子供が細菌性髄膜炎になった話。その2

髄液検査をすることになった。
もともと妻を無痛分娩で出産して欲しかったので針を刺すプロセスは知っていた。
無痛分娩もそうだが身体を丸めて背骨の間から脊髄に注射針を入れる。麻酔ではそこから麻酔をするが髄液検査ではその液体を抜く。
子供ながらにすごい検査になってしまったなと病院に来た事を少し後悔したような大袈裟過ぎたかななんて思っていた。

まずは鼻の奥の粘膜を検査する検査を行うこととなった。
普段からご飯の時くらいしか泣かない子供だったが検査の棒を鼻の奥に入れられた後の「ぎゃー!!いぎゃあああ!!!」と声を上げたのは忘れられない。今までお腹減ってギャン泣きしてんなぁと思っていたのはただそれを伝えていただけだった様で本気で辛い時はこんな声を出すんだなと心の中でごめんねと何度も思った。声にも出してたけど。
幸いに5秒ほどで終わったのでベッドで寝たままの子供を腕でつつむ。泣き止まないがなにか包んであげたかった。妻は隣で呆然としている。
「もうお子さんを抱いて良いですよ」
と言ってくれたので抱き上げる。すぐ泣き止んだ。おー、強いねぇ。と思ったのと同時に2-3日は検査だろうから抱っこできないなぁと思って少しだけギュッとしっかり目に抱いた。妻に「抱く?」と聞いたが首を振ったのでそのまま先生の話を聞く。
看護師に目をやり「来た時は38℃あったんだよね?」と確認して看護師は頷く。
「入院中に髄液の中を調べるんですけど調べながら治療を開始します。もし悪い菌が髄液中にいた場合にはその間に悪さをして大変なことになったはいけないのでわかる前に抗菌剤を開始して、もし何もないのであればそれで安心ですし、良い方いい方に間違っていくというか万全には万全を重ねて万が一に備えましょう」この説明は当日だけで3回ほどきいた。それほどあんまり大事になることは無いけど病院のプロトコルというかきまりの中なんだろうなと思った。たしかに新生児を入院して髄液取って抗菌剤入れて何もありませんでしたは怒る人がいるのは頷ける。理性的にはやりすぎじゃねとは思っていた。
しかし、自分の事ではあるが無い方が当たる人生を送っていると思っていて自分の子供もきっとそうなる可能性は否定できないと考えた。よろしいですかと聞くお医者によろしくお願いしますと伝えた。
それでは色々準備をしますのでと子供をベッドに再び寝かせ僕らだけ外に出された。

待合室で妻が泣いている。下を向きながらもしょもしょと「◯ちゃんがあんな声出してるの初めて聞いた」と呟いた。
妻の手を握りつつ「俺もびっくりした。いつもの泣き声って呼んでるだけだったんだね」と答える。
「あんな検査されてあんな辛い思いをさせて◯ちゃんの事抱っこするの悪いなって思った」と本当にバカな事を考えるなこの人と思った。


続く

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