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菌ちゃん先生に会ってきた!

 「菌ちゃん先生」こと吉田俊道さん。

 2022年春。菌根菌や真菌を活かした農業のやり方に興味を持っていた僕は、本や友人から「菌ちゃん先生」を知り、そんな有名な人ってどんな人なんだろう・・・と気になり始めました。

 まず、You Tubeで柴咲コウさんと菌ちゃん先生の野菜作りの動画を見てみましたその面白いこと!なんていうか、まるで漫才なんです。菌ちゃん先生はある意味、子どもみたいな天真爛漫というか純真なやんちゃなキャラクター、そして柴咲コウさんも女優ですから菌ちゃん先生のツッコミに素早く反応するので、そのやりとりは爆笑の連続。思わず引き込まれてしまいます。こりゃ菌ちゃん先生でなくてコメディアンの「欽ちゃん(萩本欽一さん)」じゃないの?と思わずココロの中でツッコミを入れる僕でした。
 菌ちゃん先生について、もっと調べてみよう・・・と検索してみたら、インタビュー記事が見つかりました。読んでみると、これがまた感動モノでした。農学部の大学院まで出て県の農業指導員になり、有機農業も指導したりしたけれど、「吉田さんは作物がうまくできなくても収入に困らないからいいよね。農家はそうはいかない」と言われて「結局自分がやって成功させなきゃ何の説得力もない。」と親の反対を振り切って農家の道に飛び込んだ人生。失敗の連続から「まずい野菜に虫がつく。それは土が原因。土が「微妙に」腐っているのが原因。」という重大な事実に気づき、土を腐敗させず「発酵」へ持っていくにはどうしたらいいか、それには菌を活かす、ということに気づきます。そして、腐敗も発酵も有用菌も病原菌も、虫も雑草も何もかも、この世に存在するものはすべて何か意味がある、虫は死んで腐敗した「命」を分解したり合成したりして新しい命を作り出すためにいるのだと。
 このインタビュー記事は3部作になっていて、とてもよくできています。インタビュアーの力量にも感心しました。僕が一番注目したのは第2部に出てくる話。ちょっと長いやりとりですが、とても興味深いのでその部分だけ省略せずに全文抜粋して紹介したいと思います。

いい腸内環境にするために、一番お金のかからない食べ方がある
―― まずは、旬の野菜を選ぶ。その野菜を、どう食べたらいいんでしょうか。次は、食事のしかたについて、お聞きしたいんですけれど。

「食事を通して、より楽に健康になるにはどうすればいいかということでしょうけれども、いっぱいありますよね。その中で、一番やりやすくて、できるだけ効果の高いものを2つ言いますね。1つは、腸内細菌を有用菌で活性化させるような食べ方をするんです。これで栄養の吸収率が大きく上がります。もう1つは、微量だけども実はとても重要な栄養素をちゃんと取るということです。要するに必要な栄養をちゃんと取り入れてちゃんと吸収するということ。この当たり前のことを多くの現代人ができていなかったんです」

―― つまりは、それで免疫力が上がるということですね。

「はい。では1つめの腸内細菌を有用菌で活性化させる方法ですが、一番お金がかからない方法で、昔の人がみんなやっていたことは、とにかく口の中に何かを入れたら、それを飲み込むまで液体を入れないということ。ご飯が口の中に入っている時に味噌汁を入れない、お茶を飲まない。パンを食べて、パンが口の中に残っている間に牛乳を入れない、水を入れない」

―― それは噛んで、自分の唾液で食べるということですか。

「そうです。どろどろにならないと、嚥下(えんげ)活動ができないから、どろどろにするために、私たちは味噌汁とか、牛乳を入れるわけです」

―― 喉を通って、飲み込みやすいように。

「そうしたら、その分、ツバ、唾液が出なくなります。この唾液というのが、食べ物の中の毒を消す最高の消化液なんです。唾液を使わずに食べ物をお腹に入れちゃうと、どうしてもうまく発酵が進んでいかないんです。まずは食べ物を唾液と絡ませることが大事です」

―― 例えば、唾液を出すために、どれくらい噛んだらいいですか。

「1口30回とかいいますが、それも大事だけれども、一番の基本は、とにかく口の中に何か入っている時には液体を入れないで、飲み込める状態になるまで噛めばいい。もっと言うと、最初から食べる時に、飲み物を置かない、お茶を置かない」

―― つい、飲んだりしてしまいますよね。食事と一緒に、食べて飲んでと交互に、口に含ませながらね。

「昔の人はみんなそれを教えていた。私はじいちゃんに厳しくそれを言われたから」

「元気な野菜は皮ごと食べる」有機野菜農家が実践している効果的な野菜の食べ方とは?
佐藤智子 2020/5/9
https://news.yahoo.co.jp/byline/satoutomoko/20200509-00177706

 「食べ物を口に入れたら水分は入れない。そうすれば自分の唾液でのみ込むしかないから、必然的によく噛んで唾液でしっかり混ぜ込んでのみ込む。消化とは、発酵と同じ。」そういうことなんだなぁ、と僕は納得しました。僕は子どもの頃から唾液の出が悪くて自分の唾液で食べ物をのみ込むのが苦手。給食のまずい食パンを涙ぐみながら牛乳で少しずつ流し込んでいた子で、それがトラウマになっているほどでした。食べ物を液体で流し込むことの不自然さ、自分自身の歯がゆさを身をもって感じた子ども時代、大人になってなんとか人並に食べられるようになったものの、「流し込む」習慣は残ったままオジサンになってしまっていたのでした。「そうか!」この話は切実に説得力を感じました。いやあ、菌ちゃん先生ってすごい。野菜をいかにつくるか、安全な野菜をいかに選ぶか、そういうことを力説する人はたくさんいるけど、「食べ方」の重要性を説く人はほとんどいないように思います

 この記事を読んで以来、僕も「水分で流し込まずに食べる」を徹底するようになりました。たしかにウンチの調子がいい!びろうな話で恐縮ですが、僕は昔から胃腸が弱いタチでウンチが柔らかく、紙につくのです。何回ふいても。ところがこの記事を読んだ2022年6月以降、ほぼ安定して紙につかなくなりました。毎朝「健康観察」してますが(笑)、やはり「食べ方」の影響はかなり大きいみたいです。菌ちゃん先生は「無農薬の食べ物でなくても、感謝していただきましょう。」と言ってますが、それは食べ物の選び方だけでなく食べ方が大事だよ、と言ってるのだと思います。僕も同感です。実際、実生活で例えば勤め先での昼食で無農薬の食材を食べることのできる人はどれだけいるでしょうか?食材が選べない環境でも、食べ方だけは変えられる、まずはそこからスタートだよ、ってことじゃないでしょうか?僕もお昼は社員食堂です。以前は「かき込んで」いました、お恥ずかしい話ですが(苦笑)。今はとにかくのんびり時間をかけて食べています。全然違います!午後の仕事中、眠くなりません!揚げ物を食べても胃もたれしません!

 さて。前置きが長くなってしまいましたが、そんな菌ちゃん先生が近くの町にやってくることになりました(2022年11月、まだコロナ禍の最中です)。午前中講演会&午後は畑で土づくりの実習。

 町の公民館の研修室での講演、聴講者は50名弱でしょうか。やはり、というか、女性が7~8割と多いですね。もっと男性にも聴いてほしいんですけどね。村長とか教育長とか、JAのトップの方とか(笑)。子どもさん連れもいます。あれ、マスクをしていない人が結構多い。どうしよう(汗)。

 登場した菌ちゃん先生こと吉田俊道さん。出てくるなり声をひそめて「そんな大したもんじゃないんだけどね・・・」。このひとことでドッとウケる会場。フツーのオジサン、いやちょっと面白いオジサン(失礼!)のお話は爆笑の連続でした。

参加者にどんどん話しかける菌ちゃん先生

 スライドを見ながらのお話は話題が盛りだくさんです。菌ちゃん先生の話の特徴は守備範囲が広いこと。ご自身が有機農業で試行錯誤を繰り返した中で学んだことの奥深さ、みんなつながってるんです。土を腐敗させちゃダメ、発酵させれば虫や病気は来ない。でも腐敗も時間をかけて土を浄化してくれる役割を持っている。この世界に役割のないものなんてない、存在するものには何か意味がある。人間の腸内も土と同じ。発酵させれば元気な体になる。コロナで人間は農業のときと同じ間違いをしてしまった。雑菌に触れなくなってしまった。何でも消毒、消毒。菌に守られていたのに、菌を皆殺しにする、菌を敵に回してしまった。。。

 話は尽きず、肝心の菌ちゃん農法のやり方のお話が出てきません。最後の方に大あわてでチョコッと話して、「あとはテキストを読んでください。これにぜ~んぶ書いてありますから!」おいおい、テキスト(別売)の押し売りじゃないかよ、、、とは思いませんでしたけど(笑)。

 吉田俊道さんの講演の特徴として、聴講者との掛け合いがあります。目の合った人にどんどん話しかけてきます(笑)。「土の中が発酵するのは誰のおかげ?」「(話しかけられた参加者が答える)菌ちゃん」「そう!大正解!バッヂあげるね。じゃ、虫がいなくなるのは誰のおかげ?」「菌ちゃん」「そう!じゃ、モグラがいなくなるのは?」「・・・・」「菌ちゃん、って言ってよ!あなたは何でも菌ちゃんって答えればいいの!」会場大爆笑。・・・ってな感じでみんな話に引き込まれていきます。

 僕が着目した菌ちゃん名ゼリフをいくつかご紹介したいと思います。(セリフは後から再現したもので、間違いやニュアンスの違い等あるかもしれませんがお許しください)
 「虫は土をキレイにするためにやってくるんです。お掃除のおばちゃんと同じです。キレイになればいなくなる。」・・・分かりやすい表現です!
 「菌ってすごいんです。生まれてから次の子を産むまでわずか30分!あなた子どもを産むまでどのくらいかかりましたか?」「・・・(指名されたひと、やや間があって)十月十日」「違うでしょ!最低でも15年、ひとによっては30年以上かかるでしょ!」会場大爆笑。性的に成熟しないと子どもは産めない・・・たしかにそうでしたね。菌はたったの30分なんですね!
 「(発酵させるか腐敗させるかの例えで)味噌かクソか!」・・・ストレートですね。
 「発酵と腐敗の科学的な定義がちゃんとないんですよ」・・・これは僕も興味があります。よく発酵と腐敗は人間にとって有用か有害かだ、と説明されますが、僕はしっくりきません。腐敗ってどういうものを指すのか、感覚的にじゃなくて、科学的にどういうものなのか、それが知りたいんですけど、いまだ明快な答えが見つからないんです。
 「例えば役場になんか意見を言う。子どもたちにマスクをさせてちゃ子どもたちの発達、将来に悪影響があるからやめてください、とか。言わないでしょ。言ってください。ひとりが意見を言う。何も対応しないでしょう。でも3人から言われた。役場もちょっと考えるでしょう。同じ人が言ってもダメですよ、ひとり一票、ちょっとずつ意見する、そうやって世界は変わっていくんです。」・・・これはいい話でした。人間はひとりでは無力、でも力を合わせていけば強力(協力)になっていくのではないでしょうか。
 「(本を注文する話題で)Amazonはできれば使ってほしくないな」・・・お、出ましたこの話、僕も最近はAmazonで本を買わずわざわざ本屋に注文に行くようにしてます。さすが菌ちゃん先生。

 何だか農業の話が全然出てきません(笑)。最後に菌ちゃん農法での気になるセリフを紹介しましょう。あくまで僕の注目したセリフですけど(笑)。
 「生ゴミを漬物にする方法の場合、最初から食べようと思って漬物にするのがポイントですよ。例えば三角コーナーのゴミを漬物にしようと思う人いる?いないでしょ!」・・・なるほど、これは分かりやすい例えです。完璧に発酵させるためには、わずかでも腐敗しかかった材料を混ぜてはいけない!漬物だって失敗するじゃないですか、水が上がって来なくてカビたり。堆肥の研究家、橋本力男さんも腐った材料を絶対使うなと強調、それこそ腐敗と発酵の区別すらせず土に帰せば何でもいいと誤解している人の多さを嘆いておられました。言っていることは同じですね。
 「無肥料でやる方法の場合、チッソを入れてしまうと、チッソ固定細菌が働かなくなってしまうからダメ」・・・なるほど。チッソがないからチッソ固定細菌が働くのですね。肥料をやれば微生物や植物が怠け者になってしまうんですね。
 「どうしてもビニールを使いたくないっていう人は黒マルチの代わりにかやぶき屋根をかけてもいいんだけど、そんな大変なことしなくてもいいからね(午後の畑での実習にて)」・・・おっ、これは注目の発言。菌ちゃん農法は黒マルチを必ず使うのです。プラ製品をできるだけ使いたくない僕や知人は、何とか良い方法はないかな、と思ってました。僕も草マルチなどで雨除けできないかとテストしていたのですが、雨が浸透してしまいうまく行きませんでした。それなら藁屋根をかけるのはどうかな?そうすれば雨が屋根をつたって流れてくれるから良いのでは?と思っていたところでした。これは耳寄りなひとこと、本日の収穫でした。ただ、課題が残ります。雨は当たらないけれど、逆に乾燥しすぎるリスクがあります。どうやって保湿するか。草マルチとかモミガラとか、工夫する余地がありそうですね。試してみたいです。

 午後は畑での実習でした。参加者全員で畝をつくって菌ちゃんのエサ(少し朽ちてきた丸太、乾いた草、など腐りにくい有機物)を載せて、土をかぶせていきます。

菌ちゃん先生、参加者に混じって作業中!
ウネの高さ!まだこの上に土をかぶせるんです。

 びっくりしたのは畝の高さ。出来上がりで60cmもの高低差をつけるのです。一般の畑のウネは10cmとか高くても20cmはないでしょう。巨大なウネ、としか言いようがありません。ここまでするのは、一にも二にも酸素と水はけ。糸状菌は酸素が必要で、水浸しになっては活動できません。逆に酸素不足の土は発酵より先に腐敗が始まってしまいます。微妙に腐敗しているだけで虫が集まってきてしまいます。ここのところがポイントですね。ウチの畑もウネは低いです。虫はいっぱい来ます(笑)。最低でもウネはうんと高くしないと!そして下の方の土まで酸素が行き渡るようにしたいです。

 楽しかった菌ちゃん先生との一日でした。問題はこれをどうやって活かしていくか、そして輪をどうやって広げていくか、ですね。うちの村でも菌ちゃん先生を呼んで一緒に活動していきたい、という話もありますが、なかなか実現しそうもないです。まずは自分でやって確かめてみること、自分の周りの人に見てもらえるようになること、そして周りに広めていけるようにしていければ、と思います。

 全国を飛び回っていらっしゃる菌ちゃん先生ですが、最近はオンラインでの講演の試みも始め、今年はオンラインでの6回連続の野菜作り講座もスタートするとのこと。まず受講者1万人以上を目指して、日本の野菜づくりが変わっていく未来を夢見て活動を続けていくそうです。僕ももっと微生物と土の関わり、人間との関わりを深めていきたいと思い、この講座に参加してみようと思っています。皆さんも是非参加してみませんか?何しろ面白いですよ! 下記↓

 6回連続の講座↓
 菌ちゃん先生_オンライン通信講座 (career-ark.co.jp)

 土の中とお腹の中は同じ!食べ方で元気になれる!というテーマのオンライン講演会↓ 僕はこの講演会をイチ推しします。
 菌ちゃん健康法 (career-ark.co.jp)

 なんだか菌ちゃん先生の宣伝の回し者みたいになってしまいました(笑)。でも真剣な話、もっと広まって欲しいんですよね~。食べるって生きることじゃないですか。誰もが関わることじゃないですか。そういうことに真剣に日々取り組むひとが増えて、幸せな世の中になっていってほしい、そう思います。


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