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雑記 277 人生という芝居の幕が下りる時

モーツァルト「ラウラに寄せる夕べの想い」:

夕暮れがやってきて、太陽は沈み、
空には銀色の月が照り輝く。

彩り豊かな人生の最も素晴らしい時間は
こうして、とどまることなく、
まるでダンスをする様に過ぎ去っていく。
 
まもなく人生のさまざまな場面が消えて
舞台には幕がおろされる。

私の芝居は終わり、
そして友人の涙が
私の墓に注がれるだろう。
 
恐らく、もうすぐ、ひそやかな西風のように
微かな予感が私に吹き寄せてくる。
ひそやかな予感。

私は、
この人生の巡礼の旅を終えて
安らぎの国へと飛んでいく。

 
その時あなたは、
私の墓の前で涙を流して
悲しみにくれて
灰になった私を見つめるだろう。

ならば、
おお友よ、私はあなたの前に現われて
あなた方に天国の風を吹かせよう。
 
あなたは私に一粒の涙を贈り、
一本のスミレを私の墓に摘んで供え、
そして心のこもったまなざしで
やさしく私を見おろしてほしい。
 
一粒の涙を捧げてほしい。
そしてああ!
それを恥ずかしがらないで。
おお、それは私の冠(ティアラ)の中で
一番美しい真珠になる。

  (諸説あるが、作詞者は不明と言われている)

 モーツァルトの「ラウラに寄せる夕べの想い」は衝撃だった。
あまりの詞の美しさ、曲の美しさに、震えるほど感動し、一晩楽譜を抱いて寝た。

あまりに近寄り難く、あまりに崇高で、
自分など一生かかってもこの曲に触れることは
不可能に思われたが、
思い切って、譜読みを始めた。

今日12月29日は、午後4時過ぎ東京を出て京都に向かった。
東京駅の改札は故郷に帰る人々でごった返していた。
久しぶりに見る人々の混雑と音。
皆、どんな思いを抱いて、それぞれの故郷に帰っていくのだろう。

新横浜を過ぎ、しばらくすると、
丁度、地平線に橙色の太陽が、沈むところだった。
撮影をしようとスマホを出しているうちに、
太陽はあっという間に沈んだ。

引きとどめることが出来ない自然の力。
朝日がグイグイと登り、人々に日々の生きる希望とエネルギーを与えるように、
夕陽は忽ちに地平線の下に落ちて行き、
私達の人生にも、やがて否応なく幕が下りることを
暗示する。
その日まで毎日を大切にして生きていきたいものだと思う。
私のその日、緞帳が下りる時に、ラウラの曲が流れてくれますように。

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