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自作キーボード組立経験者も市販キーボードを買う ~Princeton UP-MKGA75-J~

またドマイナーなキーボードを買っちまったぜ、という内容です。少なくとも価格.comには載っていないので知名度が割と低いのではないかと思うので、誰かがこのキーボードを知るきっかけになればうれしいです。


前日談

このキーボードを買う半年くらい前に、私はCorsair K70 Pro Mini Wirelessというキーボードを購入しました。当時の私が知りうる限りではこのキーボードが、

  • 日本語配列

  • キースイッチ交換にハンダ作業が不要(=ホットスワップ対応)

  • USBレシーバでの無線接続

という3要素が揃った唯一の物だったのです。しかし、私は上の3条件のために他の一切を妥協しましたが、適応力が高いわけではなかったのでそれなりに不満もありました。
一言で言えば、キー数の少ないキーボードは私の用途に合わなかった、ということです。

K70 PRO MINI WIRELESS

そう、K70 Pro Mini Wirelessは型番と違って60%キーボードと言われるものです。一般的なテンキーレスキーボードから矢印キー部分に加えてFキーまでを完全に取り払った配列のキーボードのことを指します。
では、取り払った部分に割り当てられていた機能はどう使うのかというと、残ったキーとFnキーと呼ばれるそのキーボード独自のホットキーとの同時押しです。ここは大なり小なりキーボードの個性が出るところで慣れるのに時間がかかります。
多用するキーが少ない用途には良いのですが、その逆だと不快な思いをすることになります。

私がこのキーボードに想定していた用途は日常使いに加えてゲームだったのですが、そのゲームの少なくとも一つ(Minecraftといいます)はFキーのショートカットを多用します。乗り換え元のテンキーレスキーボードでは1つのキーを押すだけで当然できていたことが、K70 pro miniでは2つも3つもキーを同時押しをしないとできなくなったのです。一度ワンタッチに慣れてしまうと、いくつも同時押しするのはそれなりに辛いものがあります。

そんなわけで、若干無理をしつつも使っていたのですが、結局は普通のテンキーレスキーボードとして高い完成度を持つ(と私は思っている)G913TKLを使ってしまうと、残念ながらK70 Pro Miniの使用頻度は下がってしまいました。


価格.comに載っていない市販キーボードに出会う

今日の本題に。SNSの投稿を見て知りました。
このキーボードの定価は25,580円とお世辞にも安いとは言えないのでなかなか手が出なかったのですが、中古で20,000円を切る値段で売られているのを発見。これは!と手が滑りました。
というわけで現物の写真です。

UP-MKGA75-J

感動がないですね…最近は60%キーボードだったり自作キーボードだったりで、「普通の人が知らない」感で所有欲が満たされていたところがあったのかもしれません。これも普通じゃない配列ではありますが、インパクトに欠けます。実用品として買ってるので、そんなことを求めても仕方がないのですが…


感想

安っぽくはない外見

表面はノブを除いて全てプラスチックのようですが、ペラペラな感じはありません。いかにもな継ぎ目は底面と奥側にかけて入っていますが、側面はまだしも奥面を見ることは滅多にないため、使っていて質感に不満を覚える機会もそう無いと思います。

側面には何もなく、スッキリとした印象

キーキャップは昇華印刷のPBT製とメーカーページにも書いてありますが、しつこくない程度のザラザラとした触感があります。この手のキーキャップは手汗が浮きづらく印字の耐久性が高い反面、ひっかき傷が相対的に目立ちます。

2色成形と違って、裏に層が見られない

開封の瞬間はパッとしない印象を受けましたが、決して安っぽくありません。定価2万円台半ばなりのクオリティはあるように感じます。


有線無線両対応、スリープ復帰直後は反応しない

接続方法はUSB有線(USB-Cコネクタ)USBレシーバ無線の2通りがあります。ケーブル接続時に無線接続で動作させるモードが存在し、操作するパソコンを切り替える時に活用できそうです。
無線接続時は10分放置でスリープするのですが、復帰する時に入力が反映されるまで体感3秒ほどかかります。反映される前の入力は反映されないので、ここは使い勝手の良くない点です。


静かで金属音も聞こえず、過去最高クラスに快適

私としては絶賛ポイントです。MKGA75-Jに元々付いているキースイッチはリニアタイプなので、クリッキー軸のカチカチ音がないのは当然として、メカニカルキーボードあるあるの、キーを押したときの金属質な反響音がありません。

使用経験者ならわかるあの音の出どころは筐体(基板?)とキースイッチの両方らしく、筐体についてはキースイッチを固定する板の振動、キースイッチについては内部のバネから音が出ているようです。どちらも経年変化で音が変わる可能性があるので、年単位で使用していたら音が目立つようになった、ということはありそうですね。


同時押しキーの割り当て位置が見えないのは微妙

MKGA75-Jは75%キーボードと言われることもある配列を採用しています。テンキーレスキーボードから矢印キー部分を左に寄せたりキー数を少し減らすなどして、なるべくキーを減らさずに省スペース化を狙ったものです。主にどのキーを削るかでキーボードごとに個性が出ます。

上:K70 PRO MINI WIRELESS(60%)
中:UP-MKGA75-J(75%)
下:G913TKL(80%)

MKGA75-Jの場合は、Home、Delete、PageUP、PageDownを維持して左に詰め、PrintScreen、ScrollLock、PauseBreak、Insert、End、右Control、右Alt、右Windows、Applicationは削減されています。
英語配列版は、右Control、右Altが維持されているので、私が英語配列愛用者であれば泣いて喜んでいたでしょう。キー数の多い日本語配列の悲しい一面がよく表れています。
Deleteが維持されているのは良いですね。誤字が多い私のような人だとBackSpaceだけでは物足りなくなることがありますから…

省スペースキーボードの例に漏れず、MKGA75-JもFnキー同時押し割り当てが存在します。キーボードによっては、同時押しで割り当てられている機能がキーキャップ前面に印字されていることが少なくないのですが、このキーボードにはありません。キーボードごとに操作が異なっていることが多いので、説明書なしで操作しやすいようにしてほしかったです。

左:K70 PRO MINI WIRELESS
右:UP-MKGA75-J(Fn+1=ライティングモード1)


パームレストは無くてもいいと思える程度の高さ

MKGA75のように、ガスケットマウントなど静音性向上のために工夫をしているキーボードは分厚くなりがちで、パームレストが欲しくなることが多いのですが、このキーボードでは必要とは言いません。個人差が大きい部分なので欲しくなる人もいるはずです。付いているキーキャップのプロファイルがOEMではないらしく高さが若干低くなっていますから、ここの貢献が大きいようです。

ガバガバ手測定によると、29~30mmくらい
K70 PRO MINIは31mmくらい


ソフトウェアは不使用なので評価不能

色々なハードウェアをとっかえひっかえ使うタイプの人なので、私はデバイス専用ソフトアンチです。MKGA75にも専用ソフトがありますが、常用するようになるまではおそらく導入しないでしょう。ということで現状では無評価です。


カスタマイズ性は悪くないと思う

MKGA75は、キースイッチ固定がソケットになっていて、分解・はんだ作業をすることなくキースイッチが交換できる仕様になっています(通称ホットスワップ)。気が利いているメーカーのものはスイッチを挿しこむソケット部分に穴が5つ開いています。MKGA75のも5穴です。以前購入したK70 pro miniは3穴で、不満点の1つでした。
キースイッチには安定化など色々な理由でキースイッチ底面にいくつかピンが出ています。主流となっているCherry MX互換のスイッチは、これが3つだったり5つだったり、7つだったりします。本家Cherry MXは3つですが、Kailh Midnightスイッチなど5つのものも多数あります。基板側にあらかじめ穴が5つ開いていれば、交換するキースイッチの選択肢が狭まらなくて都合が良いのです。

左:K70 PRO MINI WIRELESS
右:UP-MKGA75-J

日本語配列の宿命となっていますが、キーキャップの互換性は劣悪です。スペースキーの長さはキーボードによって変わり、MKGA75-Jは4.25U(1Uが普通のキー1つ分の幅を指す)です。この長さは世界的に珍しいらしく、カスタム/自作キーボード界隈で流通している交換用キーキャップにこの長さのスペースキーキャップが付いているのを見たことがありません(例外的にCorsairのCH-9911040-JPと色違いのものはスペースキーの長さが一致しているらしいので、後日交換してみようと思うのですが、MKGA75-Jの場合「Fn」と「かな」も独特なせいで、単体で全てのキーを交換するのは不可能なようですね…)。


重くて電源が消しづらいのが不便

MKGA75には利便性の観点で少なくとも2つ不満点があります。重くてサッとどかすのが難しいことと、電源スイッチが非常に使いにくいことです。
パソコンを置いているデスクでは、はんだ付けや工作など色々な作業をやりますので、私はキーボードの重さには割とうるさい人だと思っています。このキーボードは940gもあります(実測値)。ほぼ1kgです。片手では結構重いです。私が持っている中では突出して重い(今まではG913TKLが807gで最重)のですが、他機種の情報を調べてみるとどうやらMKGA75は一般的な重さのようです。メジャー品ではMajestouch Convertible 3が約1000gらしく、私は今まで物理的に相当軽いキーボード達に囲まれていたようです…

このキーボードで最も理解できないのは電源スイッチの位置で、なんとスペースキーの下にあります。使わせる気が無いのは明らかです。
何回か試したところ、持ち上げる時は思ったほど誤爆しません。しかしながら、収納場所から引っ張り出す時にはうっかりどこかのキーを押したり引っ掛けたりしてしまうことは明らかです。使いやすさを考慮するとありえない仕様です。

細めのクリップをつっこむという裏技もありますが、傷が量産されることでしょう

まとめ

ということで、私にとって通算10台目になったらしいメカニカルキーボードへの感想でした。
使用時の仕様はかなり好みに近く、購入する以前はMKGA75が完璧な物に見えていたのですが、仕舞う時はかなり残念な仕様です。
電源スイッチくらい背面や底面のようなまともな場所に付けろ

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