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雑記 44 入道雲

昨日27日の朝6時少し前、窓から入る光が異常に明るく、カーテンを開けて見たら、窓のすぐ外から入道雲が部屋を覗いていた。白い雲に朝日が当たって、鏡が光を反射するように白いビームが放たれて、生きているかのような気配。こんな朝早くから湧き上がる入道雲はあまり見たことがなかった。それがどんどんと成長していく。空に次々と入道が現れ、騒ぐ。
入道雲は気温がぐんぐん上がる日中、湧き出るものと思っていた。

案の定、その数時間後には、突然の豪雨がやってきて、外出した私は服も靴も鞄も、小さな傘では避けきれず、びしょ濡れになった。
激しい雨はひとしきりコンクリートの道や家々の屋根を叩くと、その後何ごともなかっかたのように晴れ上がったが、夕刻には西の空に、今度は濃い灰色の入道雲がさらに身長が高くなって、覆いかぶさるように刻々と湧き上がり形を変えて、確かな意思を持って地上を睨み、見下しているように思えた。西の太陽は入道雲の背後にあって、雲の輪郭を金色に縁どっていた。それがさらに入道雲の邪悪さを引き立てていた。

生きていれば120歳になろうと言う叔母から聞いた話だが、叔母のそのまたおばあさんが、村の鎮守の森で入道に出会い、腰を抜かしたという話を思い出した。
田圃の中に鎮守の森だけがこんもりとしている田舎。一面の稲の海。風が吹くと、実って穂を垂れた稲は風の通るまま揺らぐ。ひと気のない田んぼの中の一本道だけが、確かな場所に行き着ける拠り所に見える。
昔々の鎮守の森でおばあさんが見た入道は、灰色の入道雲だったのかもしれない。

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