マガジンのカバー画像

小説 開運三浪生活 #1 三浪前夜

9
プライド高く理系に憧れ続ける元・優等生にて現・劣等生のタサキフミオ(20)。せっかく進学した「県大」を休学し、広島大の総合科学部を再受験するまでの孤独で独善的な足取りを描く。
運営しているクリエイター

記事一覧

小説 開運三浪生活 9/88「高らかな敗北宣言」

文生の仮面浪人は一週間で挫折した。数学と英語のテキストが数ページずつ進んだだけだった。県…

鈴木偏一
1か月前
1

小説 開運三浪生活 8/88「押し入れ解禁」

四月も二週目に入って、ようやく文生は新しい生活リズムに慣れてきた。と言っても緊張感は相変…

鈴木偏一
1か月前
2

小説 開運三浪生活 7/88「元リーダー」

踏切のバーが上がると、文生の視線の先に自分とさほど変わらない小柄な若者がひとり立っていた…

鈴木偏一
1か月前
4

小説 開運三浪生活 6/88「没入ロック」

最初の一週間は、文生にとってひどく長く感じられた。一日一日が重かった。講義中も休み時間も…

鈴木偏一
1か月前
4

小説 開運三浪生活 5/88「コーヒーとうどん」

県大の前期が始まった。見知らぬ二年生たちに混じって受けたひさしぶりの講義は、初回というこ…

鈴木偏一
1か月前
4

小説 開運三浪生活 4/88「貫介サプライズ」

ロビーには、さっきのイケイケの一団のほか、サークル帰りと思われる五、六人の学生たちがたむ…

鈴木偏一
2か月前
1

小説 開運三浪生活 3/88「されどオリエンテーション」

公共政策学部の講義室に入ると、すでに七、八人の学生がオリエンテーションの開始を待っていた。留年するような不真面目なヤツはどうせ男子だろう――と自分のことを棚に上げて文生は決めつけていたが、女子も数人いた。さっと見渡したところ、幸い顔見知りは見当たらなかった。文生は心底ほっとした。 「あれ? ひさしぶりじゃん!」 「てっきり辞めたのかと思ったっけよ」 「いったいどこ行ってたの?」 そんなごもっともな質問攻めに遭うことを、文生はゆうべからひどく怖れていた。彼の顔は無表情だが、

小説 開運三浪生活 2/88「県大」

四月になって最初の朝、レトロな目覚まし時計がけたたましく鳴り出す数秒前に文生は起きた。が…

鈴木偏一
2か月前
6

小説 開運三浪生活 1/88「出戻り県大生タサキフミヲ」

――着いちったか……。 新幹線代を惜しんで東北本線を北上すること七時間。昼下がりの鈍い陽…

鈴木偏一
2か月前
2