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猫日和 64 エズ村の猫

猫日和63 サンリスの猫、に続き、猫ワープ現象の話。
エズ村というのは、鷲ノ巣村、と呼ばれる村のひとつ。闘いに備え村全体が要塞のようになっている。

エズは、モナコから8キロ、ニースから12キロ、と言う。すぐ近くの村、とは言えないが、それでも、仲間の一人は、
ちょっくら行ってくらぁ、
とモナコの宿から走って出かけて、あっという間に戻ってきたから、それほど遠くはない印象だ。

なぜ、国内旅行も行ったことがなく、家に根が生えたように暮らしている私が、モナコだの、ニースだの行っているのか。それこそワープではないか?
いや、それは違う。

これには長い説明が必要なので、旅行記、という分類で、いつか、ちゃんと書きたいと思う。

エズ村に行った頃は、1ユーロが、160円くらいだった。だから、一番安めのスパゲティを食べて3,000円という感覚。

エズ村は道も家も石で出来ている。紀元前2000年くらいには既に人が住んでいた、と言う。キリストも釈迦も生まれていない。遥か遠い遠い時代の村。
近年フランス領に落ち着くまでに、沢山の国が支配して、通り過ぎた。道の先の石造りの家の陰から、今にも吟遊詩人が竪を抱えて現れそうである。

坂道をあがっていると、
ドンッ
と猫が降ってきた。
行く手を塞がれた、と言う方が、正しいかもしれない。

そういえば先ほどから猫の、声がしていた。

うちの猫そっくりの、アメリカンショートヘアー。
さっきから呼んでおるのに、何故無視するか?
と怒ったように、現れて、ほれ、顎の下をさすれ、耳の後ろをかけ、と横たわった。

どこに行っても、猫は寄ってくることが多いが、自宅に置いてきた猫の気持ちが、このような現象を引き起こすのか。猫があちこちにいる、という村ではないので、突然に「物質化」したような出現の仕方は、不思議に思われた。
天空の村エズでの出来事。2007年5月4日。

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