歌舞伎&文楽『夏祭浪花鑑』(でー)

国立劇場9月歌舞伎公演『夏祭浪花鑑』
2024年9月1日(日)~2024年9月25日(水)
新国立劇場中劇場

スターばかりの座組とはいえない今回の夏祭だが、逆に役に俳優の色がつかず、物語を純粋に楽しむことができた。しかも、俳優、良かった。彦三郎の団七は声がよく、キリリと正義感のある団七を好演していた。孝太郎のお辰も気品があり気風のいい美人という説得力があった。男女蔵の三婦はまじで喧嘩強そうだった。片岡亀蔵の義平次は文楽で見るより人間味があっていい人そうだった。新国立劇場中劇場の舞台をうまく活用していて、前側座席と通路の間に仮設花道を設置したり、オーケストラピットを泥場にするなど工夫が効いていた。片亀さんによるあらすじ解説の演出も気が利いていて、初めて歌舞伎を観る人もきっと楽しめると思う。非常におすすめ。座席がガラガラだったのだけが残念。これはもっと売れるべき公演だと思う。

国立劇場9月文楽鑑賞教室『伊達娘恋緋鹿子』/『夏祭浪花鑑』
2024年9月7日(土)~2024年9月22日(日)
新国立劇場小劇場

若手から中堅が中心の公演。今回はBプロを観劇。解説「文楽の魅力」では文楽初心者のために文楽の基礎知識を実演家が解説してくれる。Bプロの案内役は桐竹勘次郎さんで、めちゃくちゃこなれてた。実に完璧な解説。新国立劇場小劇場は400席程度で、文楽劇場や国立小劇場と比べてもだいぶ小さく、こじんまりとした舞台でみる文楽は意外によかった。幕が開いた瞬間、あれ?なんか舞台の印象違う、と感じたのだが今回かなり照明が暗かった。これに関しては賛否あるっぽいが、個人的にはこの暗さは割に好みだった。暗い中に舞台が浮かび上がっている感じ。照明がんがん、人形にも影ができないように当たっている普段の照明よりも、陰影が出ていて美しいと思った。

昼に歌舞伎、夜に文楽と連続で夏祭を観たが、キャラクターの内面の吐露をウェットに描く歌舞伎と、言葉少なに人間の心の闇をそのまま残す文楽とでは美学が違うな、と感じた。歌舞伎と文楽で同じ演目を同じ劇場で同じ期間やるっていうのは比較ができてよい試みだと思った。


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