、そんな風に見えたり感じることが私にもある。

        ヤギさん郵便No.100「最後」

        マガジン

        • ヤギさん郵便
          101本

        記事

          ヤギさん郵便No.92「うまくいかない」

          私は登山をしている。 普段は日帰りで登れる山に登っているが、年に数回遠くの山や有名な山に登っている。 そういう時は2ヶ月くらい前、時には半年前から日程を決め準備をする。 そうやって準備をしていても、直前に急用が入ったり、天気が悪くて登れないこともある。 今年は登れないことが続いている。 お葬式、台風、怪我、うまくいかない。 うまくいかない時こそ試されている気がする。 うまくいかないことにどのように向き合うか。 どうやって気持ちを立て直すか。 考えていると、そもそもそれはう

          ヤギさん郵便No.92「うまくいかない」

          ヤギさん郵便No.90「諦めるという罪悪感」

          根性なんて言葉は、今の世の中ではもう使われなくなった。 私は根性はある方だと思っている。 才能や能力は生まれ持ったものもあるだろうが、気持ちは持ちようでどうにでもなる。いわゆる根性で乗りきってきた人生だ。 マラソンをはじめて根性論は役立った。才能も体格も恵まれてないけれどマラソンは自分との戦い、諦めなければ完走はできた。達成感に酔いしれた。 今回初めてレースに欠場を決めた。 走らずして諦めた。 走れたのではないか? 逃げただけじゃないか? 気持ちが弱くなったのではないか

          ヤギさん郵便No.90「諦めるという罪悪感」

          ヤギさん郵便No.88「笑え」

          人生に絶望する時は、予測できない悪いことや、取り返しがつかない出来事があった時だと思っていた。 でも、そのような一大事が起きなくても絶望することはある。 なんでもないことがイヤになって、どうでもよくなって、投げやりになって、何もかもが嫌になる。 50歳を過ぎて何をする気持ちにもなれなくなった、という年の離れた友達から聞いたことがあった。 今、その友達の話を思い出していた。 思い通りにならない体。 自分だけ取り残されていくような気持ち。 あぁ、あの時の友達はこういうことを言

          ヤギさん郵便No.88「笑え」

          ヤギさん郵便No.86「53秒」

          NHKのど自慢がやってくる、この記事を見たとき胸が踊った。 学生の頃にカラオケボックスで友達と歌ったことを思い出した。 「あと10分でお時間です」とボックスの内線でお知らせがくると、盛り上がる曲を入れてみんなで歌った。 友達に連絡をした。 あの頃歌ったあの曲で、のど自慢出てみない。 すぐに返事は返ってきた。 のど自慢は、ネットで調べると応募は3000通以上あり予選会に進めるのは200組。狭き門である。 しかし、予選会参加の通知が届いたのである。 予選会の会場は大ホール。

          ヤギさん郵便No.86「53秒」

          ヤギさん郵便No.84「カラブランカの香り」

          ゆりこちゃんはピアノを習っていて、ピアノ教室主催の発表会に出ていた。 友達に誘われて発表会に行ったことがある。 市民会館のステージで髪を綺麗にくくってドレスを着てピアノ演奏をする。 演奏が終わると、客席からステージに駆け寄ったお客さんから花束を受け取って拍手をもらって退場する。 この一連の流れが一年間練習をしたご褒美である。 小学生の私には、花束をもらうその姿がとても素敵に見えた。 いつか一度でいいから、私も花束をもらってみたいと思った。 両手いっぱいで抱えるくらいの花束

          ヤギさん郵便No.84「カラブランカの香り」

          ヤギさん郵便No.82「無題」

          大嫌いだった人が亡くなった。 嫌いになる前は、信頼しようとしたことがあった。 裏切られた。 十年以上も会うことはなかった。 会っていなくても、この世の何か目には見えない灯りのようなものがあって、見えないのにその灯りを私の見えない何かが感じていて苦しくなることがあった。 この世からその人の灯りが消えたとき、私の見えない灯りを感じていた苦しみは消えた。 涙が出た。 人がこの世からいなくなった。 どんな人であっても悲しい。 大嫌いだったけれど憎んでいたけれど涙が出た。 誰もが

          ヤギさん郵便No.82「無題」

          ヤギさん郵便No.80「Fairy Trail」

          妖精がいるようだと、あるトレイルランナーが植生も景色も美しいと名づけた朽木のトレイル。 その名前に惹かれていました。 FAIRY TRAIL 2023  ショート20キロ  スタート地点の集落の舗装道路を2キロほど走り、いよいよトレイルに入ると思ったら川へ降りていく。 靴が濡れてしまうのが嫌だったので、何とか石の上を歩いて入水を避けようとしたが、どうしても川に入らないと進めないところまできてしまった。 もう仕方ない、エイヤと気合いを入れて川に入った。 思ったよりも冷たかった

          ヤギさん郵便No.80「Fairy Trail」

          ヤギさん郵便No.78「胸の痛み」

          「骨折れたかも?」 でも次の瞬間 「折れたらもっと痛いはず」 と、ロープで吊られた宙ぶらりんの状態で思い直した。 足に体重が乗り切らなかった。 足の裏にはもう何も無かった。 体重移動していたので、体を支えることはできず手が離れた。 反動で岩に体をぶつけた。(と思われるが、一瞬のことでよくわからない) 息が詰まり、肋骨に痛みが走った。 崖の上でビレイ(ロープ保持)してもらっていて、下からはもうひとりが登ってきている。 胸の痛みで心が折れた。 チャレンジしたけど、また宙ぶら

          ヤギさん郵便No.78「胸の痛み」

          ヤギさん郵便No.78「男のプライドが見えた瞬間」

          久しぶりの泊まり山行は西日本最高峰石鎚山でした。 岩場に設置してある鎖を使って登る事ができる修験道の山である。 石鎚山には、試しの鎖、一の鎖、二の鎖、三の鎖と鎖場は四ヶ所あり、 試しの鎖が登れたらあとは登れるという名前のとおりのお試しの鎖。でも試しが一番大変かもしれないそんな鎖場です。 私たちの登山パーティも試しの鎖に着きました。 年配の男性Hさんは、いつも怒っていないのに怒っているように聞こえる感じの60代後半のズカズカ言いたいことを言うタイプの人です。 今回も班のリー

          ヤギさん郵便No.78「男のプライドが見えた瞬間」

          ヤギさん郵便No.76「ザブンと溢れたお風呂の湯」

          久しぶりの泊まり山行。 宿泊先は登山口近くの旅館で十五畳くらいの広い和室。 昭和を感じさせる旅館である。 山の上では水は貴重で蛇口を捻ってもチョロチョロしか出ない。お風呂はないのが当たり前で、自然保護のため石鹸やシャンプーは使えない。歯磨き粉も使えない。 でもここは登山口近くの旅館なので、水や石鹸の心配はいらない。 お風呂は洗い場が四つあり、洗濯機が置かれていた。お湯と水の蛇口は分かれており、お湯は80℃のお湯が出ていて水と混ぜて温度調整する。 湯船にはバスクリンの黄緑色

          ヤギさん郵便No.76「ザブンと溢れたお風呂の湯」

          ヤギさん郵便No.72「屁のカッパ」

          子どもが転んだ時、一瞬間があって転んだままで親の顔を見る。 親が「まぁ大変!痛かったでしょ。」と声をかけたり、そんな顔や仕草をすると、子どもは泣きだす。 でも転んだ時に「大丈夫。」という声かけや、表情や態度や知らんふりをすると、案外子どもって泣かなかったりする。  遠くから眺めていると、それは風景を眺めているようなどこか他人事のように思えていた。 先日行ったクライミングの時、この岩を登るなんて難しいだろうし、登るといっても岩の横の方に登りやすい場所がきっとあるに違いないなん

          ヤギさん郵便No.72「屁のカッパ」

          ヤギさん郵便No.70「傷だらけの膝小僧」

          大きくなったら何になりたいかと聞かれても答えに困るような子供だった。 なりたいものがなかったし、やりたいこともなかった。 だから大人が喜びそうなスチュワーデスとか女優とか夢のある答えをいうのが嫌で、かといって何もないと言ってガッカリさせるのも悪いと思ったので、洋服屋さんになりたいくらいの答えをするようにしていた。 それなりに暮らすのだろう、漠然とそう思っていたと思う。 40歳を過ぎて運動嫌いだった私は走りはじめて、マラソンを完走できるようになって、登山もはじめた。 里山から

          ヤギさん郵便No.70「傷だらけの膝小僧」