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コミュ障の家族と暮らすということ


言い争いが絶えない


コミュニケーションが苦手な人との会話は、何をどう言っても通じなかったりするので、よく言い争いになります。他人であれば黙って関わらなければいい話ですが、家族はそうもいかず、苦労は絶えないのです。
離婚してモトオからは離れられたものの、同じ特性を持つムスメにはまだまだ悩まされています。勿論、モトオほど分からなくはないので雲泥の差はあるものの、日常が日常ですから心配は絶えないのでした。

ちょっと前になりますが、ムスメが高3の時の話。

「ナプキンがもうないから、今度買い物行ったら買ってきて」
とムスメに言われたので、

「このあいだ買ってきたばっかりなのに、もうないの?」
と私が何気なく言ったのが始まりでした。

なんて事はない、こっちがびっくりするような些細なやり取りで、怒り出してしまう人がいるのです。

回答にならないムスメの回答はこうでした。

この間じゃないでしょ。ずっと前でしょ?

訳の分からないムスメからの訂正に固まる私。

なぜなら2週間前にも頼まれて買いに行ったばかりだったので、とてもずっと前には思えなかったからです。

まあ百歩譲って、そんなことはどうでもいいとしても、「無いなら無いと言ってくれればいいんだけど?」と言う私に、なぜか言わないムスメ。
そうなると、私は『お願いしている分際で何を偉そうに!?』と腹が立ってくるわけです。

原因はまさに特性。簡単に言えば、自分の立場や社会の常識、物の言い方など、いろいろ知らないことがあり過ぎるのです。

脳の仕組みからそれらを自力で学ぶことが難しいのですが、本人は自分が知らないことを知りませんから、言い争いになるのです。

それに加えて、ムスメはモトオと同じタイプ。外では黙っていても身内には言いたいことを言ってきます。親しき仲にも礼儀ありという概念もないので、言い争いが絶えないのです。


イエスかノーかの質問に答えない


まるで、それを言ったら負けとでも思っているかのように頑なに言わないのです。
その代わり口から出るのは、文句のように聞こえる、的外れなこと。

これは、相手の意図していることが分からないからなのですが、厄介なのはトンチンカンなことを偉そうに思いもしないところで言ってくるので、こちらは混乱するのです。その態度にもイラつくし、何を言っているのか分からないのでつまらない話を長くしなければならなくなるのです。

けれど、放っておくとモトオのような人間なってしまうのは明らかなので、出来るだけ、苛立ちを抑え、説明、解釈に努めるのですが、時間がかなり取られるので疲れます。繰り返すうちに、話し合いの時間は短くなってはきますが、やはり忍耐が必要です。お陰で、精神的にかなり鍛えられました。


母親にしてもらうことは、当たり前と思っている


ムスメの「この間じゃないでしょ。ずっと前でしょ?」というセリフは、どこからくるのか。要は、母親にしてもらうことを当たり前で、有難いなんて思っていないのです。

まあいつものことなので、呆れながらも感情的にならないよう一呼吸おいて

「数週間前に買ってきたばかりなので、ずっと前じゃありません」

と私が静かに言うと、

「この間という感じじゃない!」

と言い放つので、

「実際、買いに行ってるのは、私だよ? その私が、ついこの間行ったばかりな気がすると言ってるんだから、あなたがどうこう言えることじゃないんだけど。
無いなら「無い」って言えばいいだけでしょ?」

すると、

「無駄遣いして責められてる感じがする」

と言ってきたので、『そうだったんだ』と内心ちょっとホッとして

「責めてもいないし、買いに行かないと言ってる訳でもないでしょ?」

と再び優しい気持ちになれたのでした。けれど一件落着と思ったのも束の間、
ムスメがまた

前回頼んだのは、ずっと前だった

と言い出したのです。ナプキンが無くなってきていることも

そんなの分かるでしょ?

と偉そうな言い方で言ってきて、こうなると私も黙っていられないのでした。

「そんなのテレパシーでも使えない限り、分かる訳ないでしょ!
あなたの付き人じゃないんだから、そんなの分かりません!」

とムスメの大声に合わせて、私も怒鳴っていました。

これを言うと、ムスメには嫌がられますが、ムスメはモトオとそっくりで、この「テレパシーでもなきゃ分かる訳ない」って話も過去にモトオと何度もやっていたので、デジャヴな会話なのでした。これは言わなければ相手は分からないことなのに、世の中の言わなくても分かるということと混同しているようでした。

けれど、普段ゆっくり小声で話すムスメが、こういう時になると大声で流暢に、しかも偉そうに話してくるので、こちらは許してあげようという気持ちがどんどん消えていくというか、絶対曲がらないので強く言っていくしかなくなるのでした。


「あなたが言わなければ、あなたの使うナプキンが無くなってきてるなんて、他の人には分かりません」と説明しても聞く耳なしだったので、

「買ってきてもらってるのに文句ばっかり言うんだったら、これから自分で買いに行きない!そしたら、もう無くなったって思う気持ちが分かるはずだから!」

と私が怒鳴っていました。

ムスメはムスメで「イヤだー!」と泣き喚き、その場は終了。

「間違いを正してるだけなのに、何が悪いの?
ママだって、しょっちゅう私の間違い言ってくるじゃん」

とも言っていました。

つまり、人が言ったことを訂正して良い時、悪い時、言い方もあるなどの違いが全く分からないということなのです。


悲しいけど、そういう脳だから仕方ないと理解する


人は家族や身近な人など、大切な人のことは日頃なんとなく覚えているのが普通と思っていましたが、ムスメは違うようです。

今回のナプキンのこともムスメとの日頃の会話から私が彼女の体調や周期などを知っている(うちの場合、買いに行かされるので嫌でも知る)訳ですが、ムスメは私の様子も見ていないし、日頃言っていることも覚えていないのです。

そんなこと覚えてたら頭の中がいっぱいになって、他のことが覚えられなくなる」と言われました。まるでコンピューターの記憶容量です。

更には「みんな一人一人違うのに、常識って何?」と怒り気味に言っていました。

短期の記憶能力が低いということを想像すると恐ろしい世界で暮らしているんだと同情しますが、良いのか悪いのかかわいそうな人には全く見えないので、親である私もそのことをつい忘れてしまうのです。

昔、ムスメの心ない言動に「なんでもっと人のことを考えないの!?」と私が言って「好きでこんな風に生まれたわけじゃない!」と泣かれたことがありましたが、出来ないことは仕方ないとやっと最近思えるようになってきました。


共感と指摘、説明/言い続けることが大切


今回も言い続けたのは
「母親だからといって、私があなたの世話をするのは当たり前ではないこと」、「誰だろうと人に何かしてもらったら感謝しなければいけないこと」、
「家族として暮らしたいなら、自分も手を貸さなければいけないこと」
などでした。

ムスメは、聞かないし忘れる人なので「何回言ったら分かるの!?」によくなりますが、口を酸っぱくして言ったところで、直らないものは直らないのが障害です。コミュ障ですが、話し合わないことには本人気づきませんから、話し合いは大切です。

彼女には人を見下す言動も特性柄染み付いているので、そう簡単には直りませんが、偉そうな言動だけは許さないと決めています。なぜ見下すようなことを言ってくるのかなど、彼女の言い分も勿論聞くので長くなりますが、お互いの考えを知るには、やはり丁寧な会話が必須です。

彼女を凹ませることにもなるので、あまり言わない方がいいんじゃないかと悩んだこともありましたが、「自分は、これでいいんだ」と思えるような役割は、外の人と出会うことで育んでいって欲しいと割り切るようにしています。


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